AIDSフォーラム in 横浜 「〝HIV感染〟カムアウトできる人いない」 平良愛香氏が教会の現実指摘 2013年9月7日

 神奈川県や横浜YMCAなどが共催する「AIDSフォーラム in 横浜」が8月2~4日の3日間、かながわ県民センター(横浜市神奈川区)を会場に開催された。同フォーラムは1994年に始められ、今年は20回目。エイズ予防や感染者への理解深める70もの講座・発表が行われた。約4200人が参加した。

 多様化する性と青少年の関わりや、HIV/エイズ診察の最前線、セクシュアリティへの医療支援の現状など、市民の立場からエイズについて幅広く考える催しに、「宗教とエイズ」をテーマにしたセッションが3日行われた。

 岩室紳也氏(公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター長、泌尿器科医=HIV/エイズ診察医)の司会で、古川潤哉(浄土真宗本願寺派浄誓寺僧侶)、平良愛香(日基教団三・一教会牧師)=写真=の両氏が、性や死生観といった根源的な主題について意見を交わした。

 キリスト教会で、自ら男性同性愛者であることを公言(カムアウト)し牧会に励む平良氏は、今年から日基教団神奈川教区総会議長を務めている。20年前、人権団体「動くゲイとレズビアンの会」を通して、HIV問題に関わるようになった。

 「教会内でセクシュアルマイノリティであるとカムアウトする人がちらほら出てきても、『HIVに感染している』とカムアウトできる人はほとんどいない」と、その現実を指摘した。

 また、自身が男性同性愛者であることについて、「(キリスト教界で)黙っていると皆忘れていく。頭の隅では『そういう人がいる』と覚えているけど、触れたくない情報はどんどん薄くなっていくものだ。カムアウトはし続けていかないと、消されていく。消される恐怖感があるくらいなら、言い続けていこうと思う」と語った。

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 岩室氏は、現在勤務する厚木市立病院でこれまで診てきた113人の感染者のうち、106人が性感染だという。この問題について高校生らに講演することも多いという。HIVエイズが身近になってくると、岩室氏は「同性愛者についても話をする」ことが必要で、「プロテスタントの世界ではコンドームの話は平気なのか?」と率直な質問を投げかけた。

 平良氏は、「保守的なプロテスタントはカトリックよりもずっと保守的だ。セックスは子どもを儲けるためのみ、と考える派もある。非常に極端なプロテスタントでは『同性愛者は処刑しても良い』としているところもある。また、ウガンダでは同性愛禁止法を作ろうとしている」などと回答。単純に、プロテスタントとカトリックで二分した議論はできないことを討論した。

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 この点、仏教では「もともと性に関してタブーはない」と古川氏は見解を述べた。古川氏がHIV問題に関わりだしたのは、大学卒業後、佐賀県伊万里市の寺に戻り、終末期医療の活動に携わるようになってから。当時ホスピスの緩和ケア病棟に入れるのはガンとHIVの末期患者に限られていた。支援も薄く、理解も得にくいのがHIVであった、と古川氏。

 「患者は今でも地方都市ではHIVを公言できない。大きな医療センターに通ったり、転居してしまう人も多く、田舎では身近にHIVの友達がいないものだから、理解が進まない。HIVは、謎の、怖いものとして扱われている」と実態を明かした。

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 教会でも公言することが困難であるように、HIVに感染したことを誰にも言えずに悩んでいる人は多い。岩室氏は、「ぼくの診察を受ける人には、その外来が居場所になれるような空間を目指している」と、自身がHIVに取り組み始めた1994年から現在までの流れを説明。神奈川県ではHIV/エイズを診察できる病院が限られている現状も述べた。

 

メモ
 「AIDSフォーラム in 横浜」=1994年に横浜で第10回エイズ国際会議が開かれたことがきっかけ。「市民に開かれた会議を市民の手で」をコンセプトに、横浜YMCA、横浜YWCA、横浜商工会議所、青年会議所などの民間団体を中心に組織委員会がつくられ、第1回フォーラムが開催された。その後、神奈川県の共催、横浜市などの後援で毎年8月に開催されている。2011年からは京都でもフォーラムが行われ、今年は京都開催(10月5~6日)に加え、11月23日には東北の陸前高田でも催す。

 

 

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