〝苦しみ共にする人道援助を〟 大澤真幸氏が「純粋平和主義」強調 2015年5月9日

 社会学者の大澤真幸氏=写真=が4月23日、「戦争と平和と正義――戦後70年に憲法を考える」と題して日本カトリック会館(東京都江東区)で講演した。日本キリスト教連合会(岡田武夫委員長)が主催した。

 『憲法の条件――戦後70年から考える』(NHK出版新書)の共著者でもある大澤氏は、自衛隊は客観的に見れば軍隊であり、「どう考えても憲法違反に近い解釈改憲だ」と主張。また日米安保条約についても、憲法の精神に反することは明らかだと述べた。

 その上で、他国から侵略された時の対応について、9条支持派の考え方は、「逃げる」ことと、「安保と自衛隊にただ乗りする」ことに二分されるとし、9条の理念を維持するためには「安全」と「平和と正義の関係」について考えなければならないと主張した。

 そして、「平和」を「正義」の問題の一部として考えることを提唱。「正義」との関係における「戦争と平和」の考え方について、「正戦(聖戦)論」「プラグマティズム(実用主義)」「自衛戦争論」「純粋平和主義」の四つに類型化した。

 その中で「純粋平和主義」は、すべての戦争は悪いと考え、政治的な手段として戦争を使わない立場。侵略者に対して非暴力的な方法で抵抗することは、侵略者にとっては国際的孤立を招き、無防備の一般人を攻撃することが道徳的負担にもなると指摘。「日本が少しくらいの軍隊を持っても永続的な安全にはつながらない。非暴力的抵抗の方が政治的実効性は高い」と主張した。

 「普遍的正義」を前提とするこの立場は、他国での人権侵害や虐殺に対する人道的介入を積極的に支持するものであり、そのために自衛隊の意味付けや組織を変えることも提案。

 映画『ルワンダの涙』に言及し、ラストシーンにおいて、キリストがその場にいて一緒に苦しんでいることが最低限の救いだとし、「軍事力を放棄した上での人道援助」とは、そこに行って苦しんでいる人たちと一緒に苦しむことだと強調。アフガニスタンで活動する医師の中村哲氏をその実例として挙げ、そのような人道的援助を日本の外交戦略の基軸にできれば、日本は世界で一番安全な国になると訴えた。

 

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