【映画】「もうひとりの息子」 湾岸戦争にさかのぼる悲劇が… 2013年11月23日

 テルアビブに暮らすシルバーグ一家。息子ヨセフ(ジュール・シトリュク)が兵役前の健康診断を受けたことで、遺伝的にその両親の実子ではないことが判明した。後に病院側の調査で、生まれたときに赤ん坊の取り違いがあったことが明らかになる。

 子どもを取り違えられた相手はパレスチナ人夫婦だ。病院長はこの2組の夫婦を前に、ヘブライ語ではなく英語で説明する。話は、18年、湾岸戦争までさかのぼる…。

 イスラエルに占領される前からヨルダン川西岸地区に暮らすアル・ベザズ家。今は高い壁に囲まれて村を出ることができない。ヨセフと同じくハイファで生まれたヤシン(マディ・ザハビ)は、医師を目指している。

 根深い対立的関係にある民族間を舞台とした、デリケートな問題を扱っているが、政治色よりもむしろ、家族愛や、人間の心の交流を描いている。動揺しながらもお互いを意識するようになる息子たちと、その事実を受け容れようと苦しむ母親。葛藤する家族。二家族の距離がだんだんと近づく様子に、分離壁でさえも分けることのできない希望や信念を見る。

 メガホンをとったのは、フランス人女性監督のロレーヌ・レヴィ。ユダヤ人であり、家族の多くを強制収容所で亡くした。「無心論者」と公言するこのレヴィ監督の独特の視点が、ユダヤ、アラブどちらにも偏るものではなく、一人の人に起きた悲劇としてその葛藤を描く。

2012年、東京国際映画祭グランプリ&監督賞をダブル受賞。

シネスイッチ銀座ほか全国で公開中。

©RapsodieProduction/CtiēFilms/France3 Cinēma/MadeleineFilms/SoloFilms

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