立教大学国際シンポ 「宗教間・文化間『対話』を通したアジアの共存と平和」 2013年4月6日

 「宗教間・文化間『対話』を通したアジアの共存と平和――国連プロジェクト『文明の同盟』のアジアにおける実践と今後」と題する国際シンポジウムが3月9日、立教大学(東京都豊島区)で開催された。同大学大学院キリスト教学研究科(委員長=竹原創一教授)と、立教SFR(同大学学術推進特別重点資金)単独プロジェクト研究(代表=池住義憲特任教授)が主催したもので、NGO・NPO関係者や、他大学の学生も含めて約90人が参加。フィリピン、カンボジア、スリランカ、イラクの4カ国における事例研究調査の報告が行われ、アジアにおける共存と平和づくりのための理念・原則・方法論が話し合われた。

 「フィリピン・ミンダナオ島ムスリム自治区バシラン州での平和づくり」の取り組みを、ミリアム・スアシト(フィリピンNGOナグディラーブ代表)、モモイ・コホムボ(同プロジェクトオフィサー)の両氏が、「カンボジア・シェムリエップ州北部での村づくり、健康づくり」の取り組みを、ケップ・カンナロ(カンボジアNGOパデック代表)、ヤ・ビアン(シェムリアップ州タサオム・コミューン長)の両氏が、「イラク・北部キルクーク地区での草の根からの平和づくり」の取り組みを、アリー・ジャバリ(イラクNGOインサン・イラク協会代表)、インティサール・ガフォア(同スタッフ、キルクーク市「子どもたちとつくる地域の平和」ワークショップ現地担当者)の両氏が報告。

 また池住氏が、「スリランカでの非暴力による民族紛争解決へ向けた取り組み」として、国際NGO「非暴力平和隊(NP)」による「NPスリランカ・プロジェクト」について考察した。

 

草の根の非暴力取り組み分析

 パネル・ディスカッション=写真=では、スアシト、カンナロ、ジャバリの3氏に加え、宇井志緒利(アジア保健研修所研修/国際部門主任)、原文次郎(日本国際ボランティアセンターイラク事業現地調整員/事業担当)、西原廉太(立教大学大学院キリスト教学研究科教授)、久保田浩(同)の各氏が発言。

 西原氏は、「宗教間対話を考えていく時に、それぞれの宗教のこれまでなしてきた歴史や方法論に対する真摯な自己批判がなければ、真の対話には至らない」と前置きした上で、日本キリスト教協議会が韓国キリスト教協議会と共同で過去3回開催してきた「子ども平和会議」に言及。「わたしたちの責任は、子どもたちの可能性を信頼し、それを開いていくこと」とし、「平和構築や紛争解決は一朝一夕にはできないことだが、『子どもたち』という視点が、これからの真の平和構築のための一つの原理となるのではないか」と意見を述べた。

 久保田氏は、「宗教間・文化間対話」という枠組み設定の妥当性に疑問を呈した。四つの報告事例から、「この場で論じている『紛争』はいわゆる宗教間・文化間の紛争ではない。その解決は、宗教間・文化間対話によって達成されているものでもない」とし、「問題は、国連というマクロなレベルで提示された枠組みを、あたかも普遍的に妥当な紛争解決のための枠組みとして前提とすることそのものではないか」「上から理念的に与えられた枠組みがいかなる程度、さまざまな紛争地域で具体的に望まれている紛争解決に寄与しうるか疑問」と主張。「紛争当事者はそれぞれ、ある特定の宗教伝統の中で具体的な生活を送っている人間。自分の宗教や文化がどのようなものであるべきかは、具体的な紛争を解決しようと相互に努力する過程において、各人が再発見して、再確認・再認識されていくのではないか」と提言した。

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 このシンポジウムは、同研究科が学術研究の一つとして2011~12年度の2年間にわたり行ってきた実践的平和研究の集大成として開催された。同研究は、アジアの草の根の人々による平和に対する非暴力の取り組みを掘り起こして記録・分析するもの。フィリピン、カンボジア、スリランカ、イラクのアジア4カ国で実践されている「宗教間・文明間衝突や対立、葛藤の克服」、「相互の寛容と尊重の促進」、「共存関係の構築」の取り組みの事例を分析・検証し、国内外のNGOと協働してアジアにおける共存と平和づくりのための個別的および普遍的理念・原則・方法論を明示することを目的としている。研究結果と具体的提案は、国連プロジェクト「文明の同盟」事務局(ニューヨーク)に提出される予定。

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