〝いのちの尊厳〟確立するために 聖学院大と韓国・長老会神学大がシンポ 2014年12月25日

        

 東日本大震災と原発事故、また韓国の旅客船セウォル号沈没事故を受けて、「いのちの尊厳の確立」が日韓両国にとって緊要の課題であるとして、聖学院大学(埼玉県上尾市、姜尚中学長)は、同学提携校の韓国・長老会神学大学校より尹哲昊(ユン・チョルホ)教授=写真右=と、朴成奎(パク・ソンギュ)助教授=同左=を招き、日韓神学シンポジウム「いのちの尊厳の確立」を11月7日に開催した。100人が参加した。

 セッションⅠでは、窪寺俊之氏(聖学院大学大学院教授)が「傷付いた魂へのスピリチュアルケア」と題して講演し、尹氏がコメントを述べた。

 窪寺氏は、東日本大震災の被災地で日本の宗教者が立場を超えて働きを共にしていることは、「宗教家によるケア」であって「宗教的ケア」とは異なると指摘。「宗教家の祈祷や読経によって、亡くなった人はこの世からあの世に移ることができたと実感できて、生き残った人の悲しみが鎮まった」とし、宗教家の存在の意義を強調した。

 その上で、「大震災、津波、原発事故は既存の価値観や世界観を破壊したので、人は新しい人生の土台をスピリチュアルなものに求めた」と解説。スピリチュアルケアとは、「宗教的教理や制度を超えて、痛んでいる人に寄り添い、その人のスピリチュアリティ(人生の基盤)を支えながら、一歩ずつ進むこと」だとして、宗教的ケアとの違いを明らかにした。

 さらに、スピリチュアルケアによる癒しのわざは、「分裂や対立、憎しみと暴力、紛争と戦争の悲劇を作り替えて、理解と和解、協力と助け合いという再生の物語を生み出す」と述べ、「より広い視野と世界観に立つ、平和を創り出す可能性をスピリチュアリティの中に見ることができる」と語った。

 尹氏は、人間の「霊的癒し(スピリチュアルケア)」は人間の罪の悔い改めと神による罪の赦しから来るとし、震災や津波などの災難により苦しみを受けている人々への霊的な癒しも、「神の霊にあって神の霊を通してのみ可能となる」と主張。また、キリスト者が行う霊的ケアは宗派的な宗教的治療となる必要はないとしつつ、「彼らを神との関係において導く必要がある」と強調。「われわれはすべて『癒された癒し人』として他の人の傷や苦しみを治療する働きへと召されている」と述べた。さらに霊的癒しの原理は共感的愛だとして、「聖霊の力が共感的愛において隣人の苦しみと悲しみを共にするわれわれを通して現れるところに、霊的癒しと救いの働きが起こる」と応答した。

 これを受けて窪寺氏は、スピリチュアリティには、特殊性(キリスト教のスピリチュアリティ)と普遍性(すべての宗教を含む神秘的世界)があるとし、尹氏の指摘は前者であるとして賛同しつつも、これを強調すると相手を排除することになると指摘。後者の意味で理解することによって、「お互いの相違や壁を取り除いて、一致点を見つけることができるのではないか」と意見を述べた。

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 セッションⅡでは、朴氏が「生命の危機的時代にいのちの尊厳を確立するための神学的対案の模索」と題して講演し、姜氏と阿久戸光晴氏(聖学院理事長・院長)がコメントを述べた。

 組織神学を専門とする朴氏は、現代社会が「いのちの脅威の時代」「いのちの尊厳の喪失した時代」という否定的側面を持っていると指摘。

 いのちの尊厳を確立するための対案的方法として、1948年の第1回世界教会協議会(WCC)アムステルダム総会でのカール・バルトの講演を取り上げた。バルトは同総会の主題「世界の無秩序と神の救済計画」を前後逆にして「神の救済計画と世界の無秩序」という形で扱うことを提案したとし、そうすることで「まずは神の豊かさとその義を考察しなければならなくなり、そうしてこそ次にわれわれは世界の無秩序と関連して必要と考えられるすべてのことを、そこに加えることができるようになる」と解説。

 「神の救済計画から人間のいのちの危機という災難を眺めるとき、はじめて人間には救いという希望が近づいてくる」「人間にとっては、生と死の世界の分離が絶望であり苦しみであるが、神の世界では生と死の世界がすべて主の統治下にある。まさにこのような神の救済計画に人間のいのちの希望がある」と述べ、「神の救済計画」の観点から今日のいのちの危機という問題を見通してこそ、真に未来的希望を発見することになると主張した。

 阿久戸氏は、神の救済計画から世界の無秩序を他者的にどう救済するか、という上下関係に疑問を呈し、「共に苦しみを共有し合う」ことを強調した。

 それに対し朴氏は、キリスト教は苦悩するだけの宗教ではないとし、「わたしたちはいのちに対する解釈を求めているわけではなく、『復活』という希望について考えている。だからこそすべての議論の前提として『神の救済計画』という視点から問題にアプローチしていかなければいけない」と応答した。

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