「現代世界憲章」発布から半世紀 〝積極的平和〟へ憲法9条こそ カトリック「正義と平和」全国集会東京大会 2015年10月31日

 戦後70年の今年は、第二バチカン公会議の閉幕から50年という節目の年でもある。この機会に、すべての人の人権が尊重され、平和な世界が実現されるためにできることを考えようと、カトリック東京大司教区は「戦後70年の今こそ、地上に平和を――痛みを知る神とともに」を主題に、第39回日本カトリック「正義と平和」全国集会東京大会を9月21~23日に開催した。日本カトリック正義と平和協議会の共催、カトリック中央協議会社会司教委員会など12団体の協賛で、カトリック関口教会(東京都文京区)など都内5カ所を会場に行われ、3日間で延べ2300人以上が参加した。

 最終日には、第二バチカン公会議の最終年に出された「現代世界憲章」の発布50周年を記念するシンポジウムが行われた。社会司教委員会が担当したもので、会場の関口教会に530人が集まった。松浦悟郎氏(名古屋教区司教)が司会を務め、勝谷太治氏(札幌教区司教、日本カトリック正義と平和協議会会長)が平和について、菊地功氏(新潟教区司教、カリタスジャパン責任司教)が貧困と開発について発題した。

 勝谷氏は、教区内の多くの教会で「教会は政治の問題に踏み込み過ぎではないのか」という懸念の声が上がっているとし、国家と教団のあるべき関係について論じ、「もし政治が間違ったことをしているのであるならば、それに対して発言することは、むしろ教会の義務であり権利でもある」と主張した。

 その上で、「現代世界憲章」の中から戦争と平和の問題に関する78~82項を引用。「権利を取り戻すための武力行使を断念し、より弱い者にも使用可能な防衛手段に頼る人々を、われわれは同じ精神に基づいて称賛しないわけにはいかない」(78)という文章について、「まさに日本の憲法9条を意味していると考える」と述べた。

 また、81項で軍拡は平和のための安全な道ではないと記されていることに触れ、日本が軍事力、抑止力を高めることによって平和に貢献すると世界に表明することは、世界の流れに逆行することだと訴えた。

 教皇ヨハネ23世の回勅「パーチェム・イン・テリス」、教皇ヨハネ・パウロ2世の「広島アピール」にも言及し、「これはまさにキリスト教的福音の要請と言える」とし、「これらのことをすべて包含する形で、国家の憲法に明文化されたのが、日本国憲法の前文と9条の不戦の理念であるとわたしたちは考えている。だから憲法9条は、キリスト者にとっても手放すことのできない理想である」と強調した。

 そして、歴史を書き換える試みへの懸念と、世界に沸き起こるナショナリズムへの懸念を表明。「教会は先の大戦の反省から、今の日本の現状について発言しないわけにはいかない」とし、政治の問題としてではなく、人間の問題として平和を訴えているのだと述べた。

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 菊地氏は、「平和」を実現するためには、総合的な人間開発が不可欠だとし、「現代世界憲章」から貧困と開発に関する部分を引用。特に、経済の問題に言及している63項と65項に注目し、第二バチカン公会議以降、現在に至るまで、世界の多くの地域で「経済万能主義」に陥っていることを指摘した。

 「無数の群衆が今なお生活必需品さえ欠いているのに対し、ある人々は、低開発地域においてさえ、豪奢な生活をし、富を浪費している」(63)という状況が途上国と言われる国々で繰り返されていると述べ、「地上の富はすべての人のためにある」という原理が記されている69項に注目。「この中から、貧しい人たちに対する分かち合い、支え合いという考え方が出てくる」と論じた。

 その上で、教皇パウロ6世の回勅「諸国民の進歩」から、「発展とは平和の新しい呼び名」という言葉を引用し、貧しい国々の経済状況を改善していくわざは平和構築のわざであるとパウロ6世が指摘していることに触れた。また、教皇ヨハネ・パウロ2世の回勅「新しい課題」から、一人ひとりが神から与えられた使命を十分に生きることができるような社会を築き上げていくことが「発展」だと解説した。

 最後に、世界では貧困や飢餓、気候変動などの問題が最優先事項として認識されているとし、日本もそれに敏感になることで、「本当の意味での『積極的平和』への貢献ができるのではないか」と訴えた。そして、「平和の実現には総合的な人間開発が不可欠であり、(日本は)その開発のために資することのできる技術力と人と資金力を持っている国だと思う」と結んだ。

【メモ】 現代世界憲章=第二バチカン公会議で発布された四つの憲章のうちの一つ。時のしるしを吟味し、福音の光のもとにそれを解明するという教会の義務を明らかにし、教理的原則に基づいて、世界と現代人に対する教会の態度を示している。

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体制側に「不都合」としてイエスは裁かれ…

 22日には、平和を実現するキリスト者ネット(キリスト者平和ネット、平良愛香事務局代表)が企画・担当した公開フォーラム「9条を輝かそう――壊そうとする勢力に抗して」が東京・四ツ谷のニコラ・バレ修道院で開かれた。片岡平和(早稲田奉仕園職員)、岸田靜枝(元小学校音楽教員)、佐藤信行(在日大韓基督教会在日韓国人問題研究所=RAIK=所長)、舘正彦(キリスト者平和ネット事務局員)の各氏が発題=写真下。100人を超える参加者がグループに分かれて話し合いの時間を持った。

          

 青年の立場から発題した片岡氏は、学生団体「SEALDs」(シールズ)のメンバーについて、キリスト教主義の高校・大学に通っている人が多いことを指摘。「彼らは社会の中の一員だという自意識が高い」とし、イエスの生き方と似ていると述べた。

 同氏は、部落解放の課題に関わる中で、栗林輝夫氏の『荊冠の神学』が精神的な支柱になったと明かし、イエスを「魂の救済者」「心の平安を与えてくれる者」として捉えるだけでは不十分だと主張。「体制側にとって不都合な者として裁かれていく姿」に注目してイエスを捉え直すことを提唱し、9条を壊そうとする勢力に抗おうとする時に、いかに「不都合な者」として抵抗できるのか、イエスの姿から再考したいと話した。

 佐藤氏は在日外国人の人権問題をテーマに発題。現在日本に住む外国人の数は200万人で、その出身国が190カ国に及ぶこと、また外国にルーツを持つ「日本国民」が急増していることを挙げた上で、ヘイト・スピーチが繰り返されている現状を憂慮した。

 2004年、法務省入国管理局のホームページに、不法滞在者を通報する窓口ができたことに触れ、今後非国民通知窓口ができるようになることを危惧。また、今年3月の入管法の改定案で、在留資格取消事由に、在留資格に応じた活動を行っていないことに加えて、「他の活動を行い又は行おうとして在留している場合」が含まれたことについて、「明らかに戦前の予防拘禁と同じ」だと主張。「それをまず外国人をターゲットにやろうとしている」と訴えた。

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