【空想神学読本】 「女神転生」にみる千年王国思想 Ministry 2016年春・第29号

 80年代から現在に至るまで異彩を放ち続けるTVゲーム「女神転生シリーズ」。その世界観には、聖書における〝千年王国〟思想が色濃く反映されている。最新作「女神転生Ⅳ FINAL」は、千年王国(紆余曲折を経て、千年王国は「東のミカド国」という名称の王国になるが)と、地底の「東京の民」が力を合わせ、新たな世界の在り方を模索する物語。

 原作は西谷史著の小説(1986年)であるが、その設定を活かした初作は別として、他のテレビゲームの作品群はオリジナルストーリーである。

 原作小説および初作テレビゲーム「デジタル・デビル物語 女神転生」(ファミコンソフト・1987年)は、日本の神話をベースにしている。主人公(現代に生きる高校生だが、日本神話のイザナギの転生した姿)は天才プログラマーであり、プログラミングで悪魔を異界から召喚してしまう。当時、欧米のゲームからの借り物のような企画が多い中、オリジナルな世界観のゲームは斬新であった。

 この女神転生シリーズに〝キリスト教の要素〟が色濃くなってきたのは、「デジタル・デビル物語 女神転生Ⅱ」(ファミコンソフト2作目・1990年)である。舞台設定は戦争で崩壊後の近未来の東京。唯一神、ルシファー、日本神話の神々、バビロニア神話の神などが入り乱れて、プレイヤーが自身の道を自身で選ぶというスタイルによりエンディングが変わる。その道のうちの一つが、千年王国に迎え入れられる結末につながる。

 キリスト教の要素が濃いナンバリングタイトルは、このファミコン版のⅡの他には、スーパーファミコン版の「真・女神転生Ⅱ」(1994年)。この「真・Ⅱ」は、そもそも主人公自身が「キリスト教系の新宗教(ゲーム内の架空の宗教)の手により人為的に作られたメシア」という設定であり、己の出自と対峙しながらも、最終的には己の意思で宗教的倫理観を選択していく物語で、分岐点により三つの道に分かれ「Law」「Chaos」「Neutral」のエンディングのどれかに着地する。「Law」を選べば〝千年王国〟の実現を目的としたストーリー展開になり、「Chaos」を選べばそれを阻止する道となる。「Neutral」は宗教を否定し、人間だけが残される。

 いずれにせよ、ファミコン版のⅡ、真シリーズのⅡ、両者において中核となるのは「千年王国」の思想である。千年王国とは「ヨハネの黙示録」などを典拠にした、〝近い将来に救世主が再臨し、千年もの間統治を行う〟という思想だが、時代によってその語義を変え、また、世のニーズに合わせてキリストの再臨を千年王国の「前」と仮定する前千年王国論(急進的な思想にマッチする)か、「後」と仮定する後千年王国論か、も変わった。

 それらをふまえ、女神転生シリーズにおいては、千年王国論がどのように引用されているかと問えば、1990年の作品は神があらかじめ用意していた千年王国に迎え入れられる道があるのに対し、94年の作品はバブル崩壊後の空気を反映してか、「バイオ技術で人為的に急造した救世主を千年王国の実現の前に置く」といったストーリーで、急進派の思想が近未来風にアレンジされて引用されている。

 2016年2月に発売された最新作「女神転生Ⅳ FINAL」では、完璧なる千年王国を実現しようとした天使が地上を消そうとするが、巨石に宿った平将門の霊が東京を死守、東京に残った人間のうちの一人が王となり千年王国を「東のミカド国」として統治、その王亡き後、体制が変化していく様をメインストーリーとしている。しかし途中で、インドの神、菩薩、ケルト神話の神が絡み、一筋縄ではいかないのである。

 日本の宗教思想は、アニミズムをベースとし、何でも呑み込む混沌の沼地のようである。女神転生シリーズは、「日本において千年王国論がどう受容されているのか」を俯瞰で眺めるための思考の材料となろう。

(愛知大学国際問題研究所客員研究員 内藤理恵子)

参考文献 岩井淳著『千年王国を夢みた革命――17世紀英米のピューリタン』

【作品概要】 女神転生シリーズ(TV ゲーム)

 1987 年スーパーファミコンで発売されてから現在に至るまで、ファミコン版でⅠ・Ⅱ、その他ゲーム機器で「真」を冠に付けたⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅳ FINAL(「Ⅳ」と「Ⅳ FINAL」はストーリーが異なる別の作品) が発売されているゲームソフトシリーズ。
 ファミコン版初作の原作は1986 年に発売された小説だが、ファミコン版のⅡからはゲームオリジナルのストーリーが展開されている。独自の世界観(古今東西の神仏・妖怪・悪魔などが登場、東京の実在する地名が使用されているシェアワールド型)で、プレイヤーの分身となる主人公の判断によってストーリーが分岐する。

最新作「真・女神転生Ⅳ FINAL」

■プロデューサー 山井一千
■ディレクター 大山 智
■キャラクターデザイナー 土居政之
■世界観原案・悪魔デザイン 金子一馬
■サウンドコンポーザー 小塚良太

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