「ラインホールド・ニーバー」国際シンポ 聖学院大総合研究所主催 青山学院大会場に 2013年7月13日

ロビン・W・ラヴィン氏「歴史の神学」に着目

              
 20世紀の米国を代表する神学者・政治哲学者ラインホールド・ニーバーについて研究している聖学院大学総合研究所(埼玉県上尾市、髙橋義文所長)内の「ラインホールド・ニーバー研究センター」が6月14日、ロビン・W・ラヴィン(米サザン・メソジスト大学名誉教授)=写真上=、任成彬(イム・ソンビン)(韓国長老会神学大学校教授)=写真下=の両氏を講師に招き、国際シンポジウム「ラインホールド・ニーバーの宗教・社会・政治思想の研究」を青山学院大学(東京都渋谷区)で開催した。研究者、牧師、信徒など80人が参加した。

 藤原淳賀(聖学院大学教授)、ブライアン・バード(同大学総合研究所講師)の両氏が通訳を務め、ラヴィン氏の講演に対して千葉眞(国際基督教大学教授)、西谷幸介(青山学院大学宗教主任、同大学院教授)の両氏が応答。任氏の講演に対しては東方敬信氏(青山学院大学名誉教授)と藤原氏が応答した。

 ニーバーおよびキリスト教現実主義の研究で知られるラヴィン氏は、「審判、自由、責任――21世紀のためのキリスト教現実主義」と題して講演。ニーバーの神学とその政治思想を統合しているのは歴史の神学であるとし、歴史の神学的理解の条件となる「審判」「自由」「責任」という三つの主題について論じた。

 講演を受けて千葉氏は、権力の傲慢に関するニーバーの批判は重要だとし、「政治的誘惑や熱狂主義」に対する警告と予防と解毒剤としてのニーバーのキリスト教現実主義には重要な意義があると指摘。

 西谷氏は、ニーバーのキリスト教現実主義について、ラヴィン氏の「歴史に対峙しつつ完成させる神の審判という預言者思想」の指摘が印象的だったと述べ、これに沿って「謙虚」の徳を磨かなければならないと語った。

 「(憲法)九条を守りながらニーバリアンであるということはどういうことか」という西谷氏の問いかけに対してラヴィン氏は、現在の日本国憲法ができた時にニーバーは批判的であったと述べた。それは「勝者が敗者に対して不当なものを利便的に強要しているように見えたから」であり、ニーバーは日本人が憲法を自分たちのものとして受け取り、過去に日本が世界の中でなしてきた役割とは異なる役割を新憲法のもとでできるようになるとは期待していなかったのだと説明。「日本は憲法九条を簡単にあきらめるようなことをしないでほしい」と呼びかけた。

任成彬氏「エキュメニカルな社会倫理」考察

              

 キリスト教と文化の問題に取り組んでいる任氏は、「グローバリゼーションの時代における平和に対する韓国教会の課題――ニーバー的現実主義を超えるエキュメニカルな社会倫理をもとめて」と題して講演した。加速するグローバリゼーションが文明の衝突をもたらすことを指摘した上で、このあつれきを解決するための、「エキュメニカルな社会倫理」の課題について考察。韓半島の平和な統一が韓国教会の主要な課題であるとし、そのために韓国の社会改革が必要だと訴えた。

 東方氏は、任氏と同じ問題意識を持っていると述べ、世界人権宣言採択50周年を記念して1998年に採択された「人間の責任についての世界宣言」に言及。「かけがえのない命の惑星を正しく平和に管理する」という〝スチュワードシップ〟(受託精神)を強調した。同時にイエス・キリストの福音を、具体的な歴史の中で宣べ伝え証しすることが教会の使命だと語った。

 藤原氏は、ニーバーの神学的伝統と、ニーバーを批判したジョン・H・ヨーダーやスタンリー・ハワーワスの神学的伝統の間に橋渡しを試みることが必要だと主張。任氏がナショナリズムや排他的地域主義を克服することの重要さに触れたことについては、「それらを克服するためには確固とした教会論が必要になってくる」と指摘した。

 ラヴィン氏は6月11日~13日、聖学院大学、国際基督教大学、東京神学大学でも講演した。

【メモ】
 ラインホールド・ニーバー(1892~1971)=米ミズーリ州でドイツ福音教会の牧師の家庭に生まれる。イーデン神学校、イェール大学神学大学院に進学し、ミシガン州デトロイトに牧師として赴任。1928年から60年に引退するまで、ニューヨークのユニオン神学大学院でキリスト教倫理学を講じ、神学的・政治的活動を展開した。著書に『道徳的人間と非道徳的社会』『人間の本性と歴史』『アメリカ史のアイロニー』など。「ニーバーの祈り(冷静を求める祈り)」の作者としても知られる。

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