「弱いところに働く力」を主題に、精神科医の石丸昌彦氏（放送大学教授、日基教団柿ノ木坂教会員＝写真右）を講師に迎え、全国キリスト教障害者団体協議会（渋沢久会長＝写真下）の2015年度総会・修養会が７月６～７日、戸山サンライズ（東京都新宿区）で開催された。

　日基教団関東教区埼玉地区「障がいを負う人々と共に生きる教会を目指す懇談会」（埼玉アーモンドの会）が企画運営を担当。約30人が出席した。

　開会礼拝では、埼玉アーモンドの会委員長の石川榮一氏（日基教団北本教会牧師）が、「信仰の約束」と題してメッセージを担当した。サムエル記下９章で両足の不自由なメフィボシェトにダビデが忠実を尽くす場面と、同５章で「ダビデの命を憎むという足の不自由な者、目の見えない者を討て」とダビデが命じる場面を対比。両方とも本当のダビデであるとし、人間の両面性が描かれていることを示した。

　「ダビデの弱い側面も隠さずに描くことによって、弱いままでよい、むしろそのことが大切だと旧約聖書は示してくれている」と述べ、「自分の中にある弱さが大事。家族・教会の中にいる弱い人が大事。そのことによってわたしたちは祝福を与えられる」と結んだ。

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　来年で診療歴30年を迎える石丸氏は主題講演を行い、日本人の健康問題の中で、精神疾患が最も大きな比重を占めていることを指摘した。闘病の足場になるはずの精神そのものが病気の場になって揺らいでしまうつらさは外からは見えにくく、精神疾患特有のつらさだと述べた。

　都市部の診療所では、適応障害の結果として「うつ」を示す患者が増えているとし、地域、職場、家庭などのコミュニティの崩壊がその背景にあると指摘。

　対応する医師については、「患者が心配するほどは疲れない」と述べ、患者は「よくなりたい」という希望や意志を携えて、困難を乗り越えて外来を訪れる努力をしているのであり、それを受け取り、増幅して返すことで、医師自身も強められるのだと説明した。

　「弱い時にこそ強い」というパウロの言葉は、こうした患者と出会う時に実感されるとし、それは障がいを抱えている人も同じであり、「弱くて強い人は、自分が思う以上の何倍も何十倍ものことをすでに成し遂げている」と強調した。

　その上で、精神病者監護法（1900年）に始まる日本の精神衛生に関する法律の歴史を振り返り、「自分たちの力で、精神疾患を抱えた人たちの処遇がどうあるべきかを考えて、そこから法律が変わったことはこれまで一度もなかった」と解説。「弱いところにこそ恵みがあるということを、わたしたちの社会に少しでも取り戻し、あるいは獲得していきたい」と訴えた。

　最後に、スティグマ（烙印）という言葉を取り上げ、精神障がい、ハンセン病など、「レッテルをはられ、スティグマを負わされる人たちはいつの社会にもいる」とし、「それを克服できないと、人間らしい社会は築けない」と主張。「こういったこと（スティグマ）を社会からなくしていく運動が教会から発信されていくことを心から願う。その時に、それを支えるわたしたちの心の拠り所は、結局のところ、弱さを恵みとして捉える信仰だろうと思う」と強調した。

　参加者からの意見では、悩みを抱えて教会に足を運ぶ精神疾患の患者が多いことに触れた上で、「教会こそそういう人を受け入れてもらえる場だと思っていたが、教会にも差別がある。差別というよりも、具体的にどう接したらよいかわからないということが大きな問題。もっと精神障がいについて知ってほしいし、関心のある人や専門職などが間に立つことが可能だと思う」との指摘があった。

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　同協議会は、「身体障害者キリスト教伝道協力会（身伝協）」など５団体が加盟して1980年に発足。現在は、加盟10団体、準加盟２団体で構成されている。各団体が互いに連携し、情報を交換し、活動を広め強めることを目的としている。総会は、各団体が順に事務局母体となり、全国各地を会場に年に１度開催されている。

　渋沢会長のコメント＝強者中心の現代社会において弱さを担う人たちこそ欠くことのできない存在であることが、主題講演でも、また参加団体からの報告でも確認でき幸いでした。各地の団体からは、弱さの中心におられる主を証しする働きを喜びのうちに行っていることが報告されました。そのことを通してその地の教会が変わっていくことも語られました。

　各団体を代表して総会に出席する者が少なくなってきている現状があります。体の弱まり故です。これからは群れとしての、協議会としての集い、集会をどう保っていくかが大きな課題です。必要なところに必要な助け手が与えられることを信じて来年に備えたいと存じます。