賀川の聖書解釈 現代性に注目 同志社大で並木浩一氏が講演 2014年7月26日

 「賀川豊彦はヨブ記をどう読んだか」と題する講演会が7月3日、同志社大学クラーク記念館(京都市上京区)で行われた。小原克博氏(同志社大学大学院神学研究科教授)の現代神学研究クラスの一般公開講座として開催され、並木浩一氏(国際基督教大学名誉教授)=写真=が講壇に立ち、約50人が出席した。

 並木氏は、内村鑑三のヨブ記三部作から同書が内村の生涯の慰めの書であり、自己発見の書であったことを指摘。一方、賀川豊彦のヨブ記の実践的解釈として『苦難に対する態度』を挙げ、賀川にとってヨブ記は悪にくじけず、弱者救済のために自己と奉仕者を激励する書であったことを指摘した。

 内村のヨブ記理解が、19章を頂点とするキリストの復活と再臨の預言を中心になされたのに対し、賀川は、貧者の悲惨を描く24章に注目して、社会悪、宇宙悪に煩悶したヨブへの神の叱咤激励として「汝、腰ひきからげて丈夫せよ(38・3、40・7)」を同書の最高潮と解釈した。

 並木氏は『苦難に対する態度』を章ごとに解説しながら、近代的な個人として賀川豊彦がヨブの直面した人間苦、社会苦に自画像を重ねてヨブ記を読んだ点に、彼の聖書解釈の現代性があることを述べた。また賀川が同書執筆の際に大乗仏教の維摩経から刺激を受けたこと、賀川の思想とカールバルトとの比較の可能性、賀川における客観的事態としての苦と主観的判断としての悪の区別があることなどに言及し、賀川豊彦の思想は全体として評価すべきと訴えた。

 特に、関東大震災の救援に尽力した賀川が天譴論(災害は腐敗した人類社会への天罰だとする態度)には断固反対しつつも、その契機を汲んでいたことに言及し、賀川の思想と実践が災害援助、経済、環境という観点からも現代性を持つと語った。並木氏は、賀川独特の「生命」の神観、「神の国」と終末論などを今後の研究課題として挙げ、講演を締めくくった。司会の小原氏は、多極的で柔軟な賀川の思想世界が、自己限定的な現代社会の狭さを開く叱咤激励となると総括した。

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