日本ルーテル教団 子どもたちに福音伝えるために 絵本『しんこうってなーに?』を手作り 2015年4月18日

 「礼拝はたまに行けばいいの?」「どんなことでもお祈りしていいの?」――教会や信仰に関するこうした素朴な疑問に「シャポー」というキャラクターが応答する絵本『しんこうってなーに?』=写真左=を、日本ルーテル教団「教会だより」編集委員会が発行した。マルティン・ルターの「小教理問答」は、子どもからの問いかけに親が答える形で書かれているが、宗教改革500年を目前に、子どもからの問いに子どもが答えるという形の「信仰問答」の絵本が作られたことに、「こんな本は今までなかった」「こんな本が欲しかった」との反響が同委員会に寄せられている。

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 絵本は、同教団の月刊誌「教会だより」に2011年から14年まで31号にわたり連載された「シャポーのしつもんコーナー」を1冊にまとめたもの。編集委員は教職と信徒で構成され、3年ごとに変わるが、「子どもの信仰に役立つものを」と、同時期の委員が独自に企画した。絵を担当したのは斉藤緑さん(東京ルーテルセンター教会員)。女子美術大学で油絵を専攻し、卒業後デザインや外構図面作成の仕事を経て、現在はネイリストとして活動している。「まずは(教会だよりの)ページを子どもたちに開いてほしいという思いがありました」と、発案当時を振り返る。

 「シャポー」(フランス語で「帽子」の意)は、黄色い服と帽子をまとったキャラクター。その年齢は、読者の対象である子どもと同じくらい、もしくは少し年上(12歳くらい)を想定している。「説教臭くなく、会話の中から人生のヒント、信仰のヒントをもらえるようなものにしたかったので、特に男の子とも女の子とも分からないようにしました」。質問に対する答えも、性別にとらわれないよう工夫した。黄色という設定も、男女どちらにも好まれる色にしたかったのだと言う。

 絵本では、教会だよりに掲載された質問を「教会のこと」「祈りのこと」「伝道のこと」など項目ごとに分類し、新たに「聖書のこと」を設けた。質問内容は、「祈るときの手の組みかたって決まりがあるの?」という具体的なものから、「人間は何のためにいるの?」「人は死んだら終わりなの?」といった抽象的な問いまでさまざまだ。同教団ならではの、ルターの紋章についての質問も用意されている=写真下。

 こうした問いは、編集委員が考えたものだけでなく、教会に通う子どもたちから発せられたものも含まれている。「過去に自分の子どもが考えていたことなど、周囲からヒントを得たものも多い」と斉藤さんは言う。

 編集委員長の北沢忠蔵さん(飯能ルーテル教会牧師)は、「任期終了が近づくにあたって、1冊にまとめたいという気持ちが生まれ、キリスト教の大事なポイントを取り上げるようにしました」と話す。

 質問に対する答えもユニークだ。例えば「シャポーも怒ることがあるの?」という問いに対してシャポーは、「怒らないことに決めてる。そうすると風が気持ちいいよ。その風の中にイエスさまがいるとわかる」と応じている。子ども自身に考えさせることを趣旨としているので、答えは形式的なものではない。「やはりそれは、シャポーという子どもが答えていることの特徴でしょう」と、編集委員の下枡幸枝さん(同教団事務局員)は言う。

 こうした答えはどのようにして生まれたのか。「月1の編集委員会で次回取り上げる質問やテーマを決め、7人の委員がそれぞれ考えてきた答えを持ち寄って、2時間くらい議論しました」と北沢さん。

 斉藤さんは、「まずは発言内容をとにかく書き出しました。最後にわたしから『こうしたらどうでしょう』と提案し、皆から『それは踏み込みすぎだ』『もう少し余韻を持たせた方がよい』などと、意見を出してもらうことを繰り返しました。ある程度まとまったものを持ち帰り、絵と組み合わせていきます。『少し違うな』と思った時には変更して皆さんに承諾をもらいました」と、編集作業の苦労を語る。

 同絵本は、子どもの洗礼や堅信の準備に用いられることも想定している。北沢さんは実際に、昨年のクリスマスに受洗した小学3年生の受洗準備に同絵本を用いた。「絵があるからよく分かる」という反応が返ってきたと言う。「今までは洗礼準備に使うテキストがありませんでした。この絵本はかなり本格的で、信仰入門、教理、生活など、1冊でキリスト教の大事なことをすべて表そうとしています。親が子どもに、あるいは教会が信徒の子どもたちに信仰について伝えるときにぴったり合うテキストだと思います」。

(左から)下枡さん、北沢さん、斉藤さん

 日本ルーテル神学校名誉教授の徳善義和氏も同絵本を絶賛。「『やったねー!』と思い、『やられた!』と感じた。子供からお年寄りまで、それぞれの年齢や抱く問いに応じたこういう信仰の問答の本がいろいろあるといいな、と思っていたからである」というコメントを編集委員に寄せている。

 読者の感想として、キリスト教学校に子どもを通わせている親からは、「今まで子どもから信仰について聞かれたときに答えられなかったが、この絵本を通して自分自身がキリスト教のことをよく理解できた」という声が届いたという。

 下枡さんによると、絵本の発行は2017年の宗教改革500年を意識していたわけではないと言うが、同教団の「宗教改革500年準備委員会」の立ち上げと時期が重なった。同年に向けた絵本の活用については今後議論していく予定だ。

 準備委員の1人でもある北沢さんは、「子どもたちが教会に集まらないことが一つの課題。この絵本は、親や教会が子どもたちに福音を伝えていくための一つの手段になると思います。手段がなければ難しい。キリスト教信仰を伝えるよい教材になると思っています」と期待を込める。

 絵本は同教団の印刷機で下枡さんが手作りしている。昨年9月に各教会への贈呈分も含めて300部作成し、完売。今年になって100部増刷し、新たに「ひらいてみよう」という活用ガイドも用意した。これまでに他教派も含め、牧師や信徒だけでなく、教会学校や幼稚園の教師、学校司書などから注文があったという。

 絵本は1部500円(税込、送料別)。注文、問合せは同教団事務局(℡03・3261・5266、Eメール=dayori@jlc.or.jp)まで。

 

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