【映画】「もうひとつの世界」 イタリア映画祭傑作選 Viva!イタリア 2013年7月6日

 毎年1万人を超える観客が訪れる「イタリア映画祭」(朝日新聞社他主催)の過去の上映作から、選りすぐりの3本を集め一挙公開する「イタリア映画祭傑作選 Viva!イタリア」が公開されている。

 この中で注目したいのが、若い修道女が主人公である『もうひとつの世界』。これからの一生を神に捧げようと最後の決断をする女性が、ある非日常的な出来事に遭遇したことで、自分の心の奥底を見つめ直していく物語だ。監督は、繊細な感情表現に定評があるジュゼッペ・ピッチョーニ。

 修道女カテリーナは、ある日公園に捨てられていた赤ん坊に遭遇する。そしてその赤ん坊が包まれていたセーターのタグを頼りに、子を捨てた母親を見つけようと、動き出す。

 従業員の名前すら覚えようとせず、友達もいないクリーニング屋の店主エルネストは、カテリーナに頼まれて、母親探しを手伝うことに。偶然の出会いが、二人の間に友情を生む。

 病院に保護された赤ん坊は、「ファウスト」と名づけられ、すくすくと育っていく。面会するにつれ、赤ん坊への情が芽生えてくるカテリーナは、修道女である自分に対して葛藤する。

 伯母に修道女がいたというピッチョーニ監督は、「“制服”を超えて人物を描こうとした」と言う。本作では、修道女やクリーニング店員、警察官や病院の人々に至るまで、多くのキャラクターが制服を着用する。

 ベールを外し、修道院に寄付された古着を身に纏ったカテリーナがファウストの母親を探しに出るとき、観る者は、この修道女が本来どのような人物であったのか、わからなくなることに気づくだろう。制服は変装する手段でもある。

 キリスト教の世界でも「祭服」など、衣服という文化は外せないアイテムだと思う。制服はその人の内面を覆い隠し、同時に内面の葛藤を浮かび上がらせる。本作は派手な見せ場はなく、とことん地味ではあるが、ピッチョーニ監督が描こうとした、修道女の「もうひとつの世界」は深い余韻が残る。

パンドラ配給 6月29日、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国順次公開

 

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