一人芝居「決断‐命のビザ」で杉原千畝を 『塩狩峠』も。俳優の水澤心吾さん 2015年7月4日

 第2次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害から逃れようとしたユダヤ人を救うため、独断で日本のビザを発給した駐リトアニア外交官、杉原千畝(1900~86)を演じる一人芝居「決断‐命のビザ」を続ける俳優の水澤心吾さん(65)。舞台は200回を超え、新たに三浦綾子さんの「塩狩峠」を一人芝居で始めた水澤さんに、舞台に寄せる想いを聞いた。

 20代から舞台、映画、テレビドラマで活躍してきた水澤さんは、杉原の一人芝居を始めたのは2007年からで、演じることに繋がったのは01年にオーストラリアの国営放送のドラマでシドニーに滞在し、役者として生み出す作品について考えていた時、ふと「良心」を海外に知らしめた杉原のことを思い出し、さまざまな構想が浮かび、杉原さんを世界に向けて発信できたらどんなに幸せだろうかとの心境になっていたことだ。以来現在まで都内での定期公演、全国各地の自治体、学校など、多様な領域からの依頼に応じ、1000回を目標にしている。

 一人芝居は共感を得、『水澤心吾の「杉原千畝物語」―一人芝居「決断・命のビザ」ノート』(三五館)=写真=を出版している。公演を見た女流作家が三五館を紹介し、三五館の社長が見て出版に至り、三五館は公演の協力をしている。水澤さんは本書で―「杉原さんはなぜユダヤ人を命がけで助けようとしたのか、何が彼を突き動かしたのか。杉原さんは洗礼を受けていたという。僕も聖書を学び始めた。―と記し、洗礼を受けた。「わたしが伝道されたのは杉原の生き様です」と話す。

 水澤さんが「この作品で救われた」と語る三浦綾子の『塩狩峠』は昨年、舞台で朗読を始めて、年末頃から朗読劇という型で教会からオファーがきた。『塩狩峠』で罪を知り、救いを知ったと次のように話す。

 「信仰を持って聖書を学び、御言葉の素晴らしさも知っているのですが、この作品で罪に気づき、救いの実感がありました。一人芝居では、主人公は永野ではなくて、放蕩息子で永野に悪態をつき、ほとんど快楽的生き様の三堀ですが。演じているうちに、なんだ三堀は自分ではないかと思えるようになった。永野がサマリヤ人の真似をして三堀に愛情を注いで実行していく。ところが永野は見下していたことに気がつき、三堀に申し訳なかったという信仰告白がある。この作品が自分と重なり、自分も罪人だったと気がついた時、世界がワーっと開けました。罪が解ったので90㌫は落ち込んでいるのだけれど、どこか心の中でワクワクするものがある。救いとはこういうことをいうのかとの実感があった。それまでは言葉では知っていましたが頭で理解していたのでしょうね。自分の持っている傲慢さが、主を十字架につけたということにやっと繋がってきました。2000年前だとしても、身代わりになってくださった、それが永遠生き続けるというのを感じ始めています」

 水澤さんが『塩狩峠』を一人芝居で始めたのは、団体で演じる『塩狩峠』を見てからで、一人で演じたらどうなるだろうといつも頭にあったのだという。これからの一人芝居について。

 「『決断‐命のビザ』にどう影響がでてくるか。深刻、辛らつな話ですが楽しくてしょうがない。眉間にしわ寄せて演じるのではなく、見る人も何かを発見してくれると思う。(神様による)本当の自由、本当の解放があるんですよと伝えられたら。『塩狩峠』は、作品が喜んでいただけて、それを演じさせていただける、そういうレベル、自分のことではなく、本気で救われる人がでてくれたらと思います。人物で今、真珠湾攻撃隊長で後に伝道者になった淵田満雄に関心があります」
 
 「決断‐いのちのビザ」定期公演は7月11日、内幸町ホール、19時30~21時。前売り3千円。問合せ、申込は、三五館(℡03・3226・0035)まで。『塩狩峠』問合せ、ヴィジョン企画(℡070・6962・4141)まで。

※キリスト新聞社、7月4日付、6月25日(木)下版、2面、トピックス、下段、2枠分。

 

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