「震災復興と宗教」テーマに日宗連セミナー 〝「政教分離」で公的支援受けられず〟 2014年1月18日

 東日本大震災から約3年。復旧・復興作業が続けられる中、神社や寺院、教会などの復興の現状と問題を考えようと、日本宗教連盟(田中恆清理事長)が「震災復興と宗教」をテーマに「第2回宗教法人の公益性に関するセミナー」を12月13日、神社本庁(東京都渋谷区)で開催した。約120人が参加した。

 民俗学者の赤坂憲雄氏(学習院大学教授、東日本大震災復興構想会議委員)が基調講演を行い、丹治正博(福島県宗教団体連絡協議会会長、福島県神社庁庁長)、川上直哉(日基教団仙台市民教会主任担任教師、仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク事務局長)、長谷川正浩(弁護士、日本宗教連盟評議員)の各氏がパネリストとして発言した。

 震災後、1年半ほど被災地を歩き続けてきたという赤坂氏は、「気が付くと、小さな霊場や聖地のようなものがいたるところに生まれていた」とし、神社や祠で手を合わせる中で、「いつしか自分は巡礼をしていると思うようになった」と、印象を語った。

 「この震災の中で見た一つのとても大切な風景は『宗教』だった。被災地のいたるところに『宗教』が露出していた」と述べ、福島県いわき市の薄磯地区で、がれきの中に立ちつくす鳥居を見たことが、「震災と宗教」というテーマが自分に根を下ろした瞬間だったと振り返った。

 また、「(明治以降の開発によって)人間たちが自然の懐に深く入り込んで、人間たちのテリトリーを拡大してきた。そこが津波の厳しい被害にあっている。よく眺めてみると、古くからの人が住んでいた場所、そこに建っている神社が生き残っていることが多かった」とし、「この震災の中でわれわれは、人間と自然との境界をもう一度引き直すことを大切なテーマとして課せられたのかもしれない」と述べた。

 震災から2カ月半が経った時期、宮城県南三陸町の漁村では、死者に対する鎮魂・供養をテーマとした「鹿(しし)踊り」という民俗芸能が復活していたことが印象的だったと述べた上で、「民俗芸能は、地域のきずなやコミュニティのアイデンティティを作っていく時に、大変重要な役割を下す」と強調。「人間同士の生臭い関係を超えた、ある垂直的な神や仏との関係が、厳しい対立を超えるために大変有効なメカニズム」だとし、民俗芸能が宗教的行為であることを再確認した。
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 丹治氏は、「名もない神社・お寺の草の根の祭り、芸能を復活させない限り、真の地域の復活はあり得ない」と述べ、2013年6月に福島県宗教団体連絡協議会が復興大臣に提出した要望書を提示。憲法の政教分離の規定により、被災した宗教施設が公的支援を受けられない現状について、「宗教施設への逆の差別ではないのか」と訴えた。

 川上氏は、宮城県宗教法人連絡協議会による「宗教の公共性」を主題とした法人研修会のあゆみを紹介。現在の問題として、「被災地を離れた教団本部との温度差」「宗教法人間の連帯の不足」などを指摘。「(免税だから)自主再建」という建前のもと、再建不許可地の代替地があてがわれない状況がある一方で、「グリーフケア」などにおいて、宗教の支援機能への期待と実績があることも指摘した。

 その上で、「公共性を獲得しなければ、公的支援も得られない」として、宗教者の役割変更の必要性を自覚することを強調。具体的に、「『墓地管理者』という公共性と、『墓地管理施設』としての本堂の役割を確認すること」「生存における危急の場合は、法人も自然人も区別なく、憲法で保障された生存権あるいは社会権が認められることを確認すること」などを提言した。

 発題する川上氏

 長谷川氏は、2012年7月に閣議決定された「福島復興再生基本方針」について、事前の意見公募で日本宗教連盟が「宗教についても十分に配慮すべき」とした意見を提出したことを紹介。それに対して復興庁は「宗教そのものの観点から復興施策を講ずることについては、憲法第20条の規定を踏まえ、慎重な対応が必要」とし、「地域の歴史的、伝統的な宗教施設等」が「文化、観光等の再生の観点から」復旧・復興の対象となることもある、と回答したことを示した。

 また、それに対して同連盟が同年9月に意見書を提出し、「歴史的・伝統的なものであって、文化・観光等の再生の観点が見出せなければ宗教施設等は対象外とのお考えであれば、憲法に定める政教分離原則の解釈を誤っており、宗教に対する差別、宗教法人や宗教団体に対する不利益な取扱いとも取れる見解であり、到底容認することは出来ません」と主張したことを取り上げた。

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