〝平和の遺伝子〟受け継ぎ 「多摩がん哲学外来カフェ」1周年 2013年8月10日

 東京・多摩市立グリーンライブセンターを会場に恵泉女学園大学・多摩市・市民の協働で始められた「多摩がん哲学外来カフェ」の1周年を記念する講演会が7月15日、同センターで行われた。センターを運営する多摩市グリーンボランティア連絡会(川添修代表)と、多摩がん哲学外来カフェスタッフグループ(大木貞嗣代表)が主催し、会場は80人の参加者で満席となった。

 開会にあたり、多摩市長の阿部裕行氏、恵泉女学園大学長の川島堅二氏、川添氏がそれぞれあいさつした。川島氏は、「本学は、多摩市を中心とした多摩ニュータウンに位置する大学として近隣地域にさまざまな形で貢献し、地域に愛される大学に将来の活路を見出そうとしている。そのためには行政、地域住民の方々との協働が必須」とし、「このような催しを通して地域の方々と関わることができることは、本学にとっても大変意義深いこと」と述べた。

 続いて「生きる(新渡戸稲造との関わりから)」をテーマに、森本晴生(新渡戸文化学園長)、池澤康郎(東京医療生活協同組合理事長)、樋野興夫(NPO法人がん哲学外来理事長、順天堂大学教授、恵泉女学園理事)の3氏が講演。恵泉女学園の創立者である河井道が新渡戸稲造に師事し、大きな影響を受けたこと、また新渡戸の精神「希望のない絶望的な状況でも他人から期待される存在・最期まで希望ある行為」が、生きる希望を共有する「がん哲学外来カフェ」の基本理念であることから、このテーマが設けられた。

 パネルディスカッション「先人から私達は何を学び、実行していくのか」では、宗雪雅幸(恵泉女学園理事長)、星旦二(首都大学東京大学院教授)、桃井和馬(写真家、ノンフィクション作家)、福島真(かしのき保育園長)の各氏が発言した。

 同カフェのスタッフでもある桃井氏は、「痛みに苦しんでいる人たちとどう共に過ごしていくのか」をテーマとして掲げた。「どうやってお互いがお互いを知るのか。例えば、イスラム教とキリスト教と仏教。または健常な人とがんの中にある人が、どうやってコミュニケーションしていくのか」と問いかけ、「平和の遺伝子」という言葉を提示。新渡戸稲造の「平和の遺伝子」が宮沢賢治や河井道に受け継がれ、連綿と多摩の中にも続いているとし、痛みの中にある人と寄り添うことが、「異なる環境を越えて言葉を紡ぎ合う」「平和である」ことだと語った。また、自然の掟である「助け、助けられる関係」を強調。社会の中でもすべての人に役割があり、それを果たすことで喜びを感じることができると話した。

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 樋野氏が提唱し、全国で行われている「がん哲学外来」は、がん告知を受けている人、治療中の人、その家族などがリラックスした雰囲気の中で語り合う場。「多摩がん哲学外来カフェ」は、多摩市立グリーンライブセンターの新しい利用方法と活性化を目指して昨年の7月14日に開始。毎月第2土曜日の午後1時~4時に実施されている。

 発端は、樋野氏の講演を聞いた市民から、多摩でも「がん哲学外来」を実施したいという希望があったこと。恵泉女学園大学も、園芸療法の一つの発展系として「がん哲学外来」を捉え、開催に期待を寄せていた。

 同カフェは、医師等のいない市民ボランティアによって運営されていることが特徴。グリーンライブセンターの花と緑の環境が、がん患者の安らぎ・癒しになっている。療法の一つとして、種まきなども実施している。問合せは、同センター(℡042・375・8716)まで。

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