オタク文化に宿る「聖性」とは? 日本女子大企画 ワークショップでひも解く宗教 2016年3月12日

 「オタクにとって聖なるものとは何か」と題するワークショップが2月27日、日本女子大学(東京都文京区)で開かれ、宗教学を専攻する学生や研究者らが参加した(日本女子大学文学部・文学研究科学術交流企画主催、エコノミメーシス R&D企画運営)。

 パネリストには、今井信治(東京家政大学非常勤講師)、橋迫瑞穂(立教大学兼任講師)、茂木謙之介(東京大学大学院博士課程)の3氏が招かれ、それぞれ「拡張現実とアニメ『聖地巡礼』――来訪者アンケートを中心に」、「『聖』なる少女のつくり方――『魔女っこ』と『ゴスロリ少女』の事例から」、「〈オタク論〉と宗教学知――1970~2010年代のメタヒストリー」と題して発表。川村覚文氏(東京大学UTCP上廣特任助教)がファシリテーターを務めた。

 主催者を代表してあいさつした近藤光博氏(日本女子大学准教授)は、「宗教社会学の先端で真摯に取り組まれている『オタク文化はなぜ宗教に類似しているのか』という問いに向き合い、若手研究者を交え『宗教研究からのオタク論』の今後について考えたい」と趣旨を説明した。

 アニメ作品の舞台を「聖地」として「巡礼」するファンへの聞き取り調査を行った今井氏は、伝統宗教の教えに則る旧来の巡礼者にとっては通過点にすぎない場所が、アニメの巡礼者にとっては物語の追体験によって意味づけられる「聖地」になることを論証した。

 橋迫氏はオタク文化を扱った少女向けの2誌を比較検討しながら、ファッションという非言語的な自己の表出に見出される「聖」なるものへの経路について、「現代を生きる女性たちにとっては、『理想』へ向かって生きることではなく、『虚構』に照準をあわせて自らを書き換えていくことが、救いにつながると信じられているのではないか」と分析した。

 茂木氏は、宗教学知がオタクをいかに語ってきたかについて、歴史的経緯を検証。特に、90年代初頭にかけてオタク擁護言説を展開した雑誌『SPA!』の誌面から、宗教のメディアコンテンツ化とオウム事件に至る変遷をたどった。

 3氏による議論を受け、参加した宗教学者の堀江宗正氏が「宗教学による従来のサブカル研究は、作品に宗教性を見出すだけで空しい」と提起すると、賛同の声が上がり、橋迫氏は「生きづらさからの解放や自己肯定、生きがいの問題を検討することはできるのではないか」と応じるなど、活発な意見交換がなされた。

 関係者らは、今後も「聖なるオタク論」をめぐる議論の場を設けたいと意気込んでいる。

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