シリーズ「憲法改正と私たちの課題」② 2013年6月22日

 憲法改正を推し進めるのに積極的な安倍内閣だが、問題の本質はどこにあるのか。先週号に引き続き西川重則氏(政教分離の侵害を監視する全国会議「政教分離の会」事務局長、靖国神社国営化反対福音主義キリスト者の集い代表)に寄稿してもらった。

安倍内閣と私たちの課題

 安倍内閣とはどんな内閣なのか。私が毎日のように国会傍聴を始めたのは1999年の通常国会からだった。その年の国会でどんな法案が成立したかを知れば、皆さんも驚かれるに違いない。私自身、次に挙げる諸法案が次々と成立し、それらがその後の国、社会にどんなに大きな影響を及ぼしているかは周知の事実となっていよう。

 5月24日 周辺事態法等の新ガイドライン関連三法成立 日米安保体制新段階へ。
 7月29日 衆参両院に憲法調査会を置く改正国会法成立。
 8月9日 国旗・国歌法成立(岩波ブックレット 中村政則他編 『年表 昭和・平成史』)。

 衆参両院に憲法調査会が設置されたのは、2000年の1月20日であったが、設置された憲法調査会は、超党派の国会議員が選出され、日本国憲法の評価をしながらも、実質的に、現在始動している衆参両院の憲法審査会の設置を許すことになったことを考えれば、99年に憲法調査会を設置したこと、設置を要望した政党の所期の目的が何であったかについて改めて考えさせられている私である。

 言うまでもなく、憲法調査会の設置そのものが、日本国憲法の評価を含む調査ではなく、現在開かれている憲法審査会の設置に道を開くための提案であり、憲法改正を目的とする諸法案を国会に提出する手続きを具体化する憲法改正推進運動の見事な手法であったと言えよう。

 そうした改憲構想を考える時、早期の明文改憲を誰よりも熱心に考え続けた政治家として安倍晋三現首相を挙げることは当然と言わねばならない。第1次安倍首相の発足は2006年9月26日であったが、その時51歳であり、戦後生まれの首相としてマスコミ報道がなされたが、在任中に早期改憲を強く望んでいたことは言うまでもない。

 首相の生まれ育った時代状況を考える時、何と言っても所属する自民党の戦後史を忘れることはできない。自民党が結成されたのは1955年11月15日であり、結成に際して、党の基本方針に「現行憲法の自主的改正」を強調したことは重大である。55年体制の始まりの年であり、保守政党としての自民党と対峙する当時の社会党が存在しなかったなら、憲法改正はとっくになされていたかも知れない。現在の社民党は少数政党だが、55年体制にあって、自民党の改憲を許さない社会党の存在は戦後史にあって銘記すべき重要な存在であった。

     ◇

 さて、戦後68年の今、安倍内閣の存在理由は重大である。第2次安倍内閣が発足した2012年12月26日、選ばれた19人の閣僚の一人ひとりの発言について驚きを禁じ得なかった。第1次内閣の時、改正教育基本法を2006年12月15日に成立させているが、その時愛国心を盛り込んでいたこと、第2次内閣で文部科学、教育再生の担当大臣に下村博文氏が就任していること、その下村大臣が「戦後教育を全部見直さないといけない」と発言していることから考えても、彼を選んだ首相の思いは明白と言えよう。彼は自民党の教育再生実行委員長であり、自民党の公約をまとめたひとりであり、右の発言からわかるように、首相の発言「戦後レジーム(体制)からの脱却」を最もよく理解している閣僚のひとりと言って然るべきと思われる。

 女性の閣僚のひとりに稲田朋美氏が選ばれているのも私は驚くと同時に、なるほどと思ったものである。靖国神社違憲訴訟の被告側の弁護士であったこと、そして靖国神社に合祀されている戦没者について、「英霊」尊崇の思いを持ち、靖国神社の果たす役割を安全保障の立場から重要視し、安全保障についてマスコミで読者に訴えていたことを私は思い出している。靖国神社が戦後にあって、国防(防衛)思想の面から重要な特別な役割があることを彼女は強調していると私は思っている。安倍内閣の重要な閣僚のひとりとして選ばれたであろうことは言うまでもない。

 ここでは、19人の閣僚の発言、問題点の報告はできないが、すべての閣僚が安倍内閣の閣僚である限り、定期的に開かれる閣議の決定によって、首相が要望している案件について決定を余儀なくされることであろう。憲法改正を早期に実現したい首相がその手段としての日本国憲法第九六条問題が毎日のように有識者の発言によってマスコミを通して知らされているが、その中で、日本遺族会に所属し、自民党の元幹事長であった古賀誠氏が、首相が強調している第九六条問題について、何と次のように発言していることに私は率直に言って、よくぞ発言してくれたと思っている。第九六条の改正について「私は認めることはできません。絶対にやるべきではない」(傍点は西川)と(「朝日新聞」、2013年6月4日)。大先輩の古賀氏に首相はどう反論するだろうか。(にしかわ・しげのり)(つづく)

 

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