ドイツ・スイス教会の社会奉仕学ぶ 宗教改革500年記念し日独教会協議会 2016年5月21日

 来年で宗教改革から500年を迎えることを記念して、ドイツとスイスから講演者と聖歌隊を招いた「日独教会協議会」が4月22~29日、在日本韓国YMCA(東京都千代田区)を主会場に開催された。「いま、宗教改革を生きる――耳を傾け共に歩む」をテーマに、日本キリスト教協議会(NCC)、ドイツ福音主義教会連盟(EKD)、スイスプロテスタント連盟(SEK)が主催した。

 23日の講演会には約60人が参加。ドイツからマルゴット・ケースマン(ドイツ福音主義教会宗教改革記念事業特命大使、同教会元議長=写真左)、ウルリッヒ・リリエ(同教会ディアコニア部門議長)、ヒッレ・リヒャーズ(同教会ディアコニア現場担当者)、スイスからクリストフ・ヴェーバー=ベルク(スイス連邦・アールガウ州教会議長=写真右)、シモン・ホーフシュテッター(SEKディアコニア担当幹事、ベルン州立大学実践神学助手)の各氏が登壇した。

         

 「ルター派教会の伝統から」として講演したマルゴット・ケースマン氏は、「信仰と霊性のディアコニアとの関わり」について論じた。同氏は、ルターがローマの信徒への手紙3章28節をドイツ語に翻訳した際に、「信仰によってのみ義となる」と、ラテン語とギリシア語のテキストにない「のみ」という言葉を使用したことに触れ、信仰は功績ではなく神の賜物、恩恵であると強調。ルターの宗教改革的認識が後の世紀に、「キリストのみ」「恵みのみ」「聖書のみ、あるいは言葉のみ」「信仰のみ」という四つに先鋭化されたことを示した。

 さらに、ルターがそれ以前の教会の歴史と共有しているものとして隣人愛を挙げ、ドイツの社会福祉の発展にルターが与えた影響を概観。現在の移民問題にも言及し、ドイツでは社会福祉国家を「憐れみの循環」とみなしており、憐れみは見下した態度ではなく、一つの出会いだと強調した。

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 「改革派教会の伝統から」として講演したクリストフ・ヴェーバー=ベルク氏は、「スイス宗教改革とディアコニア」と題して、改革派州教会アールガウについて紹介。

 スイス26州の一つアールガウ州。その州教会は国家から完全に分離されているが、法的主権と税法上の主権を備えた公法上の法人格を持っているという。現在、同州の75の教会が合同しており、17万5千人の会員がいる。

 同教会のディアコニアに関する教会規則には、すべてのキリスト者がディアコニアへと呼び出されているという指摘がある。「ディアコニアはキリスト者の社会参加であり、それは個々人の信仰からのみ担われるべきものではなく、共に礼拝を祝い、祈っている共同体により担われるもの」だと同氏は強調。

 州教会によって設立された施設(介護施設、障がい者施設など)が独立した例を紹介し、スイスプロテスタント教会の救援機関HEKSと共に、亡命希望者のための法律相談を行い、家庭菜園を営むことを通して難民との交流を行っていることを紹介した。

 続くパネルディスカッションでは、山本光一(日基教団京葉中部教会牧師)、戒能信生(日基教団千代田教会牧師)の2氏が応答。両氏は、同協議会の準備企画としてNCCドイツ教会関係委員会(菊地純子委員長)が昨年開催した2回のセミナーで講師を務めた。

 山本氏は、ドイツとスイスの教会が難民問題を大きな課題としていることに感銘を受けたと話し、「日本の教会の責任は重い」と主張。戒能氏は、大正期から展開されたキリスト教的な社会運動が、現在まで日本の教会の主流になっていないことを指摘、そこに日本の教会の課題があると述べた。

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 講演会に参加した江藤直純氏(ルーテル学院大学学長)は本紙に次のような感想を寄せた。

 宗教改革500年ということで「ディアコニア」がテーマとなった。社会の中での教会のあり方がトピックとして取り上げられたことは意味のあることだと思う。しかし、ルターの信仰と奉仕に関する明快な思想と実験的な試みはあったが、教会の働きとして本格的になってきたのはドイツでも19世紀半ば。500年続いてきたわけではないが、それが難民問題への取り組みにまでつながっていることはわたしたちも学ぶべき点がある。

 日本の教会がディアコニアについて考える時、石井十次や賀川豊彦などのキリスト者が社会福祉においてパイオニアの役割を果たしてきたが、教会・教団としての取り組みはごく少ない。「教会の中の愛の奉仕」ということが言われるが、「教会の外に対する社会の中での奉仕」に教会・教団として取り組むことに、今回の協議会がよい刺激になればよい。

 それぞれの教派教団がそのような意識を研ぎ澄ませ、何らかの実践をしていくということ。東日本大震災はそのようなきっかけになったと思う。それがさらに永続化していくことを願う。

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