【映画評】 『最高の花婿』 異宗教間の国際結婚をコメディで 2016年3月12日

 「わたしたちは神さまに、何をしてしまったの?」――そんな原題をもつ上質のコメディ映画『最高の花婿』が3月19日に公開される。

 主人公のヴェルヌイユ夫妻は、敬虔なカトリック教徒。フランス、ロワール地方の閑静な田舎町に暮らす夫妻には4人の娘がいる。うち3人の娘がアラブ人、ユダヤ人、中国人と結婚、せめて末娘だけは、と夫妻は願う。ある日末娘から、カトリック教徒のボーイフレンドと婚約したと電話があり夫妻は喜ぶが、娘が連れてきたのはコートジボワール出身の黒人青年だった……。

 映画はユダヤ教の割礼儀式に始まり、異なる信仰をもつ婿たちとの出会い、クリスマスパーティー、カトリック教会での結婚式へと展開する。夫妻と婿たちとの風習や食習慣の違いにより、常に些細なことから衝突が生まれ続ける。しかし、決してギスギスすることはない。

 一つひとつのエピソードにシリアスな宗教対立や文化摩擦の背景が潜むため、ともすれば冗談では済まされず、重たくなりかねない話題を、さらりと笑える「ネタ」へ転化した脚本の巧さが際立つ。その基底にのぞくのは、違いと対立の過去を乗り越え何とか幸福な共存環境を育もうとする、登場人物たち全員の思いだ。

 昨今のフランスはテロの脅威にさらされ、旧来からの移民問題に加え大量の難民流入と、宗教対立や文化摩擦のるつぼであり続けた。そんな中、焦眉の社会問題を真正面からとらえ極上のコメディ作品へと昇華した本作は、フランス本国ではハリウッド大作群を抑え、史上6番目という興行成績を記録した。

 「コメディは何かとても深刻なことや問題を、軽いタッチに変えて表現することができる素晴らしい仲介者」と語るフィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督の意図が、いかに多くのフランス人の心をつかんだかがうかがえよう。今後ますます一般化するだろう異宗教間・異文化間結婚を理解する上でもお奨めの作品だ。(ライター 藤本徹)

 3月19日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

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