キリスト教文化と伝統産業がコラボ 京都 「友禅染」の老舗が全面協力 同大生が日本独自の祭服に挑む 2015年2月21日 

 キリスト教文化と京都の伝統産業技術が、美意識による異文化のコラボレーションを実現させた。「京都発のキリスト教祭服を世界に発信する」をテーマにプロジェクトを立ち上げた同志社大学の学生ら5人が、京都の伝統産業「友禅染」の老舗である「千總」と共同し、日本の文化を取り入れた新しいキリスト教祭服について発案したのだ。チャペルでの結婚式が大半を占める日本で、ウェディングドレスには教会と無縁のデザイナーやメーカーがしのぎを削る一方、司式者の祭服は画一的で、祭服、掛布、祭具のほとんどが海外からのカタログやネット販売品という現状。そうした中、キリスト教とも接点を見出そうとしてきた「千總」と同志社大学の学生が立ち上がった。

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 元になる祭服は、キリスト教の宗派や行事、階級などを考慮し、ストールを指定。「時代、宗派を超えて用いられ続けるストールを制作することで、現在だけでなく、未来へ向けて新たな可能性を発信できる」という。

 デザインも学生自らが手がけ、日本の四季とキリスト教の教会暦を重ね合わせ、季節ごとのデザインから、時の移り変わりも表現した。また、結婚式での使用を想定し、「束ね熨斗」を模した形状を採用することで、結婚するカップルの結いを表現。また、プロジェクトの核心であるキリスト教と日本文化を結ぶという意味も込めた。

 

 今回発表されたのは、日本の四季とキリスト教のモチーフが染め上げられた赤、緑、紫、白のストール4点。それぞれ日本の四季を象徴する桜、朝顔、桔梗、梅の花と、キリスト教に関連する魚、バラ、オリーブ、鳩、蒲萄などがモチーフとして飾られている。

 また京友禅ならではの「暈し」「匹田」などの技法も施されている。春の場合は、桜にバラとユリをあしらうなど、二つに共通する色・束ね熨斗文様を用いて日本とキリスト教文化を同時に表現。工程を重ねるごとに美しさを増す京友禅と、キリスト教祭服を融合させることに挑戦した。

 同プロジェクトは同志社大学の授業、プロジェクト科目によるもので、神学部4年の本間優太さんがプロジェクトリーダーとなり、約9カ月をかけて完成させた。

 祭服製作にあたり、京友禅工房だけでなく、日本聖公会奈良基督教会や河原町カトリック教会、京都ハリストス正教会、東本願寺、八坂神社なども見学。土地に根ざした和風な教会建築や西陣織の技術などを見ることで、祭服の可能性を発見することができたという。

                          

 昨年12月、同大学クラーク記念館で行われた制作発表イベントでは、完成したストールの展示のほか、企画から制作に至るまでの説明パネルや一般的なキリスト教祭服も展示された。実際の友禅染のストールを使用した模擬結婚式の映像も披露され、希望者には実際に着用して、チェキで撮影した写真をプレゼントするサービスも行われた。同イベントは地元メディアでも取り上げられ、海外からも使用したいとの反響があったという。

 神学を学び、牧師を志してきたという本間さんは、改めて祭服・装飾・シンボルなどの感覚的次元も、宗教において大きな意味をもつということを知った。歴史的にプロテスタント教会は、祭服や教会建築の華やかさ、装飾性やシンボルなどを否定してきた側面があり、神学部でも教会暦やそれと結びついた色・シンボルのことなどを学ぶ機会はほとんどない。「豊かな色彩や装飾は人間の心を豊かにするもので、それ自体は否定ができない。プロテスタントの側もそれを否定するにしろ、受け入れるにしろ、もう一度しっかりとこれらのことを学ぶ必要があると痛感した」と、本間さんは話す。

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【京都ハリストス正教会司祭・及川信さんの話】
 非常によい試みだと思う。戦前の正教会はお金がなかったので、お寺の住職が使う袈裟の生地などを再利用して祭服を作っていた。しかし、現在はあまり日本のモチーフを取り入れるということはされていない。ただ、もし仕立てを日本でするなら現状の倍近い価格になってしまう。例えばカトリック、聖公会、正教会などが一緒に柄を決めて、反物で共同発注する。後はそれぞれの教会で加工できるような形にするなら、予算的な問題もある程度はクリアできるし、日本の伝統を取り入れたものを現場で使う可能性も開かれるのではないか。

 

 

 

 

 

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