改憲の瀬戸際で平和語る 「信教の自由を守る日」各地で2.11集会 2016年2月27日

 今年も2月11日の「信教の自由を守る日」を迎え、各地の教会で「建国記念の日」に象徴される国家主義の台頭を危惧する集会が行われた。信徒の高齢化に伴い、集会の参加者も高齢者層に偏る傾向にあるが、教派を超えてより広く参加を呼びかけ、主題や内容にも趣向を凝らした会も見られた。夏に選挙を控え、改憲をめぐって大きな岐路にある日本社会にキリスト者の声はどこまで届くだろうか。

 在日本韓国YMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)で開催された「なくせ!建国記念の日 許すな!靖国国営化2・11東京集会」(同集会実行委員会主催)は今年で50回目を迎えた。「いま、この時代に、この地に生かされて――キリスト者として憲法を考える」をテーマに、朝岡勝氏(日本同盟基督教団徳丸町キリスト教会牧師、特定秘密保護法に反対する牧師の会共同代表)が講演。約150人が参加した。

 朝岡氏は、震災と原発事故後の福島や基地問題を抱える沖縄で生存権が保たれているかを問い、憲法の破壊が加速していることを危惧。「今の内閣は立憲主義を破壊し、憲法の三大原則である国民主権を否定し、基本的人権を制限し、平和主義を棄てようとしている」と述べ、それが安保法制成立に至るプロセスから見えてきていると主張した。

 その上で、自民党改憲草案の問題点として、国民が国家権力を縛るための憲法が、国家が国民を縛るための憲法になっていることや、天皇制国家の価値観を強要するものであることなどを指摘。また、安倍内閣の「日本会議」とのつながりを指摘し、国家神道的な宗教性を帯びているとして、「霊的な戦いの次元を意識せざるを得ない」と語った。

 さらに、キリスト者として思うこととして、次の5点を挙げた。「信仰の自由に対する制限への危惧」「いのちが軽んじられている時代」「神と隣り人に対するキリスト者・教会の過去の罪責」「東アジアの平和」「信仰の事柄は私事、心の中の秘め事ではない。信じたことを言い表すもの」。

 特に5点目では、「心に信じたことと違うことを言わされたりさせられたりすることは、わたしたちの心が脅かされること。心に信じたことがきちんと告白できるような空間を作り、それを次の世代に残していかなければいけない」とし、また、「自分の良心の自由を自分で損なっていくような社会になってほしくない」と訴えた。

 「政治色を出すことに対して教会員が二分している」という趣旨の参加者からのコメントに対して朝岡氏は、「政治的」という内容に幅があることを前提とした上で、「教会に政治的なことを持ち込むべきではない」というひと言だけで互いに分かり合えなくなってしまうことが一番残念だと述べ、対話が起こることが大事だと主張。「一致できないテーマが出てきた時に、一度のチャレンジであきらめてしまうことなく、そこで対話が起こっていくということが、平和作りの大事なプロセスではないか」と意見を述べた。

 集会後のデモでは、参加者たちがプラカードを掲げ、「政教分離原則を守れ」「米軍基地をなくせ」と訴えた。集会は、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会と、東京地方バプテスト教会連合社会委員会が後援した。

 日本同盟基督教団中野教会(東京都中野区)では、2.11信教の自由セミナー関東集会が開かれ、「安保法成立以後のキリスト者の課題――平和主義を守り広げるために」と題し、稲正樹氏(国際基督教大学客員教授)が講演した。

 稲氏はキリスト者が求めるべき福音的平和の特色について、「十字架により人の罪を贖い、神と人の平和を回復し、人と人の敵意を滅ぼしたイエスに掲示されている神の愛に根拠がある」「人類として人間の尊さと基本的権利をいとおしみ、人種の違い、貧富の差などで差別することのない、また弱く病んだ人に対し大きな愛が注がれる、人間への愛に基づく平和」「実現の仕方において、平和の敵は人間と世界を不信と敵対関係に呪縛している『天上にいる悪の霊』であり、正義の実現を目指し、無限の忍耐と寛容のうちに戦い抜く、その平和に徹した闘い方」にあると指摘。

 また、そもそも安全保障とは、軍事力による国家安全保障を意味するとし、「日本を含む国家の憲法が戦争放棄条項を持つようになるのは、1928年に成立した不戦条約の影響が大きい。しかし冷戦後『新しい戦争』のかたちとして世界中に紛争、暴力が多発。その解決及び、秩序形成の手段として軍事力行使が復権した」と説明。

 空爆でテロリズムを封じようとし、かえって拡散してしまう現状や、ケン・ブースの言葉「戦争、貧困、政治的抑圧などの制約から人々を解放することが真の安全保障」、アンソニー・バークの言葉「不安の根源とは敵国ではなく兵器システム。テロリズムを選択肢にしてしまうような歴史的不正主義、政治フォーラムの不在」を紹介し、真の安全保障とは軍事力ではなく「解放」ではないかと提起した。

 また、憲法9条と自衛隊の問題の矛盾については、「日本の平和主義は、軍事力を一切もたない絶対平和主義と防御的な軍事力の保持を容認する漸進的平和主義の両面を持っていた。これまでの日本政府は、自衛隊の存在と行動を憲法9条の武力行使禁止・戦力不保持の枠内で模索された努力の結果であった」と説明した上で、これからこの矛盾をどう克服していくのかについて、新9条の提案など「普通の国」にしてしまう方向にではなく、人類史的視点に立ち憲法9条の方向「主権の制限・軍事力否定」への克服の努力がなされ続けるべきであると語った。

 最後に「わたしたちキリスト者は数が少なく力もないが、福音的平和を示していく使命を持つ者として、軍事力を取り戻そうとしている現政権に異議を唱え続ける必要がある。まずは選挙に行くことが重要。現政権を支持する人たちに平和であることの大切さを、非暴力のかたちで教え続けることもキリスト者の使命」と結んだ。

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