日本ローザンヌ委員会が東京でシンポ 震災の教訓踏まえ、日本宣教考える 2013年6月1日

〝地域に関わり相手を知る〟

 日本ローザンヌ委員会(金本悟委員長)は、「包括的な日本宣教を考える」と題するシンポジウムを2015年までシリーズで開催する。その1回目「他の信仰を持つ人々の中でキリストの愛を生きる――東日本大震災からの教訓を踏まえて」が5月11日、お茶の水クリスチャンセンター(東京都千代田区)で行われた。

 パネリストとして、中澤竜生(南三陸を支えるキリスト者ネットワーク世話役、基督聖協団牧師)、鈴木真(イザヤ58ネット代表、福音伝道教団牧師)の両氏が被災地支援に携わる立場から発題。また、市村和夫氏(インターナショナルVIPクラブ代表、国際ナビゲータースタッフ)が世界宣教の現場から、他の宗教的背景を持つ人との関係性について発題した。同委員会委員の根田祥一氏(クリスチャン新聞編集長)がコーディネーターを務め、60人が参加した。

 中澤氏は、昨年6月に宮城県の南三陸町に建てられたクリスチャンセンター南三陸「愛・信望館」の現場主事を務めている。これは同町で初となる教会で、特定の教派に属しておらず、津波で流出した家屋の跡地に建設された。しかし中澤氏は、「ここで教会という働きをしたことに対して、わたしは失敗だと思っている」「ここで礼拝を始めたとしても、教会を建てるのは非常に難しいだろうと考えている」と主張。被災地で人を集めることが困難であること、地元に根付いた宗教があること、「講」という仕組みがあることを理由として挙げ、それを無視して教会を建てることは難しいと語った。

 東北で25年以上牧会する中で、「相手のことを知ることがすごく大事」だと知ったという中澤氏。震災から2年2カ月という短い期間で地元の人と関係を築くことはできないとし、地域に関わることの大切さを強調。地域の祭り、弔い、講に対してどう向き合うかを課題として挙げた。「偶像だ」という意見がある中で、同センターが祭り(子どものプログラム)支援を行ったことを例に、「こういう関わりをしなければ関係が続かない」と語った。

 「祭りは東北にとってはすごく重要。それを取り外すことは簡単な話ではない」「祭りをしている人が皆悪人かと言うとそうではない。かえって、人間関係で〝いいな〟と思った人ほど熱心な宗教者」と述べ、「この人と向き合うためには、この人の持っているものを否定しては始まらない」と主張。「自分がイエス様を信じているその志は決して揺るがないし、ずれない。現地に行くと、そのイエス様の愛をできるだけの表現で表すことを心がけている」と述べ、「南三陸では教会を建てるということよりも、地域にあるものを使って共同体として動いていきたい」と話した。


 

 〝生き方を示す伝道が大切〟

 鈴木氏は、三陸地方の伝統的仲間ネットワークである「講」について解説。講は、家族内の地位に対応した年序階梯制で、性と年齢に即して決められる。子どもから大人まで組み入れられ、意志決定の際の縛りとなるが、ふるさととしてのきずなを支え、生活弱者を保護する受け皿になっていると鈴木氏は指摘。「仲間ネットワークは、閉鎖と縛りが特徴だが、同時にそれは地域の安心、信頼を支えていた面がある。逆にこの地で生きる者が異質なものを受け入れることは生活をする上で大きなリスクを負うことになる」と述べ、「『個の確立』だけで伝道する従来の欧米型の宣教には限界がある」と述べた。

 今回の震災が講の崩壊に拍車をかけ、被災地では被災者同士の対立が起き、行政と被災者の溝が顕著になっているとも指摘。「支援する者やキリスト教会が、この地域の中の葛藤に巻き込まれるというリスクを持つようになった」と論じた。

 その上で、「東北で見えたことは、わたしたちと無関係なのか。そうではない。都会は無縁社会の出現で、都市部の教会としてのコミュニティが無くなった中での再創造を求められている」と主張。「『信仰義認』がプロテスタント、特に福音的クリスチャンの最大関心事を『自分がいかに天国に行けるか』ということに(向け)、結果的に自己完結的なキリスト者を育ててしまっているのではないか」と問題提起した。

 また、「宣教」でなく「宣証」という言葉を使うことを提唱。「傍らにいて、『なぜそこまで親切にしてくれるのか』という問いかけを起こす。その中でわたしたちがなぜクリスチャンであるのかが語られていく。生き方を示していく伝道というものが大切」と述べた。

 人の心には、「イエス・キリストに対する扉=『福音』に対する扉」と「キリスト教コミュニティに対する扉=『教会・クリスチャン世界』に対する扉」という二重の扉があり、「二つの鍵がなければ、日本ではクリスチャンが育たない」と主張。対話力を身に付け、対話の場を作ることが大切だとして、「ソーシャルキャピタリズム(社会関係資本)としての教会」の役割に注目すべきだと説いた。

 「今回の震災は、多くの教会が災害支援、地域への支援を通して社会貢献に大なり小なり関われたのではないか。その経験を自分の足元の行政の限界を超えた部分に目を向ける機会にしていくべきではないか。それがキリスト者の『よき業』『無言の伝道』につながるのではないかと思う」と主張。震災支援の経験を一過性のものとしないことで、人間関係が希薄化する中で、「教会が人と人とのつながりを作り出し、コミュニティの基盤となっていく可能性があるのではないか」と語った。

     ◇

 「ローザンヌ運動」(マイケル・オー総裁)は、1974年にスイスのローザンヌで開かれた第1回ローザンヌ世界宣教会議から生まれた。2010年に南アのケープタウンで開催された第3回会議では、今後10年に世界の教会が直面する宣教の課題を「ケープタウン決意表明」として発表。そこには6項目にわたる実際的な行動への呼びかけが提示されており、それぞれの文化・社会の文脈に適用し活かしていくことが奨励されている。

 日本ローザンヌ委員会は15年までの3年間、この6項目をテーマに概ね年2回のシリーズでシンポジウムを開催していく。第2回は11月9日の予定。

 6項目は次の通り。①多元的でグローバル化した世界にあって、キリストの福音を証しする、②分断され、損なわれた世界にあって、キリストの平和を築き上げる、③他の信仰を持つ人々の中でキリストの愛を生きる、④世界宣教のためにキリストのみこころを見分ける、⑤キリストの教会を謙遜と誠実と質素へと呼び戻す、⑥宣教における一体性を目指す、キリストの体の内部における協力

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