〝学生を二度と戦地に送らない〟 立教人が安保法案反対、戦争関連の企画展も 2015年8月15日

 立教大学の84人の教職員(チャプレン、元職を含む)と一つの学生団体(平和のために行動する立教大生の会=SPAR)が呼び掛け人となり、「安全保障関連法案に反対する立教人の会」が設立された。同会はホームページ(http://rikkyo9.wix.com/home)で立教関係者に賛同署名を呼び掛けており、8月6日現在で賛同者は870人となった。

 「発足の祈り」として7月31日、立教学院諸聖徒礼拝堂(東京都豊島区)で同会の設立集会が開催された。学生や教職員、卒業生など約190人が参加。共同代表に西原廉太(文学部教授)、浅井春夫(コミュニティ福祉学部教授)の両氏、事務局長に奥村隆氏(社会学部教授)が選ばれた。

 スピーチの中で西原氏は、自身が7月18日に発表した個人的声明を読み上げた。この声明では、1945年にフィリピンのセブ島で戦死した経済学部生の渡邊太平氏に言及しているが、渡邊氏の姪である横尾とし子氏(キリスト教学科卒業生)も集会に参加。横尾氏は、「叔父は何よりも、こんなむごい戦争が二度と起こらないことを望み、自分のような無念な思いをする若者を今後決して出さないでほしいという強い思いを抱いていのちを落としたのではないか」と述べた。

 呼び掛け人の1人である同大学職員の恩田和英氏は、同大学が1247人の学生を戦地に送り出したことを振り返り、これを今の問題として捉えることを提唱。「立教は今もなお、その罪からの回復のただ中にあるのだと思う。過去の過ちを認め、償うことに終わりはない」とし、平和を祈ることの意義を強調した。

 同じく呼び掛け人の香山リカ氏(現代心理学部教授=写真右)は、エフェソ6・13~15を引用し、「しっかりと立ち上がり、真理の帯と正義の胸当てと平和の靴を身に付けて、この立教大学から出発するわたしたちの道程を神さまが共に歩んでくださることを強く信じている」と語った。

 同会は7月24日に声明「もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、 私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます」を発表している。

 西原氏は本紙の取材に対し、「安保関連法案に反対ということもあるが、わたしたちの願いとしては、日本が再び戦争できる国にならないために、あるいはわたしたちの大学が学生たちを戦地に送るような動きにならないために、できることは何でもやりたいと思っている。『すぐに学徒動員のような状況になるわけではない』とよく言われるが、70年前はそうだった。最初は軍人が行き、戦況が悪くなったら法律が変わって学生たちが戦地に連れて行かれた。今わたしたちがその芽を摘んでおかないといけない。特にキリスト教大学である立教大学は、ことさらそのような責任を持って歩んでいきたい」と述べた。

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 立教大学池袋キャンパス内にある立教学院展示館では現在、第1回企画展「戦時下、立教の日々――変わりゆく『自由の学府』の中で」が開催されている=写真左下。

 2001年より戦時下研究に取り組んできた同学院が、戦後70年の節目にあたり、これまでの取り組みをもとに、あらためて戦争を見つめ直す機会とすべく企画したもの。戦時下の生徒・学生の写真や手記などが展示され、勤労動員や学徒出陣のようすを知ることができる。

 普段はチャペルに掲げられている「名誉之戦死者」のタブレットも移設展示されている。1939年の第1回慰霊祭で除幕されたこのタブレットには42年まで毎年、追悼された戦没者の名が刻まれてきた。しかし、学内でのキリスト教主義と皇道主義の対立から生じた「学生暴行事件」をきっかけに同年チャペルが閉鎖され、神式となった43年の第5回慰霊祭以降、戦後になるまで新たな名が加えられることはなかった。

 学芸員の豊田雅幸氏は、「キリスト教を棄てたり、チャペルを閉鎖したのは、自らの決断でもあったはず。内的な部分を分析しなければと、この10年研究を積み重ねてきた。どういう選択をしたのか、主体的な問題として捉えないことにはまた繰り返してしまう」と話す。同企画展では、「当時を生き抜いた方々からの若い現代人へのメッセージを多く展示した」と言う。

 常設展では、2010年に米国から返還された渡邊太平氏の「寄せ書きのある旗」も展示されている。

 同企画展は9月4日までは、午前10時~午後5時の開催(日曜、夏季一斉休暇、夏季休暇中の土曜は休館)。その後、10月1日に再開され、12月8日まで開催される。入場無料。問合せは同展示館事務室(℡03・3985・4841)まで。

 

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