地域に仕え〝共に歩む〟道模索 「教会と地域福祉」フォーラム21第3回シンポ 2015年4月11日

 教会と地域の連携を図り、キリスト教福祉の再興を模索する「教会と地域福祉」フォーラム21の第3回シンポジウムが3月28日、日基教団霊南坂教会(東京都港区)で開かれた。これまで高齢者福祉、児童福祉をテーマとしてきたが、今回は「地域の悩みを教会の悩みに――〝共に歩む〟教会の形成を」をテーマに、精神保健福祉に携わる施設関係者や学生、牧師、信徒ら約100人が集まった(キリスト新聞社、東京基督教大学共立基督教研究所共催)。

「苦労取り戻し本来の健康へ」

 はじめに社会福祉法人浦河べてるの家理事の向谷地生良氏=写真右=が基調講演。「ベてるの家」で生活を共にする当事者3人と共に登壇し、それぞれが自ら命名した病名を披露しながら、「当事者研究」の意義と、地域社会における教会のあり方について提言した。

 べてるの家は1984年、北海道浦河町にある精神障害などを抱えた当事者の地域活動拠点として設立され、就労支援事業所、グループホーム、共同住居などを運営してきた。78年、向谷地氏がソーシャルワーカーとして赴任した同町の病院に通院する患者らと共に、浦河教会の旧会堂で始めた活動がきっかけ。現在では精神障害ばかりでなく、さまざまな困難さを抱えた当事者が活動に参加している。べてるは旧約聖書にある地名で「神の家」の意。

 向谷地氏は「社会『復帰』から社会『進出』へ」「『作業』から『商売』へ」「弱さを絆に」など、べてるの家が掲げてきた理念を紹介し、「苦労を取り戻すことが、本来の健康を取り戻すことにもなる」と強調。これまでの歩みを振り返りながら、「平穏で敬虔なクリスチャンが集う場だった浦河教会が、『悩む教会』になり、それに誇りを持つものとして用いられ、地域に出ていく時に、さまざまな人とつながるようになった」「不思議なことに、地域の悩みを教会の悩みとし、それを単に解決すべきものとして捉えるのではなく、共に困り、迷う中で、逆のうねりが起きてきた」と語った。

教会も「当事者研究」を

 べてるの家で実践されている「当事者研究」は、幻覚や妄想などをはじめ、当事者が抱える現実に自ら向き合い、共有することで理解していくという手法。大学の研究機関や仏教界からも注目されており、多くの見学者が訪れている。向谷地氏は、地域の人々が集まり当事者研究をする場として、教会を提供してはどうかと呼びかけた。

 「さまざまな個性を持った多様な人々と共に生きる場こそ健康。それは対立しないということではなく、対立したら話し合い、謝り、諭したりして関係を修復しながら、互いに生き合える場にしていくこと」

牧師の悩みを信徒も共に

 続いて田村綾子(聖学院大学准教授)、山本光一(日基教団京葉中部教会牧師)、山中正雄(精神科医、日本アライアンス教団千葉キリスト教会牧師)の3氏が登壇し、稲垣久和氏(東京基督教大学大学院教授)による司会のもと、トークセッションを行った。

 ソーシャルワーカーとして民間の精神科病院に勤務していた田村氏は、教会にできることとして、まずは当事者に接して理解をする、病院の公開行事に参加する、傾聴ボランティアのような形で協力する、教会に行ってみたいという患者を受け入れる、専門職に協力を仰ぐなど、具体的な方法を提案。

 浦河の伝道所で牧会した経験もある山本氏は、かつて来日した宣教師から日本のクリスチャンは視野の狭い「盆栽クリスチャン」だと指摘されたことを紹介。「36年間の牧師生活の中で、教会がもっぱら自分の教会の維持・拡大にのみ関心を集中する傾向が強くなってきた」と危惧を表明した。

 「宣教の最終目標は人をクリスチャンにすることではなく、本来の人間らしさを取り戻すこと。クリスチャンは、人に仕えることによってキリストに出会うはず」

 山中氏はこれまでの働きについて、精神科医と牧師という立場を明確に使い分けてきたと述べ、すべての人間が病人(罪人)という前提で向き合うことの重要性を指摘し、「環境が良ければ人は育つ。教会も良い環境の一つになり得る。地域とつながることで、教会はむしろ祝福を受ける」と話した。

 午後には参加者によるグループ討議も行われ、家族が精神的な病を抱えた経験や、教会での出会い、牧師としての葛藤など、それぞれの実体験を交えながら話し合った。あるグループでは、牧師や牧師の家族も病を抱えやすいという教会の現状から、地域の悩みと共に、牧師や信徒同士も悩みを共有して行くことが必要ではないかという声も聞かれた。

 次回の第4回シンポジウムは、9月に開催される予定。

 

 

 

向谷地生良氏

教会でも「当事者研究」を

 

 

 

 

(キャプション)

べてるの家で生活する当事者と共に講演する向谷地氏

登壇した(左から)田村、山本、山中の各氏

宣教・教会・神学一覧ページへ

宣教・教会・神学の最新記事一覧

TO TOP