日本人による礼拝会衆賛美歌を 「賛美歌工房」が初の歌集を発行 2014年10月11日

 日本の教会の「新しい礼拝会衆賛美歌」の創作を目指す超教派グループ「賛美歌創作の集い」(愛称「賛美歌工房」、海老原直秀代表=写真)が、初の歌集『賛美歌工房歌集Ⅰ』を9月10日に発行した。

 賛美歌工房は、日本人の作詞・作曲によるオリジナル礼拝会衆賛美歌の創作を目指すグループで、日本聖書神学校の校長を務めた故・今橋朗氏を助言者に迎え、2010年3月に発足。日本福音ルーテル教会東京教会(東京都新宿区)でほぼ毎月例会を開き、作詞・作曲した作品を持ち寄って研究討議を行っている。現在、正会員7人と賛助会員1人が所属している。

 『賛美歌工房歌集Ⅰ』は、メンバーが4年以上にわたり研究討議した作品の中から33曲を収録。作詞者は前田豊(日本キリスト改革派教会引退牧師)、荒瀬牧彦(カンバーランド長老キリスト教会めぐみ教会牧師)の両氏。作曲は高浪晋一(日本キリスト教会世田谷千歳教会会員)、萩森英明(日本福音ルーテル教会武蔵野教会会員)の両氏と、カンバーランド長老キリスト教会高座教会会員である海老原氏が担当した。

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 同歌集の特徴は、前田氏による「聖書の言葉による分かりやすい日本語の歌詞」と、荒瀬氏による「斬新な表現による歌詞」という二つの傾向の歌詞が収録されていること。

 後者の例として、31・32番「いのりではないか」では次のように、震災後の福島が歌詞に取り込まれている。

 「神さまのつくられた/美しいこの世界で/今なにが起こっているのか/浜通りの ひと気なき町を/さまよえる牛たち/あなたのうめきは/いのりではないか」(1節)

 同歌を例に海老原氏は、「いつの時代の賛美歌でも、その時代の状況の中でクリスチャンが苦しみながら神さまに祈り、賛美し、問いかけていった。日本に置かれている少数のクリスチャンとして、日本の中で神さまの愛をどう伝えていくか、目をふさがず現実を見つめ、連帯しながらとりなしていくという視点に立った歌もほしい」と話す。

 同歌は同じ歌詞に基づき、萩森氏による明るいフォーク調(31番)と、高浪氏による伝統的な曲調(32番)の2種類が収められている。

 他にも、19・20・21番の「歌いたい」では、荒瀬氏の歌詞に3人の作曲者がそれぞれ曲を作っており、表現の多様性を意識することができる。

 同歌集には1曲のみ翻訳歌も収録されている。25番「愛する神よ」で、19世紀の詩人ルイーゼ・ヘンゼルの詩を今橋氏が訳し、節を入れ替えて高浪氏が作曲したもの。それ以外はすべてオリジナルの作品だ。

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 賛美歌工房では、前田氏と荒瀬氏に続く、会衆賛美歌にふさわしい歌詞を作る3人目の作詞者が生まれることを望んでいる。そこでまず、どのような歌詞が必要かを検討するため、一昨年、日本で出版されている五つの歌集(『讃美歌21』『教会讃美歌』『新生讃美歌』『新聖歌』『日本聖公会聖歌集』)の比較分析を行った。各賛美歌をカテゴリー別に分類し、数の少ないカテゴリーの賛美歌を作ることを目標とした。

 分析の結果、20曲以下のものとして、グローリア、応答唱、信仰告白、主の祈りなど19のカテゴリーが抽出された。「『ニーズがあるけれども少ない』という歌を作詞していく必要がある。礼拝共同体が必要としている歌を考えていく必要がある」と海老原氏は指摘する。実際にこの分析結果が今回の歌集に活かされた。「創造者としての神」に関する歌が少ないことから、前田氏に作詞を依頼し、11・12番「創造の力」が生まれた。

 歌集の完成までには創作者同士の衝突もあったという。「神学的、文学的、音楽的、教会論的に、総合的に研究協議をしていかないと、表現法の違いでぶつかることが出てくる」。今後は特に文学者によるアドバイスが必要だと指摘する。「神学に裏打ちされたクリスチャンとして賛美歌の文学を論じることができるような人が必要。そうでないとディスカッションにならない」。

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 同歌集について、楽譜だけでは分かりにくいという指摘もあり、音源を収録したCDの制作も検討しているというが、「まずは歌集を歌う集いを各地で開催したい」と海老原氏は話す。新しい表現の歌詞についての感想や反論など、現場の声を採り入れていきたいと言う。「実際に使っている現場の声を創作者がキャッチしないと、なかなか良いものができない」。

 『賛美歌工房歌集Ⅰ』は500円(税込)。問合わせ・申し込みは賛美歌工房(FAX=045・942・7265、Eメール=hymn.koubou@gmail.com)まで。

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