キリスト新聞×クリスチャン新聞共催 緊急シンポ「この国はどこへ行くのか!?」 2013年8月17日

「届く言葉」で共有するために

 参議院選挙投票日前日の7月20日。キリスト新聞とクリスチャン新聞の共催による緊急シンポジウム「この国はどこへ行くのか!――教育・政治・神学の視点から」が明治学院大学(東京都港区)で開催され、定員を大きく上回る約150人が会場を埋めた。同シンポは、これまで一部の問題意識を持った層を対象とした「講演会」や「学習会」の枠を越えて、次世代に何をどう伝え、広げていくかという点を大きなテーマとして掲げていたが、同大の学生や「家の教会」の信徒、雑誌やインターネットの告知を見て来たという非キリスト者の姿も見られた。

 総合司会を務めた根田祥一氏(クリスチャン新聞編集長)のあいさつに続き、シンポジストとして発言したのは、岡田明(都立高校教員)、比企敦子(日本キリスト教協議会教育部総主事)、渡辺祐子(明治学院大学教授)、朝岡勝(日本同盟基督教団牧師)の4氏。

 岡田氏は、石原都政のもとで様変わりした都立高校の実態について紹介。成果主義と自己責任を徹底した新自由主義的経営手法、細かく序列化された上意下達の学校運営、都教育委員会によるパソコンソフトを介した教員の監視、さまざまな推進指定校の新設による学校間格差の拡大などにより、「伝統的にあった自由と創意工夫が奪われ、教員の思考停止、無責任化、画一化と生徒の選別が進み、学校を利用した臣民づくりの環境が整いつつある」と危機感を示した。

 比企氏は、今年3月までキリスト教学校の英語教師として勤めながら、全国キリスト教学校人権教育研究協議会にも長く携わってきた経験から、マイノリティの心の自由と多様性の大切さについて訴えた。1990年の「大嘗祭」に際し、フェリス女学院大学の学長であった弓削達氏らが発表した「キリスト教四大学学長声明」を振り返り、「果たして今日のキリスト教学校に、それだけの姿勢を貫ける覚悟があるか」と問いかけた。

 劇作家の平田オリザ氏による著作『わかりあえないことから』を引用しながら「対話」と「会話」の違いを指摘した渡辺氏は、「教会の中にこそ対話がないのでは」と提起。礼拝での説教や機関紙に掲載された文章の中にも、「言葉を届けたいと本当に思っているのかと疑わざるを得ない」ものがあり、「理解されないことを受け手側のせいにすべきではない」と述べた。また、「対話の欠如」と「レッテルを貼る行為」の密接な関係について言及し、歴史認識や戦争責任の問題を論じると「左派」と見なされてしまう状況に「人間観の貧しさ」と「硬直性」を感じるとしながら、日中関係の講義に対する学生の反応を通して突き付けられた、自らの課題でもあると打ち明けた。

 最後に朝岡氏は、問題の核心として「信じることと生きることが切り離されないあり方が必要」と述べ、「信仰者としてこの世に生かされている限り、信仰のテーマではないといって除外できる領域が果たしてあるのだろうか」と問いかけた。さらに、「ものわかりの良いキリスト教になっているのではないか」とし、あらゆる問題に対しなるべく客観的、中立的であろうとする牧師たちの傾向について、「恥をかきたくないからではないか」と分析。周囲の動向をうかがいながら波風が立たないように「バランスよく」振る舞うのではなく、「神さまから教えられたことに対し、自分のできる精一杯の反応をし、言い表しながら謙遜に歩むという決断的あり方」の大切さを説いた。

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 続いて松谷信司氏(キリスト新聞社)による司会で行われた質疑応答では、「教会で問題を共有するためにどうすればいいか」「キリスト教界全体としてどう取り組むか」などの質問が出され、活発な議論が展開された。教会の中で孤軍奮闘してきたという岡田氏が、「何十年と語り続けてきたが、今日この場に私たちの教会の牧師が初めて来てくれた」と声をつまらせる一幕もあった。

 また、ツイッターを通してリアルタイムで質問を受け付けるという試みも行われ、「同じクリスチャンである石破茂幹事長に対面したら、どんな言葉をかけますか?」といった問いも投げかけられた。

 進行を務めた松谷氏は、「いずれも大きなテーマなので消化不良の感も否めないが、『今日で終わらせない』ために、各自がそれぞれの持ち場で何をするかが大事。『すべきこと』や『できること』はそれぞれ違うはず。この企画を、何らかの新しい契機にしていただければ」と振り返った。

 参加者からは、「相手の言葉に耳を傾け、相手に届く言葉を探り続けて、自分自身が変わること抜きには、『社会派』『左派』というレッテルを乗り越えていくことは難しい」「社会科(の成績が)2のわたしでもよく理解でき、かついろいろ考えさせられ、明日からああしてみようかと行動変えるとこまで励まされたシンポジストの楽しいトーク、洒落た企画でした」などの感想も寄せられた。

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