ナショナリズム超え、和解と平和を 米・韓・台・日の学者が青学で国際シンポ 2015年6月6日

 長崎で4月26日に開催された「北東アジアの和解のためのキリスト教フォーラム」のフォローアップ・セッションとして5月2日、東京・渋谷の青山学院大学で、国際シンポジウム「北東アジアにおける和解と平和のために」が開催された。テーマは「ナショナリズムを超えて」。同大学と米デューク大学神学部が共催し、約80人が参加した。

 長崎でのフォーラムに続き、リチャード・ヘイズ氏(デューク大学神学部長・教授=写真右)が登壇したほか、韓国からサムエル・パン(延世大学神学部副部長・教授)、日本から梅津順一(青山学院院長・教授)の両氏が発題。参加を予定していた台湾のマブ・ホアン氏(スーチョウ大学政治学部教授)は欠席し、講演の原稿が読み上げられた。

     ◆

 「崩された壁――復活と和解」と題して講演したヘイズ氏は、「暴力を放棄し、紛争のあるところで平和をつくりだすことを追い求める」ことがイエスに従う者たちの固有な召命だとし、「教会がこれほど大規模にイエスの信仰を体現することに失敗した課題は、ほかにない」と主張。長崎に原爆を投下した爆撃機のパイロットのためにミサを執り行った従軍司祭ジョージ・ザベルカ神父の悔い改めを紹介し、「アメリカ合衆国の国民として、わたしはザベルカ神父と共に、民間人の住民に対する暴力の行為について、神の赦しを祈り求める」と述べた。

 その上で、マタイ福音書の「山上の説教」とパウロの三つの手紙から、平和づくりと非暴力の和解は任意で選ぶものではなく、福音の中心に位置し、教会のアイデンティティを固定するものだと強調した。

 特にエフェソ2・11~18に注目し、「受肉と十字架の目的は、わたしたち、暴力的な人類の間にある敵意の壁を解体すること」だと説明。イエスの非暴力の道を選択するのは、「十字架の道と復活の力を通して、神の愛が最後には勝利することを望み、また予期しているから」であり、これこそが新約聖書が召している弟子としての生き方だと主張。「教会は、共同体としてこの召しに信実であるときに、暴力によって荒廃した世界において、平和を可能にする神の国の予期的比喩となる」と語った。

     ◆

 パン氏=写真下=は、「想像の共同体から預言的想像力へ――人間の連帯に向かう〝ナショナリズムを超えるもの〟についての神学的考察」と題して講演。現代社会でナショナリズムや政治権力に対抗する手段として、法、教育、宗教の三つを示した。中でも教会は「究極的には、崇高な力を持つ方に対して説明責任を負う」ため、ナショナリズムに対抗するものとしての市民社会を追求するという議論に活発に参加するための最大の可能性を有すると述べた。

 さらに、キリスト教神学は、「真理と正義と自由を求めて苦闘する、人間の努力の可能性と意味を示唆する宗教哲学」であり、「神聖な存在や文化・伝統の名の下に行われる暴力と抑圧の実態を暴くべきである」と主張。「対話的関係に批判的に参加することによって、自由と正義と人間の連帯に対するコミットメントを軸として伝統・文化を吟味すること」が神学の課題だと述べた。

     ◆
 梅津氏=写真下=は「永瀬隆と和解のプロジェクト」と題して、青山学院の卒業生である永瀬隆(1918~2011)に着目。永瀬は同学院文学部英語科を卒業後、陸軍通訳を志願し、憲兵隊の通訳として、タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道の建設現場に立ち会い、捕虜虐待の現場を目撃する。敗戦後も連合軍捕虜墓地捜索隊に通訳として同行し、泰緬鉄道沿いに捕虜の墓地を捜索。その後、心臓神経症を患い、虐待の現場で感じた罪悪感に苦しんだ。1963年には死者の慰霊、死者との和解を遂げるため、泰緬鉄道の建設現場の戦争墓地を訪問。以後100回以上タイを訪れ、連合軍元捕虜と日本軍関係者の再会や、アジア人労務者の調査を実施するなど、和解のプロジェクトを手掛けた。

 永瀬の和解プロジェクトが広がりを持つことができた理由について梅津氏は、永瀬が戦時中から敵に対する同胞感情を持ち続けていたことを指摘。平和寺院を建立し得度した永瀬はキリスト教徒ではないが、キリスト教の影響を受けたことを自ら認めており、「キリスト教と仏教に共通する永遠への想いの下で、和解プロジェクトに従事したと言える」と述べた。

     ◆

 藤原淳賀氏(青山学院大学宗教主任・教授)司会のパネルディスカッションには、台湾出身のチェン・ポール氏(青山学院大学教授、東京大学名誉教授)も参加。最後に、クリス・ライス(メノナイト中央委員会北東アジア代表、デューク大学神学部フェロー)、平野克己(説教塾全国委員長、日基教団代田教会牧師)、福嶋裕子(青山学院大学宗教主任・准教授)の3氏が祈りをささげた。

 

宣教・教会・神学一覧ページへ

宣教・教会・神学の最新記事一覧

TO TOP