「翼賛体制」危惧する言論人が声明〝どんな時勢でも権力には批判を〟 2015年2月21日 

 イスラム過激派組織「ISIL」による日本人の人質事件以後、安倍政権への批判を「自粛」する空気が社会に広がっているとして、ジャーナリストや作家、映画監督など、表現活動に携わる人々が2月9日、「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」を発表した。1日にインターネット上へアップした声明文には、翌日だけで2万件を超えるアクセスがあったという。

 声明には、想田和弘(映画作家)、宮台真司(社会学者)、青木理(ジャーナリスト)、上野千鶴子(社会学者)、内田樹(思想家)、香山リカ(精神科医)、雁屋哲(漫画原作者)、是枝裕和(映画監督)、坂本龍一(音楽家)、中沢けい(作家)、平田オリザ(劇作家)、平野啓一郎(作家)、孫崎享(元外交官)、森達也(映画監督)、森永卓郎(経済評論家)、吉田照美(ラジオパーソナリティ)の各氏ら約1200人が賛同者として名前を連ねた。他にNHKの現役プロデューサーや、大手新聞社、出版社の社員も賛同を表明している。

 9日、東京・永田町の参議院議員会館で行われた記者会見=写真=では、今井一(ジャーナリスト)、マッド・アマノ(パロディ作家)、小林節(憲法学者)、古賀茂明(元経産官僚)、雨宮処凛(作家)、おしどりマコ(お笑い芸人)、大芝健太郎(ジャーナリスト)の各氏が発言し、賛同の意を表した。

 今井氏は、特に日本共産党の池内さおり衆院議員が安倍晋三首相に対する批判ツイートを削除し、謝罪したことに触れ、「どんな時勢でも、どんな政党が政権を担っていても、権力への批判をはばかってはいけない」と強調した。

 2004年の参院選時に自民党から通告書をもらったことがあるというアマノ氏は、「当時、幹事長であった安倍氏と顧問弁護士の名による内容証明を受け取った。風刺は権力の嫌がる表現であり、これを封殺する動きが出てきている」と懸念を表明。

 「アイ・アム・ノット・アベ」という「報道ステーション」内での発言で批判にさらされた古賀氏は、「今日は相当危機的な状況。報道の自由への抑圧、報道機関自身の迎合、選挙による独裁政権の誕生という3段階のうち、第二段階まで来ている。報道の自粛が始まれば、正しい情報が行き渡らなくなり、正しい判断ができなくなる」と警鐘を鳴らした。

 雨宮氏は、「非国民」「国賊」「売国奴」という言葉が普通に流通するようになってきたことを危惧し、「イラクには2度行っているが、日本はこれまで戦争をしない、軍隊を持たないということで信頼されてきた。当時の小泉政権がイラク戦争への支持を表明して以来、何があったかを問い返さなければならない。そうした検証こそが必要なのに、それもできなくなるような空気が蔓延している」と述べた。

 原発事故後、精力的に取材活動を続けるおしどり氏は、「平和」は「左翼的用語だから」という理由で「平和展」のために借りられなかった公民館の話や、卒業文集で集団的自衛権の容認や武器輸出三原則に言及し、「大きくなったら国会議員になって、平和な国を作りたい」という趣旨の作文を、公立小学校の先生が「政治的批判を含む」との理由で書き直させたという事例を紹介した。

 声明は、「人命尊重を第一に考えるなら、政権の足を引っ張るような行為はしてはならない」「いま政権を批判すれば、テロリストを利するだけ」「このような非常時には国民一丸となって政権を支えるべき」などの理屈で、政権批判を非難する声も聞こえるが、「『非常時』であることを理由に政権批判を自粛すべきだという理屈を認めてしまうなら、原発事故や大震災などを含めあらゆる『非常時』に政権批判をすることができなくなってしまう。たとえば、日本が他国と交戦状態に入ったときなどにも、『今、政権を批判すれば、敵を利するだけ』『非常時には国民一丸となって政権を支えるべき』という理屈を認めざるを得なくなり、結果的に『翼賛体制』の構築に寄与することになるだろう」と危惧を表明。

 また、「政権批判を自粛ないし非難する人々に、自らがすでに『翼賛体制』の一部になりつつあるとの自覚が薄いようにみえること」を問題視し、「今こそ想像力を働かせ、歴史を振り返り、過去と未来に照らし合わせて自らの行動を検証し直す必要があるのではないだろうか」「日本国憲法の精神を支持し尊重する。そしてこの精神は、『非常時』であるときにこそ、手厚く守られ尊重されなければならない」「政権批判の『自粛』という悪しき流れに身をゆだねず、この流れを堰き止めようと考える。誰が、どの党が政権を担おうと、自身の良心にのみ従い、批判すべきだと感じ、考えることがあれば、今後も、臆さずに書き、話し、描くことを宣言する」としている。

 インターネット上では、「言論人、報道人、表現者」ではないがこの声明を支持、応援をするという支援者の署名も呼びかけている。サイト http://urx2.nu/hfDM

 

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