「すべての災害は『不自然』」と強調 ヘイフマン教授、津波・福島災害を考察 2015年2月14日

 東日本大震災と福島第一原発事故からまもなく4年。このたび、英セント・アンドリュース大学神学部の新約聖書学教授であるスコット・ヘイフマン氏=写真=が来日し、「創造から新しい創造へ――イエス、審判、そして津波・福島災害」と題して青山学院大学(東京都渋谷区)で講演した。1月31日に同大学総合研究所が主催し、30人が出席した。

 自然災害と人災について聖書的、キリスト教的視点から考えるにあたり、同氏は、ルカ福音書13・1~5を引用。これは、イエスが人間的堕落の悪と自然災害の悲劇の両方に同時に応えている箇所であり、五つの驚きがあると指摘した。

 一つ目は、ピラトがガリラヤ人たちを殺したという群衆の報告に対して、イエスはピラトに裁きの宣言も呪いも発することなく、告げた者たちを慰めることもしなかった、ということ。

 二つ目は、イエスがピラトによる「人為的になされた悪」に、シロアムの塔の倒壊という「『自然』災害による死」を加えていること。

 イエスが人間の意図的悪と自然災害を結び付けたことについて同氏は、聖書を通して前提とされている被造世界に関する最も基本的な視点(初めに神が人間と被造世界を互いに調和し合い、神に依拠するものとして創造された。人間が神の世界の〝管理責任〟において神に従属するものであったように、被造世界は人間に従属するものであった。アダムとエバの神に対する反抗的独立をもたらした人間の「堕落」は、創造秩序の「崩壊」をもたらした)を思い起こすことを提言。「人間が神に反抗するのと同じように、人間以外の被造世界すべてが人間に対して反抗する」「聖書の視点からすれば、『自然』災害というようなものはない。すべての災害は『不自然』であり、神の本来の世界設計とは反対のもの」と強調した。

 イエスが語る二つの事件は「究極的には創造秩序の不自然な帰結」であり、津波被害や福島での災害もまた、「崩壊した創造世界の大規模な悲劇であり、それを究極的にもたらした堕落した人間性のより大きな悲劇でさえもある」と主張した。

 三つ目の驚きは、イエスが聴衆の関心を、打ちのめされている人々に向けさせていること。災難に遭った人々は特段罪深い者であったわけではないとし、「災害というのはすべからく秩序を失った人間と被造世界の状態がもたらす帰結であり、普遍的なもの」であって、この世界における人間は、何が起ころうとも無垢な傍観者であることはあり得ない、と同氏は指摘。「イエスによれば、すべての人が等しく招かれ、区別なく神に対する反抗を悔い改めることへと招かれている。この世における悪と自然災害の波及に濃淡があろうとも」「そしてイエスは両方のケースにおいて、この悪と崩壊によって衝撃を受けないものは、悔い改めなければ『同じように滅びる』と警告される」と述べた。

 四つ目の驚きは、二重の悲劇が一つの倫理的重要性を帯びていること。イエスにとって問題は、人間と被造世界全体が、その創造者に対する反逆に陥っていることであり、「それゆえ生全体において根本的な混乱がある」と強調。「これらの悲劇を、人間の滅亡および悔い改めの呼びかけの両方と結びつけることで、イエスは道義的悪、堕落した自然世界、そしてそれらに直接的にも間接的にも影響されるものすべてが神の裁きの下にあり、贖いと回復の必要に迫られていることを明らかにする」と論じた。

 五つ目は、死の悲劇へのイエスの応答の言葉は、希望についてのより大きな文脈に置かれるべきこと。「歴史の中間点におけるイエスの死と復活は、死の呪いを伴う最初の創造の『堕落』を振り返り、そして復活の命の祝福を伴う新しい創造におけるすべてのものの回復を望み見る」とし、「聖書の視点によれば、創造から新しい創造への移行は、結果として、わたしたちの生きる世界の悲劇を見るレンズでもある」と主張。

 最後に、未来への希望は我々の生き方を変えることを迫っていると強調。「イエスは、人々を導いて他者の必要に向き合い尽力させる」と述べ、「悲劇へのキリスト者の応答は、それを『自然』なこととして受け入れることではなく、反抗によって破壊された世界を再建するために働くことである」と結んだ。

 同総合研究所では、2012年度から3年間、「3・11以降の世界と聖書――言葉の回復を」というテーマで研究プロジェクトを行っており、その一環として今回の講演会が企画された。青山学院大学宗教主任の福嶋裕子氏がプロジェクトの代表を務めている。

 ヘイフマン氏は同講演のほか、東京キリスト教大学と東京神学大学での公開講義、また国際基督教大学教会での説教奉仕を行った。

 

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