共感力身に付け、対立を和解に WCRP日本委学習会で宗教者の役割考察 2016年2月13日

 シリア紛争をはじめ、世界各地で紛争や難民をめぐる対立が激化する中、宗教者として和解に向けてどのような取り組みができるのか考えようと、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(杉谷義純理事長)が1月27日、立正佼成会法輪閣(東京都杉並区)で新春学習会を開催した。宗教者約150人が出席した。

 「対立から和解へ――戦後の歩みをふまえて」をテーマに、心理学者の井上孝代氏(明治学院大学名誉教授)が基調発題。平和学者ヨハン・ガルトゥングが提唱する和解のための理論を心理学的見地から研究している同氏は、多様化・複雑化する現代日本社会において顕在化しているさまざまな問題を、心理学用語で「コンフリクト」と呼んだ。

 そして、国家的にも個人の生活においても本当の「和解」が求められているとし、勝敗を決める従来の解決法ではなく、対立する双方が新しい解決を創造的に探し出す「トランセンド法」を提唱。「対話的(共感的)コミュニケーション」に基づくトランセンド法の考え方を応用した対立の解決方法「コンフリクト転換」と、ポジティブ心理学の潮流を踏まえ、対立から和解に向けたあり方を考察した。

 同氏は、自分の価値観を相手に押し付ける一方的なコミュニケーションではなく、双方向型の「対話的(共感的)コミュニケーション」を行うためには、「共感」と「傾聴」が必要だと解説。

 対立する2者のゴールが異なっている時、どちらかの勝ち負けではなく、両者が撤退するのでも、妥協点を見出すのでもなく、妥協点を超越したところに両者が同じように生かされる解決点(トランセンド地点)があると提唱したガルトゥングの理論を紹介。和解のために必要なのは、共感力を育てることだとし、対自的共感を基礎にして対他的共感を身に付け、互いのコミュニケーションの中で新しい関係を作っていくことが、対立を和解に導くことになると述べた。

 パネルディスカッション「和解に向けた宗教者の役割」では、山本俊正氏(関西学院大学教授)がコーディネーターを務め、松井ケティ(清泉女子大学教授)、坪内教至(立正佼成会青年ネットワークグループ主任)の2氏が井上氏と議論を深めた。

 松井氏は、和解とは、壊れた信頼をどのように取り戻すか、ということだとし、「感情」が入るために、そのプロセスは過酷だと強調。対話とは、相手の事情を聴く機会を与えるものであり、デズモンド・ツツの言う「関係の修復」が重要だと述べた。

 坪内氏は、フィリピンでの交流の取り組みを紹介。「対話がもたらすものが和解だとするならば、和解がもたらすものは風化ではないか」と述べ、「和解のために何を対話し、何を伝え、何を理解して、どのような行動をとっていくのか、青年とともに学んでいきたい」と語った。

 ディスカッションを総括した山本氏は三つのキーワードを挙げた。一つ目は、共感的コミュニケーション。価値観や感情の対立がある中で、どのように共感を持てるかが大事だと述べた。二つ目はトランセンド。この理論を「紛争地でも適用できるのではないか」と述べると同時に「現在の戦争は、『対テロ戦争』という言葉が使われているように、国家ではないところと国家が戦争するという、ある意味で非対称な戦争の形体が出てきている。こういう時にトランセンドは可能だろうか」と問い掛けた。三つ目は、対立から和解への宗教者の取り組み。昨年来日した聖公会司祭のマイケル・ラプスレー氏が、和解と癒しの働きを世界中で展開していることに触れ、「宗教者の役割として見習うべき」と語った。

 閉会のあいさつをした日本聖公会首座主教の植松誠氏は、日本と韓国の聖公会が戦後40年間交わりを持てなかったことに言及。一昨年、ソウルの大聖堂で初めて植松氏が説教を許されたことに触れ、「和解は決して易しいことではない」と述べた。井上氏の基調発題を振り返り、「ありのままの自分を肯定すること、受容することがいかに大事か。それはわたしたち宗教者の得意としている分野のはずだが、同時に宗教者が陥りやすいところ」だとし、一方的に自分たちの教えを伝えようとする傾向に陥りやすいことを指摘した。

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