【映画評】 『復活』 架空の視点とおし復活を目撃する 2016年5月28日

 紀元三十数年のローマ。キリストの磔刑から復活までの 40日間を、百人隊長の上官にしてピラト総督の部下である司令官、クラヴィアス(架空の人物)の視線を追って展開していく。

 物語は「ユダヤ人の指導者」イエスの磔刑の場面から始まる。民衆はイエスが磔刑にあって死しても、3日目には蘇る「メシア復活説」を支持してい た。イエスの遺体は墓に葬られ、巨石 で頑丈に封印された。だがクラヴィアス司令官のもとに、墓に葬ったはずのイエスの遺体が消えたと報告が届く。

 エルサレムでの反乱の気運、人々の間でますます高まるメシア復活の噂を鎮静するため、ピラト総督はクラヴィアスにイエスの遺体を捜し出すよう命令する。イエスの弟子たちが遺体を隠したと考えたクラヴィアス。彼らの隠れ家を見つけ出し、踏み込むと、そこには彼が予想もしていなかっ た光景が――。

 まず映像が良い。砂漠地帯特有の砂交じりの乾いた風が、物語全体を最後まで覆う。華美に過ぎない色彩感覚、 ローマとはいえ今の時代から比べると、 豪奢に見えない建造物や衣装、調度品が古代ローマとはおそらくこのような感じだったのかもというリアリティを観る者に与える。

 キャストについても同様で、宗教画とは異なり分相応に年を重ねた母マリア、美人過ぎないマグダラのマリアも実際にはこうだっただろうと腑に落ちる。一方で誰もが「ペトロはこうに違いない」と思うペトロ像には、にやりと納得。

 本作がストーリーとして最も良くできている点は、主人公を架空の人物と設定したところだろう。聖書に登場せず、信者でもない人物という主人公の設定は、現代の多くの人々と同じ立場であり、それにより多くの観客がクラヴィアスと同じ視点でイエスと弟子たち、また信仰 を持つ名もなき人々を 観、体感することができるのである。

 イエスのセリフは案外少なく、そのほとんどが聖書に書かれている言葉である。控えた演出と聖句そのままの引用が、観ている者の心に「イエスの言葉」 としてじわじわと訴えかける。

 復活したイエスを目撃し、ガリラヤ湖までを弟子たちと共に旅したローマの司令官クラヴィアスは、その後どうしたか――。 神に出会い、人生が変わらない人間など存在しない。 信者以外にも分かりやすく、聖書の枠から逸脱し過ぎていない好感の持てる作品。

公式サイト:http://www.bd-dvd.sonypictures.jp/fukkatsu/

 

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【Ministry】 特集「教会のリーダーシップ論」 29号(2016年5月)

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