「慰安婦」問題〝被害者不在で解決できぬ〟 日韓「最終合意」に懸念の声 2016年1月30日

 日韓両政府が昨年12月28日の外相会談で、日本軍「慰安婦」問題を「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」と発表したことを受けて、両国のキリスト教界からは「被害者不在で解決はできない」「両国間の外交問題に矮小化すべきではない」など、懸念する声が上がっている。

 日本キリスト教婦人矯風会は1月13日に声明を発表し、「被害者の方々の思いを無視し、国家間の政治的決着を狙った日韓合意を私たちは受け入れることはできない」と述べた。

 声明では、合意内容について、日本軍の関与を正式に認め、日本政府の責任に言及している点を「大きな前進」としつつも、「被害者の方々に直接語りかけることもなく、外相が首相の言葉を代読しただけの謝罪などでは真の謝罪とは言えないのではないか」と疑問を呈した。

 また、韓国政府が設立する財団に日本政府の予算から約10 億円を拠出することについて評価した一方で、「加害事実認定と謝罪、それを証するための賠償を要求している被害者の方々にとって、これは決して納得のいくものではないであろう」と主張。

 「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した」との合意内容については、互いに二度とこの問題に触れないという態度からは、「何の反省も謝罪の意思も感じとれない」とし、「歴史の教訓としてこの問題を永く記憶に留め、次世代に継承することこそ再発防止のためにも重要なことであり、今、日本政府が国際社会に向けてするべきこと」だと述べた。

 在韓国日本大使館前に設置されている少女像については、「その存続に政府が介入できるものではない」として、「真に被害者の『心の癒やしを願う』のであれば、碑の撤去を迫るのは不適切であり、暴力根絶の証人として尊重すべき」と訴えた。

 その上で、2014年の「日本軍『慰安婦』問題解決のためのアジア連帯会議」で採択された「日本政府への提言」に沿って、日本政府が真の解決に向け着手することを求めた。

 日本カトリック正義と平和協議会会長の勝谷太治司教は15日に談話を発表した。

 同氏は、岸田外相が安倍総理を「代弁」する記者発表という形で今回の最終的合意が公にされ、安倍総理大臣が朴槿恵大統領に電話でおわびを伝えたことについて、被害者本人たちへの直接的な謝罪が全くなされていないと指摘。「今回の謝罪は被害者の痛みに寄り添っておらず、被害者不在のままでは何ら謝罪の意図が伝わるものではありません」と強調した。

 また、「不十分な謝罪をもって、これを『最終的かつ不可逆的』とすれば、それは被害者の真の謝罪要求を、今後、口封じするものとなるのではないか」と懸念。「これからはもう謝罪は口にしないというニュアンスを伝えるものになっている」とも述べ、「歴史的な過ちへの責任ある謝罪とは、今後二度とそのようなことを起こさないためにも行われる」のであり、「過ちを歴史に刻み、繰り返し思い返していくことが必要であり、加害者の側からは謝罪も繰り返しなされるべき」だと主張した。

 少女像の撤去も、加害者側から要求するのはおかしいことだとし、10億円の援助の代償であるかのような印象を与えていることも遺憾だと述べ、「日本が犯したこの過ちとハルモニたちの闘いの歴史を、日本にとって都合の悪い歴史であったとしても、否、そうであるからこそ今後も記憶にとどめ続ける必要がある」と主張。「記憶され続けるところに未来への展望がある」と結んだ。

韓国正平委「政府の越権で無効」

 韓国カトリック司教協議会正義と平和委員会は4日に声明を発表し、合意を懸念する自らの立場を表明した。

 今回の合意について、「普遍的な人類の普遍価値である人権を、韓日両国の懸案解決という名目のもと、経済と外交の論理だけに置き換えてしまった結果」だと主張。「合意文にある様々な内容は、日本が犯した組織的な犯罪である日本軍『慰安婦』制度に対する真実と責任究明の努力を怠らせ、被害の当事者である日本軍『慰安婦』の方々の人権をなおさら無残に踏みつぶしました」と述べた。

 そして、合意文にある謝罪は、「国家の責任を明示した謝罪ではなく、法的な責任を回避したもの」であり、「真剣な回心と謝罪としては受け入れられません」と主張。外交機関の合意文の形態で一方的に発表されたものだとし、「合意文を新たな出発点としてはならないことははっきりしています」と強調した。

 また、人権問題と戦争犯罪には時効がないとし、「日本軍『慰安婦』は日本という国家が組織的に人権を抹殺した行為であり、人類に対する重大な犯罪」であって、被害当事者の同意なしで成り立った最終的・不可逆的な解決宣言は、「人類の良心と歴史的な経験に逆らう危うい挑戦的なもの」だと懸念した。

 さらに、「人間の基本的権利(人権)の問題であり、戦争犯罪であるこの問題を韓日両国間の外交問題だけに矮小化し、『不可逆性』という単語を使った合議文に同意した韓国政府の決定そのものが越権であり、無効である」とも述べ、「この度の合意文は日本軍『慰安婦』のハルモニたちの尊厳性と人権の価値を重ねて抹殺したものだ」と訴えた。その上で、日韓両国政府関係者にこの問題を再検討するよう求めた。

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