現場で福音を伝えてこそ 『キリスト教のリアル』 出版記念感謝礼拝 2016年4月16日

 ポプラ社から刊行された『キリスト教のリアル』の出版を記念する感謝礼拝が4月1日、日本福音ルーテル東京教会(東京都新宿区)で行われた。同教会牧師の関野和寛氏が司式。メッセージを語った晴佐久昌英氏(カトリック多摩教会司祭)は、「今の教会はこれでいいのか?」と提起し、「福音を聞いて真理によって自由にされたい人はたくさんいる」と語った。また、座談会で語り合ったのは「少なくとも『このままでいいはずがない』と思っている4人だった」と打ち明けた。礼拝後のトークイベントには、同書に登場した川上咲野氏(日基教団原宿教会牧師=当時)、森直樹氏(「牧会塾」ディレクター)、編集者の大塩大氏も登壇した。一部を抜粋して掲載する。

松谷 まずは発行後の反応などを教えてください。

大塩 この本に関しましては、非常に好評です。具体的な数字は言いにくいのですが、だいたい1カ月で初版部数の3割くらいが売れている感じです。正直わたしも担当編集者でありながら、おっかなびっくりでやっていた側面があって、どんな反応をいただくのかまったくわかりませんでした。今のところ好意的な反応を多くいただいており安心しています。

川上 日曜日に突然信徒の方から声をかけられて、「たまたま書店に行って、『キリスト教』と書いてあるから買って読んでたら、先生の名前が出てきてびっくりした」と。

 同じく友人が2人ほど、本屋でこの本を見つけて買ったら、わたしが載っていて驚いたと言っていました。

松谷 そもそも、なんでこんな本を作ろうということになったかという経緯を……。

大塩 実は当初、松谷さんに連絡したのは、「キリスト新聞」で連載されている「ピューリたん」の書籍化という話だったんです。ただあまりに前衛的すぎて、まだ早すぎたという勇み足でもあったのですが……。新書の世界ではキリスト教に関する本がたくさんあるものの「リアルなキリスト教」とは何だろうと、わたしも常々疑問に思っていたんです。そこで、たまたま「ミニストリー」誌の特集「牧師たちのリアル」という企画を拝見して「面白いな」と思ったのがきっかけです。ただ、それが本当に形になるとは正直思っていませんでした。

松谷 今回の感謝礼拝の話も、半ば冗談みたいな感じでしたよね。

晴佐久 ただ、みんなに会うための口実です。今のキリスト教の状況の中では、意地を張ってがんばっている人というのは、話していて気持ちいいんですよ。大きな声では言えないけど、普段なかなかそういうことは、神父仲間でもそう多くない。だから、本当に気が合って、福音のために、工夫してちゃんと実績を作ろうと考えている人たちが、プロテスタントにこんなにいたということは大発見で、それが嬉しかったんです。

松谷 確かに、この新書にはコンパクトにまとめられていますけれど、本当は3回にわたって、延べ10時間以上の膨大な対談がベースになっていて、諸事情によりカットした部分もかなりあるんですが……。

〝スタンダード〟ではないがリアル

松谷 大塩さんは、この本を出す前と後では、キリスト教に対するイメージが変わりましたか?

大塩 仕事柄、他ジャンルの話を聞くこともあるのですが、ここまでぶっちゃけた話ってそんなに聞く機会がないので、この内容で大丈夫かなと。おそらくこれが、日本のキリスト教のスタンダードでもないんだなと、一方でわかりました。なかなか奥が深い世界だなと。

松谷 確かに、おっしゃる通り、「リアル」って「スタンダード」と見られがちですが、スタンダードじゃないんですよ。この4人は……。でもリアル。

大塩 少なくとも、建設的に前向きに対談をするということは、やっぱりちょっと大変なんだなと、皆さんそれぞれに信仰があるので。その中でもこういう形にまとめられるように、みなさん同じ方向に向いていただけたのは、本当に感謝しています。そういう意味でもよくこの本が出たなという実感はあります。

晴佐久 「ぶっちゃけ」というと、本当は隠しておかなければならないことをぶちまけるということでしょ。それ、おかしくないですかね。隠す必要は何もない。自分は正直にそう思っているんだし、あなたも正直に思っていることを言ってくれて、それは受け止めるし、自分も受け止めてほしいという気持ちが、ちゃんとこの4人にあることは、会って話せば分かる。

松谷 おそらくキリスト教の出版界や、キリスト教のメディアの中では出てこない話なんですよ。だって、神父の給料、額まで出ていますもんね。

晴佐久 隠す必要なんてないもん。

松谷 でも、牧師って給料の額まで言わないですよね。

関野 言えって言われれば言いますけど。

参加した30代男性(非信徒)の声

 小さいころカトリック成城教会で行っていたボーイスカウトで参加する礼拝は退屈という印象しかありませんでした。

 今回の礼拝は説教も理解できて面白かったですし、その後のトークショーも内容がつながっていて単に出版の裏話が聞ける以上に得るものがあり、とても有意義な時間でした。

 わたしはおそらく多くの日本人と同じであらゆる宗教的行事にゆるく乗っかる文化に染まっているため、先鋭的な宗教者を見ると「カルトっぽくて怖いな」となってしまいますが、フォローや解説する人がいることによって理解が進むということを身をもって知ることができました。

 記念礼拝に出られなかった人もこの本でキリスト教のダイバーシティを前提知識として得てから、クリスチャンと触れ合えばさらに理解が進むのではないかと思いました。

 晴佐久神父は現場で福音を伝えて人を助けるということが「キリスト教のリアル」だとおっしゃられていましたが、私はこの本が出て巻き起こる諸々が「キリスト教のリアル」なのではないかと思いました。

 晴佐久神父がおっしゃるように「日本の教会はまだ始まっていない状況」ということであるならば、この本によってクリスチャンやこの本の言葉でいう「ノンクリスチャン」から巻き起こるさまざまな議論によって、それぞれのキリスト教理解が深まっていけば、日本におけるキリスト教はより身近な存在へと変わるのではないかと思います。

 「ピューリたん」を読んで、自分に合う教会を探してたまには礼拝へ行ってみようかと思いました。

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