「被ばく労働の実態」学ぶ 元原発作業員や支援者が報告 2013年8月17日

 元原発作業員や、被ばく労働者を支援している人々の報告を聞いて被ばく労働の実態を学ぶシンポジウム「福島原発事故に伴う被ばく労働の実態」が7月27日、日基教団城西教会(東京都渋谷区)で開かれた。日本キリスト教協議会(NCC)や庭野平和財団などが参画する路上生活者支援連絡会(飯島隆輔世話人代表)が主催し、約30人が出席した。

 発題者は、「被ばく労働を考えるネットワーク」で活動する、企業組合「あうん」の中村光男氏、同ネットワーク事務局スタッフで、山谷労働者福祉会館活動委員会の「なすび」氏(ペンネーム)、元福島第一原発収束作業員の「ごぼう」氏(同)。庭野平和財団専務理事の野口陽一氏がコーディネーターを務めた。

 貧困者と被ばく労働との関わりを解説したなすび氏は、1986年から東京・山谷に関わり、日雇い労働者・野宿労働者の支援を行っている。97~98年に福島第一原発3号機のシュラウドという部分の交換作業が行われた際に、被ばくの危険性を訴え、労働者に原発に行かないよう呼びかけるキャンペーンを実施。3・11以降は、『被ばく労働自己防衛マニュアル』を作成し、労働者に配布する取り組みを行った。

 「いのちが危険になるような被ばくをしながら仕事をしている人たちがいたということ自体、あまり公にされてこなかったことが大きな問題」「その人たちの身近にいたにもかかわらず、そのことをきちんと問題化できなかったことに対して反省がある」と語った。

 また、日本で放射線被ばくによる労災認定を受けた人は11人だと示し、「それは原発が安全だからではない。労災としてきちんと認定されていない」と指摘した。

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 知り合いの紹介で、2012年1月に東京から福島原発の収束作業に応募したというごぼう氏。放射線防護教育の講習は、使い回しの試験問題用紙に答えが書いてあり、誰でも合格できるような状態だったという。仕事内容は、作業員の装備を確認して送り出したり、戻ってきた作業員の汚染を調べ、放射線が広がらないよう休憩所を管理するもの。1日で0・1㍉シーベルトの放射線量を浴びたという。

 労働者の年齢層は、10代を含む若い人が多く、年配者までさまざまな世代がおり、地元の人も東京から参加した人も、共通していたのは「仕事がない」こと。「下請けで働いていたので、イメージ的には東電は〝神さま〟。何でも言うことを聞かなければならない。ルールもころころ変わり、それに口答えすると自分の首が飛んでしまう。元請けも似たようなもの」と述べ、苦情を言えば、下請け会社ごと契約を切られてしまう状況だったと明かした。

 「作業中に血尿が出てもそのまま仕事を続けた。怪我をしたり具合が悪くなっても隠すのが通常。元請けや東電に話が行けば、自分たちの首を絞めることになる」

 ところが、元請け会社との契約が10月末で切れるのに伴い、ごぼう氏が勤務していた会社の福島での作業員全員が解雇された。争った結果、「解雇撤回はできなかったが、それなりの納得できる内容で解決した」。だが、今も職がない状態だ。

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 日雇い労働者の支援を行っている中村氏は、「被ばく労働者を通じてこの社会がどうなっているのかということをもう一度考え直すきっかけを作らなければならない」とし、人が生きる上で、「労働」と「暮らし」が一番大きな問題だと指摘。「山谷や寿(横浜市)の日雇労働者の多くが、単身労働で家族すらも作れない状況の中で働いてきた。『暮らす』という時に、目の前に人が思い浮かぶのか。困難な状況に陥った時に相談する相手がいるのか。愚痴を言い合える相手がいるのか」と問い、被ばく労働者の関心はそこにあると語った。

 まずは被ばく労働者の声や現実に働く姿、暮らしを学ばなければいけないとし、それによって今の社会について考えることが必要だと強調。また、自分たちがどこに依拠し、どうやって抵抗していくのかを考え直すことが問われていると述べた。

 「除染で働くにしろ、原発で働くにしろ、どれほど被ばくの危険、内部被ばくの危険が大きいのか。働く人間のいのちや安全を守るためには、働く人間も学ばなければならないし、本来ならば雇用する側も労働者に伝えなければいけない。それがない」と主張。「そこで働かないわたしたちがその労働者とつながって何ができるか、わたしたちに問われている」。

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 野口氏は感想として、「今の日本の社会がそこまで壊れてしまっているのか、という気がした。今回(7月21日の参院選)のような選挙の結果が出てしまうということは、社会の質が落ちてしまっている。希望の持てない社会になっているのに気が付いていない人が非常に多い」と指摘した。

写真=報告を行う中村氏(右)とコーディネーターの野口氏

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