戦後70年企画連続インタビュー■5■ 森本あんり氏(国際基督教大学副学長) 憲法制定時の決意尊ぶべき 2015年10月10日

 本紙創刊から7年目の1953年に掲げられた本紙標語「平和憲法を護れ」「再軍備絶対反対」は、その後も変わることなく題字と共に掲載されてきた。戦後の安全保障をめぐり大きな転換点を迎えた70年目の日本。この国と教会の行方を識者に問いつつ、キリスト教ジャーナリズムのあり方を読者と共に模索したい。5回目はかつて本紙「論壇」の執筆も担当していただいた森本あんり氏。

――戦後70年という節目にあたって思うことを。

森本 僕が大学生だった高度経済成長期は、いわゆる「戦後民主主義」の胡散臭さが露呈し始めたころ。「大学受験なんてまやかしだ」と、そういう既成概念についてネガティブに相対した時代です。だから青春時代は暗かった(笑)。「しらけ世代」とか、無気力・無関心・無感動の「三無主義」なんて呼ばれて……。

 それでも我々の世代の基調は、「戦後民主主義」の伸びやかで素朴で、希望にあふれた新しい時代を切り拓くんだという空気です。嘘が混じっていたかもしれないし、単なる理想主義だったかもしれないけれども、僕らはその「ゆりかご」で育てられた。影が差したとはいえ、やはり「三つ子の魂」は強い。

 「戦後民主主義」的なキリスト教の楽観主義が残り火のようにずっと灯っていて、その火で温められた人たちが今、国会周辺で声を上げている。根強いレジリエント(強靱)な楽観主義というか、社会関与の有意性に信念を持っている。「そんなことやっても無駄」というシニシズム(冷笑主義)に沈まないところに、希望があります。

 この間の教会の低迷は、時代にきちんと向き合えていないからだと思います。それまで「戦後民主主義」的な中で抱いてきたバラ色で素朴な信仰形態が、試練にあっているということではないでしょうか。

「押し付け」論は賀川も批判

――本紙が「平和憲法を護れ」「再軍備絶対反対」という標語を掲げてきたことについて。

森本 これはやっぱり、「キリスト新聞」の旗印ですよ。「朝日新聞」ではなく、「キリスト新聞」が掲げることに意味がある。「キリスト新聞」は、全国民に仕えるメディアじゃない。もちろん教会の中には「再軍備賛成」という人もいると思うけれど、立ち位置としてはしっかり打ち出していくべきだと思います。

 憲法が進駐軍の押し付けだという論法はずっとあって、「キリスト新聞」の創設に関わった賀川豊彦はこれに反論を書いた。「日本の政治家は……自ら平和憲法を作っていながら、それがマツカアサーに強迫せられて議会で通過させたかの如く云いふらしている」「5年か6年後に、他人の誘惑にかかつて放棄せんとする、みすぼらしき政党人のシミツタレ根性には、……あいた口がふさがらない」と(笑)。

 憲法というのは、やはり理念を語るべき文章であって、その理想へと向かって一生懸命努力するのが憲法の意味。ですから、クリスチャンではない戦後日本国民にとっても、憲法は「聖書」(キャノン)なんです。「聖なる」典であると同時に「正しい」典でもある。

 確かに歴史的な限定性があって修正が必要なところもあるだろうけど、やっぱりその時にした決意というものを尊ぶべきだと思います。

生きた教会は変わらなきゃ

――今後の教会のあり方についてご提言を。

森本 日本の教会に若者が来ないなんて嘆いているのは、入れ物が悪いと言うしかない。昔のままの入れ物を用意して、「この中に若い人たちも入ってください」なんて言ったって入らないよ。入れ物を変えないと。わたしは個人的にバッハのコラールがいいですし、賛美歌で手を叩くなんて恥ずかしくてできませんが(笑)、若い人に来てもらって教会が生き延びるためには、変わらなければ死ぬしかない。

 教会は2000年の間、ずっと変わってきたんです。アメリカのキリスト教が実にアメリカ化しているのと同様、日本の教会も日本化するでしょう。そのまま歴史的建造物や遺産として残るのもいいが、生きた教会として生きていきたいなら変わらなきゃ。

 いつだって変革には痛みが伴う。日本は教会も大学も、リーダーシップの持たせ方が下手です。牧師のリーダーシップを高めると言うと、いかにも非民主的に見えるけれど、それが変革の道なら、年長者は脇に退いて任せてみないと、いつまでも変われません。

 メディアも、売れるから、名前が知られているから、安心だからと「大御所」を使いまわすのは、いい加減止めてもらいたい。なかなか引退しない牧師と、引退しても出てくる牧師。学会だって同じ。何かあると、未だにその人たちを持ち上げる。半分は自業自得で、そういうことを繰り返してきたから、若い人たちがいつまでも育たないんです。まだ無名で「誰この人?」と言われるぐらいの逸材を売り出していくのが、「キリスト新聞」や「ミニストリー」の使命です。

――ありがとうございました。(聞き手 松谷信司)

 もりもと・あんり 1956年神奈川県生まれ。国際基督教大学卒。東京神学大学大学院修士課程(組織神学)、米プリンストン神学大学院博士課程(組織神学)修了。国際基督教大学人文科学科(哲学宗教学)教授。プリンストンやバークレーで客員教授。著書に『ジョナサン・エドワーズ研究』『アジア神学講義』『アメリカ・キリスト教史』『アメリカ的理念の身体』『反知性主義――アメリカが生んだ「熱病」の正体』など。

 

 

 

 

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