イグナチオ9条の会5周年 「愛から目を背けない勇気大切」 エコノミストの浜矩子氏が講演 2013年10月26日

 エコノミストで同志社大大学院教授の浜矩子氏が「何をどう選ぶのか 岐路に立つ我ら――『日本の今』の中にある福音」をテーマに講演した。平和といのち・イグナチオ9条の会が10月6日、発足5周年を記念して集会を東京・四谷のカトリック麹町教会ヨセフホールで行った集会でのこと。また、昨年8月から被災地である釜石市で活動中の山本きくよ修道女(援助修道会)による歌とトークも披露された。

 自身もカトリック信徒である浜氏。同日のミサで朗読された3箇所(ハバククの預言、使徒パウロのテモテへの手紙、ルカによる福音)をひいて、安倍政権や憲法など現在の日本の状況に照らし合わせ、グローバルな視点から、「何をどう選択するのか」熱弁をふるった。

 はじめに、安倍首相が6月5日に発表した「成長戦略」について見解を述べ、ハバククの預言にある「高慢なる者」は安倍首相のことであると指摘。安倍首相のスピーチをていねいに分析しながら、その主張について「世界制覇戦略を目指しているのだなということが見えてくる。安倍首相は『富国強兵路線』を迫っている。高慢な者の意志を見るわけだ」。その上で浜氏は、必要なのは「成長」戦略ではなくて「成熟」政策とし、現代日本の最大の問題は、「豊かさの中の貧困」と語った。貧困率が人口比で16%の日本と、最も貧困率の低いデンマーク(5%)を比較し、そうした問題に「真正面から取り組んでいくのが政治家の役目だ」と強調した。

 「グローバル時代」は国境なき時代。生産体系が国境を超えるとどこまでが内でどこからが外かが不鮮明である。

 日本国籍の企業が栄えるからといって、日本経済が栄えるわけではなく、恩恵を受けるのが中国やベトナムであったりする。そうした関係を「福は内だと思っていたのに、内なる鬼になっていたり」と形容し、見極めをしなくてはならないという意味で、パウロの手紙に出てくる聖句「思慮分別」が必要だと浜氏は強調する。

 そして、「誰もが誰かから何かを借りて生きている時代」がグローバル時代であると言う。

 そして我々がお互いに借り合っているものは「褌か土俵」であり、「『人の褌で相撲をとる』という言葉があるが、グローバル経済の中でこれをやっている国はかなりある。外資を呼び込んで国内の労働力を挙げている」と述べた。欧州での小国や、香港、台湾、シンガポールなどが外に開かれた存在になることで発展してきた例などを紹介。

 さらに安倍政権が作ろうとしている「国家戦略特区」について言及。「今の日本は、金の輸出で儲ける国になってきている。人さまの土俵で相撲をとらせてもらうのに、自分だけが一番になりたいというのではだめだ。『力と愛と思慮分別』というのはすごい言葉だ。そういう愛から目を背けない勇気が大切だ」。グローバル時代を生き抜くために「シェア(市場占有率)からシェア(分け合う)へ」との合言葉を掲げるべきで、「目指すところは包摂性と多様性」と解説。

 講演後の質疑応答では、質問が多数寄せられた。グローバル世界での自己責任論について「これがすべてであると言われるが、誤解だ。自己責任だけでは生きていけない。共生するということは自己責任論を超えることだ」。「包摂性も多様性も強い理想郷に行くにはどうすればいいのか?」との質問には、「最大の敵は無関心。人の痛みに常に感受性を高めていなさいということ」と語った。

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