神学校新卒者エキュメニズム研修会 「教派の垣根超え、いのち尊ぶ社会を」 NCC教育部前総主事・大嶋果織氏が講演 2015年3月28日

 神学校での学びを終え、教会に遣わされる新卒者を対象とした「神学校新卒者エキュメニズム研修会」が3月11日、キリスト教視聴覚センター(AVACO、東京都新宿区)で行われた(日本キリスト教協議会=NCC=教育部主催、AVACO、 日本キリスト教団出版局、日本聖書協会協賛、NCC後援)。牧師になる前に、エキュメニズムの学びと教派を超えた出会いを体験してほしいとの願いから、毎年この時期に開催しているもの。今年はNCC加盟教派を中心に、東京バプテスト神学校、日本聖書神学校、日本ナザレン神学校、日本バプテスト神学校、日本ルーテル神学校、農村伝道神学校から13人の〝牧師の卵〟が参加した。

自らのアイデンティティ明確に

 実行委員の石居基夫氏(日本ルーテル神学校校長)による司会のもと、NCC教育部理事長の石田学氏(日本ナザレン教団小山キリスト教会牧師)があいさつ。続いて同教育部前総主事の大嶋果織氏=写真右上=が「私たちの本国は天にある――エキュメニカル運動のアイデンティティ」と題して講演した。

 この日は、東日本大震災から4年目にあたる日でもあり、冒頭、日本バプテスト連盟東日本大震災現地支援委員会(金子千嘉世・郡山コスモス通りキリスト教会牧師)による「4年を数えての祈り」を参加者一同で唱えた。

 長くエキュメニカル運動に携わる中で、多様性の中で一致と協力を目指すとはどういうことかを問い続けてきたという大嶋氏。1984年、アジアキリスト教協議会(CCA)の青年大会に参加し、翌85年から青年委員会委員、95年からは教育委員会委員を務める中で、「文字が読めなくても、自らの困難や苦しみを通して聖書はより身近に感じられる」「救いとは人間の存在すべて、被造物全体に関わるものである」「日本のキリスト者がアジア全体のキリスト者と歩むには、悔い改めと生き方の転換が必要である」ということを学んだ。これらの学びは、周囲の多様な民族や価値観の人々から得られたものであるという。

 93年から2012年まではNCC教育部総主事として活動。その内容は多くの加盟教派、団体との情報交換や共通課題をめぐる協議の場の設定、集会企画の実施、ニュースレターや学習教材などの製作、発行まで多岐にわたった。

 コーディネーター的な役割を担いながら学んだこととして、「在日大韓基督教会の存在の大きさ」「弱い立場にある人々と共に歩まなければ、加害者の立場に立つことになってしまうということ」「教育は何か特定の教えを学ばせる手段ではなく、子どもに仕え、その可能性を見出していくこと」「信徒の働きがエキュメニュカル運動を活性化させるということ」の4点を挙げた。

 「一致と協力を支えるものは多様性であり、また『あらゆる被造物の救いが神のみ心』というビジョンの共有である」と大嶋氏。一方で、多様性があるからこそ理解の違いが生まれ、自己の絶対化も生まれてしまう。キリスト者の一致と協力を強めるためには、自らのアイデンティティを明確にすることが必要だという。それは、「自己絶対化」「国家主義」「この世の評価」からの自由を意味する。

 最後に、これから牧会の現場に立たされる神学生に向け、「困難な時代にあって自らの無力さに不安を抱くこともあるが、この世での勝ち負けにかかわらず『本国は天にある』という意識をもって、本国に帰った時に互いの働きを報告できるよう、共に歩んでいきましょう」と激励の言葉を送った。

 派遣礼拝で共に火を灯した神学生ら

キリスト教諸団体との連携も

 講演後は、「キリスト者の働きを学ぶ」として、日本キリスト教団出版局、日本聖書協会、AVACO、キリスト者平和ネット、日本キリスト教婦人矯風会、キリスト教文書センター、アジアキリスト教教育基金、日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)、NCC、キリスト教学校教育同盟、キリスト新聞、クリスチャン新聞の各担当者が、それぞれの働きについて紹介する時間が設けられた。

 午後には会場を日本キリスト教会館に移し、館内のキリスト教諸団体を訪問する「エキュメニカル・ツアー」も行われ、参加者は引率者の説明に聞き入っていた。
 派遣礼拝では、小友聡氏(東京神学大学教授)がメッセージを語り、陣内大蔵氏(日基教団東美教会牧師)の奏楽で、共に賛美歌を歌いながら教派を超える交わりの豊かさを体感した。

 NCC教育部は、牧師が教会で牧会するようになると教派を超えた交わりが持ちにくくなりがちだが、この研修会を機に相互の関係を築き、また多くのキリスト教団体の働きを知ることで、教会との連携を深めたいと期待を寄せる。現総主事の比企敦子氏は、「他にも毎年多くの卒業生がいるので、さらに参加を広げたい」と話す。

 新たに宣教の現場へと派遣された牧師たちが、再び「一致と協力」のために協働できる日が来ることを願う。

 NCC教育部=1907年に日本日曜学校協会として設立。41年、日基教団の法人認可に必要な財産をつくるため、財団法人を解散して全財産を教団に寄付し、教団の日曜学校局となる。戦中のさまざまな困難を乗り越え53年にNCCと合同し、今日に至る。教育の分野においてキリスト者の一致と協力を目指し、平和教育や人権教育の推進を目指す。

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