相手の立場に立つ「温かい心」を 脳科学者・小泉英明氏が教会で講演 2016年2月20日

 脳科学者の小泉英明氏(日立製作所役員待遇フェロー)が2月3日、「脳科学の視座から考える『温かい心』と『未来』」と題して東京・四谷の聖イグナチオ教会で講演した。同教会真和会(大海龍生会長)が主催した。

 脳科学の教育への応用について研究している小泉氏。ハーバード大学の研究者からの推薦で、2003年に初めてバチカン(ローマ教皇庁)を訪問。科学アカデミー創立400周年記念シンポジウムで「心・脳と教育」に関して記念講演を行い、教皇ヨハネ・パウロ2世に接見した。

 当時「憎しみの連鎖を断ち切る勇気をもってほしい」と強調していた教皇に対して、小泉氏が脳科学の研究によって人間の憎しみがどこから発生しているのかを明らかにする研究を続けていることを伝えると、教皇は「ありがとうございます」と日本語で返事をしたという。小泉氏は以後、06年、13年、15年にローマ教皇庁科学アカデミーのワークショップに参加してきた。

 同氏は、「『科学は真実だ』と単純に言う人は科学者ではない」と述べ、人間は自然界や人間についてごく一部しか知らず、今知っている知識で最大限確かだと思って理解していることが科学の知見であると強調。だからこそ宗教者と科学者は議論を深めることができるのだと述べた。

 同氏は、他の生物と異なる人間の特徴として、言語、道具の使用、教育、高次の感情に加えて、「未来を考えられること」を指摘。人間は過去から現在までの経緯を見つめ、今何をすれば未来を変えられるかを考えることができるのだと述べた。

 また、身体性と脳の判断は互いに連携しており、社会がバーチャル化して実体験が少なくなると、体から入る信号が弱くなり、体が無意識のうちに脳の働きをコントロールする能力が失せていく可能性があると語った。

 さらに、人の心の動きを捉える能力も人間しか持ち得ていないとし、この能力が発達しないと相手の立場に立つことができないと指摘。「温かい心」とは、相手の立場に立つことだとし、倫理こそ「温かい心」だと強調した。

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