各地で「2・11」集会 〝「信教の自由」守ろう〟 国家、天皇、教会の歴史検証 2014年3月1日

 特定秘密保護法の制定、首相による靖国神社参拝など、安倍政権のもと全体主義的な傾向が強まっていく中で、今年も2月11日には各地で「信教の自由を守る日」の集会が行われた。

「なくせ!建国記念の日許すな!靖国国営化 2・11東京集会」
岡田明氏 〝国民性や「天皇キャラ」は「ファンタジー」にすぎず〟

 在日本韓国YMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)では、第48回「なくせ!建国記念の日許すな!靖国国営化 2・11東京集会」が同実行委員会の主催で行われ、約100人が参加(日本キリスト教協議会=NCC=靖国神社問題委員会、東京地方連合社会委員会後援)。「歴史から見た〝天皇キャラ〟と日本の人々」と題し、都立高校教諭の岡田明氏が講演した。

 岡田氏は、予防訴訟・処分撤回訴訟の原告として天皇神格化の問題に向き合ってきた立場から、高等学校で広く使われている教科書の記述を紹介しつつ、一般民衆の姿がほとんど載っていないことや時代区分の根拠があいまいなことなどから、実証的ではない「ファンタジー」にすぎないことを論証。歴史教育の中で天皇がどのように扱われてきたかを解説した。

 天皇家を「永遠から永遠に続く尊い血筋」とする万世一系説について、歴史的には3度断絶しているものの、教科書に系図が載ることによって繋がっていると思い込まされていると指摘。

 代々の天皇について実例を挙げながら、今日のような崇敬の対象ではなかったとし、日本人の「国民性」についても、「儒教思想が浸透する以前の日本人は規律や秩序に縛られていなかった。戦国時代の武士たちにも恥や玉砕の思想はなく、江戸時代の武士や昭和期の軍隊より命を大事にしていた」と説いた。

 また、欧米列強を体験した維新の政治家たちが作り上げた天皇制について、「儒教、神道、キリスト教の絶妙な融合により、天皇の恩に国民が感激して忠義を尽くすという『天皇の新興宗教化』とも考えられる。そこに、キリスト教徒が異教の神を崇拝する儀式を拒否できなかった理由もあるのではないか」と分析。

 「幾多の災害と向き合い、平和的で国民を思いやるありがたい存在として進化してきたが、実質は神道との関係を切らずに非宗教化され、宗教ではないので押し付けてもいいという論理が根付いてきた」「日本人の国民性や天皇〝キャラ〟が昔からあったというのは誤りで、ここ100年以内でのこと。明治以後、学校と軍隊で注入され、教科書が巧みに『ファンタジー』を再生産している。今日もいまだ集団洗脳状態にあるのではないか」と問いかけた。

 会場では、岡田氏による著書や「特定秘密保護法に反対する牧師の会」による新刊などの販売も行われた。終了後、参加者らはデモを行い「信教の自由を守ろう」と沿道に訴えた。

日本同盟基督教団「教会と国家」委
安藤肇氏 〝国家権力と反対の思想持つ自由守る〟

 日本同盟基督教団「教会と国家」委員会(柴田智悦委員長)が主催する「2・11信教の自由セミナー関東地区集会」が2月11日、椎名町教会(東京都豊島区)で開催され、日基教団隠退教師の安藤肇氏が「改憲の危機に際して」と題して講演した。63人が出席した。

            

 現在87歳の安藤氏は、日本基督教神学専門学校(現・東京神学大学)に入学した1944年当時を振り返った。同専門学校は、同志社大学神学部を除く諸々の神学校が同年に合同してできたもの。学則には教育勅語を奉戴する学校であることが明記され、文部省の認可を得るため「道義科」「教練科」などの授業があった。

 同校の礼拝では、「米英を撃滅したまえ」と熱烈に祈る教師もおり、ある教師にキリスト教信仰と教育勅語の関係性を問うた時には、「曰く言い難し」という返答が返ってきたという。戦場から復学した上級生が、神社に敬礼しなかった下級生を殴打したエピソードも紹介し、「これが戦争中の教会の姿であり、また神学校の姿であった」と語った。

 その上で、「1927年に宗教法案に反対できた教会が、なぜ31年の満州事変に賛成してしまったのか」と指摘し、「自分の教会の宣教の自由を守るだけではなく、国家の権力と正反対の思想を持っている人たちの自由を守ることが、結局は自分の信仰の自由を守ることになる」と強調。

 治安維持法の成立時、「共産主義を取り締まるものであり、キリスト教を取り締まるものではない」として、大多数の教会が同法に反対しなかったことを例に挙げ、「他人の思想の自由を見殺しにした人間は、結局自分の思想の自由を奪われてしまう。それが戦前の教会の教訓であったのではないか」と訴えた。

 そして、このような風潮が現在も続いているとし、2月9日に行われた都知事選挙を例に、「なぜ、原発問題について意見が同じなのに別々の候補を立てるのか」「なぜ、広い意味での統一戦線が日本にはできないのか」と危機感を示した。

 参加者の1人は、安藤氏の意見に賛同しつつ、主催の「教会と国家」委員会に対して、「取り組みとして広めてほしい。共闘できるところと手を組むことは大事なこと」と述べ、具体的な取り組みを求めた。

 安藤氏はこれまで、日基教団石動教会、長崎平和記念教会、保田教会の牧師を歴任。66年高根台伝道所(現・新津田沼教会)を開設し、2002年に隠退した。『あるキリスト者の戦争体験』(日本YMCA同盟出版部)、『深き淵より――キリスト教の戦争経験』(長崎キリスト者平和の会、復刻版=キリスト新聞社)などの著書がある。

神奈川バプテスト連合社会委
加藤誠氏 〝「聖書力」養い、「対話力」高める〟

神奈川バプテスト連合社会委員会は2月11日、「信教の自由を守る日集会」を湘南台バプテスト教会(藤沢市)で開催した。ゲストスピーカーとして加藤誠氏(日本バプテスト連盟大井バプテスト教会牧師)が「いま、バプテストとして生きる」と題して語った。信徒ら約70人が参加した。

                        

 加藤氏は、まず「特定秘密保護法」の成立や靖国神社参拝など、安倍政権に移行後の主な動きを解説。そのような時代の変化の中で、バプテストの源流に遡って、信教の自由や教会と国家について検証し、現代に生きる意味を再考した。

 昭和初期の、「十五年戦争」に向かう道程で、バプテストの足跡について話した。政府による宗教団体取締りの動きに敏感に反応し、明確に反対していたにも関わらず、反キリスト教の風潮が広まり伝道が思うように伸びないと、国策に協力する道へ傾いて行った。「大東亜共栄圏という虚構と一体となり協力していった。日本が占領した南の国々にバプテストからも派遣された」。

 「建国記念日」制定に対する連盟諸教会の議論にも触れ、1966年の連盟第20回年次総会で行われた議論を挙げた。政治課題に関わるべきか関わらざるべきか、この時の議事録にある賛成・反対双方の意見から読み解いた。

 加藤氏は、「バプテストは、それぞれ個人がどう考えるか、どう告白するかを大切にする」と述べ、「ではわたしたちの教会ではどう考えるのか? という問題は今も出ている。教会は今の流れに明確に反対するのか。どこまで教会の事柄とするのかが問われている」と指摘し、17世紀イギリスで誕生したバプテストの歴史から学び直すべき点を提示。

 「聖書力」を養っていくこと、「対話力」を高めていくこと、戦争責任の自覚などを挙げた。

 講演後は3人の信徒が感想を述べた。「過去の歴史を振り返ってみて、先達の中には体制に対し勇敢にたたかった人もいれば、また、協力したという悲しさもある」「今日聞いた話を教会に持って帰って皆で話し合おうと思う。わたしたちが弱いのは団結力やスピード、行動力。安倍さんの行動力とスピードはすごい。あれに負けてはいけない。バプテストは上からの指示で動くものではない」といったコメントが出た。

 

 

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