「信仰が支える難民保護」シンポ 「宗教はコミュニティの中心にあるもの」 2013年7月20日

 国連難民高等弁務官(UNHCR)は「世界難民の日」にあたる6月20日、「信仰が支える難民保護」と題したシンポジウムを東京・渋谷の国連大学を会場に開催した。世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会と明治大学との共催。約300人を超える参加者を集めた。

 ミャンマーからの難民ダバン・サイ・ヘインさん(関西学院大・学生)が司会をつとめた。ダバンさんはカチン族で、キリスト者。

 はじめに、ヨハン・セルスUNHCR駐日代表があいさつし、その後、アントニオ・グテーレス国連高等弁務官のビデオメッセージで開会した。グテーレス高等弁務官は、信仰が人間性や思いやり、敬意を重視し、伝統的に人を保護してきたことや、難民法の母体となったことに言及し、信仰と難民保護のかかわりを示唆した。

 第一部のパネルディスカッション「友好的コミュニティの構築と難民のエンパワーメントへの支援」では、庇護を求める権利はいかに宗教的価値観とその伝統に根ざしたものであるのか、いかに信仰は困難を乗り越えるための難民の力となるのか、討議した。比較文学、比較文化を研究する明治大の中村和恵教授をモデレーターに、活動を通して難民にかかわる、キリスト教、仏教、イスラームの各宗教者がパネリストとして参加した。

 カトリック東京教区の幸田和夫補佐司教は、カリタスジャパン、カトリック東京国際センターにかかわる立場から、難民援助活動を紹介した。日本のカトリック教会が難民にかかわるようになったのは1975年。デンマーク船に助けられ横浜港に着いたベトナム難民に、カリタスジャパンが宿泊などの手配を援助したことに始まる。

 幸田輔佐司教は、日本の難民申請者を見ていると「宗教は単に個人の心の内面の問題ではなく、コミュニティの中心にあるものだと思う」と述べた。教会内では、これまでさまざまな国のコミュニティを立ち上げてきたが、「いつの間にか、日本のカトリック教会では外国人信者のほうが多くなってきてしまっている。また、子どもたちの世代で言うと、『多文化』『共生』を軸に信仰共同体をつくっていくという大きなテーマを抱えている」と話した。

 また、「宗教のもっている狭さも時には問題」と幸田補佐司教は意見。「世界宗教」と言われる信仰の根本は、全ての人の尊厳を尊重することであるが、つい自分たちの宗教や宗派を優先しがちであることを指摘し、そうした面で「難民」の問題は大きなチャレンジであり、「宗教者は全ての人を尊重するということをはっきりと示していく必要がある」と訴えた。さらに、「日本人は難民に対してあまりに理解が薄いと思う時がある」と付け加えた。

 日本ムスリム協会理事、WCRP日本委員会監事の樋口美作氏は、「難民という言葉はクルアーンの中にはない」が、イスラームの信仰の基本は「相互扶助の奨励」と述べた。

 「宗教は生活」と定義するイスラームで、特徴的なものに「喜捨」があることや、参加者から質問が上がったことから、イスラームにおける女性の権利についても言及した。

 中村教授は、自身の研究テーマと難民支援とでは距離があると前置きしつつも、それらは深い関係があると感じた、と分析し、「例えば日本にやって来た難民が日本語によって生じる困難、WCRPがシリアで子どもの支援活動をするときに宗教のバリアを越えて地元民に接していくことなどを聞いていると、比較文化と関係性がある」。

 第二部では、宗教的倫理に基づき活動する団体の代表らが登壇し、ディスカッションを行った。キリスト教界からは、ワールド・ビジョン・ジャパン支援事業部部長の高瀬一使徒氏、カトリック東京国際センター副所長の有川憲治氏が、その実践を紹介した。

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