「西ヨーロッパでは〝文明戦争〟」 上野景文元駐バチカン大使が講演 2014年11月8日

 元駐バチカン大使で文明論考家の上野景文氏(杏林大学客員教授=写真)が10月15日、「バチカンを通して見た西欧の真髄」と題してカトリック麹町聖イグナチオ教会(東京都千代田区)で講演した。同教会真和会(大海龍生会長)が主催し、約270人が出席した。

 2006年から2010年まで駐バチカン大使を務めた上野氏。特定の宗教には属しておらず、現地では自らを「ブッディスティック(同氏の造語で『仏教系』の意)・シントウイスト」と呼んでいたという。

 同氏は「西ヨーロッパは南北間でかなり過激な文明戦争を展開している」と述べ、南北の文明の亀裂を「信仰のカーテン」と名付けた。北は脱キリスト教化が進み、南は伝統的な宗教観が色濃く残っているとし、「信仰のカーテン」がスペインやポルトガルまで南下していると指摘。「ローマ教皇庁は、北の人間中心主義の人たちを相対主義者と呼び、10日に1回は彼らを糾弾するようなメッセージを出していた。その執念はすごい」と、印象を語った。

 また同氏は、ノーベル賞、オリンピック、ユネスコの文化遺産などを例に、いずれも「超一流のブランドを認定する装置」だと説明。その共通点として、「西ヨーロッパ出自」「対象となる国や地域は世界全体」「世界各国がそのメカニズムの権威を認めている」という3点を挙げた。

 これらが「(世俗的な)聖人や聖地」を生み出すという意味で、「(宗教的な)聖人」を生み出してきたローマ教皇と発想が同じだと述べ、「自らが超越的、絶対的な権威を確立する必要がある」「その権威をベースに世界標準を決める」「その基準を使って認定を行う」という共通点を指摘。

 一方で米国については、「一国主義が強いので、バチカン型の認証システムを作るという発想は存在しない」と、アカデミー賞や野球を例に主張。世界には、米国型・アングロサクソン型のグローバリズムと、バチカン型・ヨーロッパ型のグローバリズムの二つがあると論じた。

 「今日における西欧社会の得意技は、『世界標準』を自分たちのイニシアティブ、リーダーシップで作ること。今後もそのこだわりを持っていくと思う」とし、その背景にはバチカン的な発想があることを強調した。

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