米キリスト教出版事情に学ぶ 出版販売協会が専門家招き勉強会 2014年12月13日

 キリスト教出版販売協会出版部会(髙木誠一部会長)は10月24日、ウォン・ダルチュン氏(元アビンドンプレスディレクター)を招いた勉強会を、東京・銀座の日本聖書協会で開催した。アビンドンプレスはメソジスト教会によって1789年に設立されたアメリカ最大手のキリスト教出版社。ウォン氏の親族である朴憲郁氏(東京神学大学教授)の仲介で実現に至った。

 「米国における宗教関係出版の職務の挑戦と希望」と題して語ったウォン氏は、出版社にとって大きな収益の柱は、比較的安価に製作でき、一定部数の販売が見込める教会学校向けの出版物だが、教会学校の生徒数減少に伴い、かつてのような収益は上げることができないと指摘。

 さらに読者層の多様化により、書籍1点当たりの発行部数が限られるようになってきており、出版費用の上昇につながっているという。売上を維持するために発行点数を増やさなければならないものの、牧師が1年に購入する書籍は2冊だけという統計もあり、購買力の低下も深刻だ。

 他方、アビンドンプレスが2012年に刊行したCEB(Common English Bible)は初年度に75万部を販売。これは福音派を中心に最も広く読まれている英訳聖書NIVと、リベラルなNRSVとの中間に位置づけられる超教派の国際的な聖書翻訳である。

 このような状況を踏まえ、アビンドンプレスとグループ社は73店舗あった直営書店を昨年すべて閉店し、直接営業に切り替えた。直営書店は全米に70人の担当者がおり、教会や個人に直接営業を行っている。

 アビンドンプレスの収益の柱は、原価率20~25%の教科書である。国外で製作すれば費用は抑えられるが、重版に時間がかかるほか、品質管理が難しい。電子書籍が売上に占める比率は20%以下。製作コストはむしろ電子書籍のほうが高いという。

 日本と比較すると市場規模ははるかに大きいものの、共通する課題も多い。参加者からは、印税率や編集者1人当たりの年間製作点数など、多くの質問が寄せられた。

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