平和つくり出す歩みを 安保法制廃止と改憲阻止へ各地で集会 2016年6月11日

 戦後70年を迎えた昨年、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法案が可決され、今年3月に施行された。憲法の条文そのものを変える「明文改憲」や「戦争のできる国づくり」への危機感が強まる中、参議院選挙を前にして、同法の廃止、改憲反対を訴え、宗教者として平和をつくり出す歩みを進めていこうとする二つの集会が、5月30日と31日に相次いで行われた。

対米追随の「戦後70年談話」

 日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会(坂内宗男委員長)は5月30日、「安倍政権の現状と私たちの課題――歴史を直視し、平和をつくりだすために」と題する集会をお茶の水クリスチャンセンター(東京都千代田区)で開催した。カトリックや日本福音同盟(JEA)からもパネラーが参加し、安倍首相の「戦後70年談話」を分析、約40人が参加した。

 集会の第一部では、光延一郎(カトリック・イエズス会社会司牧センター所長)、柴田智悦(JEA社会委員会委員長)、瀬底正博(NCC靖国神社問題委員会委員)の3氏がパネラーとして登壇し、各団体が昨年発表した声明について解説した。

 光延氏は、「戦後70年談話」について、米国からの圧力のもとにできたあいまいなものだと述べた上で、日本カトリック司教団が昨年2月に発表したメッセージ「平和を実現する人は幸い――今こそ武力によらない平和を」を紹介。「日本のカトリック教会は小さいが、『平和の問題だけは意地でも守る』という態度は一貫している」と述べつつ、こうした司教の思いが一般信徒に浸透しない歯がゆさを吐露した。

    (左から)瀬底、柴田、光延の各氏

 日本同盟基督教団「教会と国家」委員会の委員長でもある柴田氏は、今年になって同教団の教会からセミナーや講演の講師として呼ばれる機会が多くなったと話し、「危機感を感じているのではないか」と語った。JEAが昨年6月に発表した「戦後70年にあたってのJEA声明」について解説し、「国家の見張り人」としての立場を与えられていることを強調。伝道と合わせて社会的責任を果たしていくことを訴えた。

 瀬底氏は、昨年11月にNCC靖国神社問題委員会が発表した「戦後70年談話」への抗議声明についてコメント。同談話を「恥ずべき談話」「この国に住む市民を欺く談話」と評価した理由として、日本がアジア諸国とその人々に多大な被害や惨禍をもたらしたことへの謝罪を安倍首相が表明していないだけでなく、その被害、惨禍を克服するために苦悶してきた国々・人々への配慮が感じられないと述べた。

 第二部では、比較政治学を専門とする中野晃一氏(上智大学教授、立憲デモクラシーの会呼び掛け人)が講演した。同氏は、「戦後70年談話」について、「対米追随という要素が非常に大きいと言わざるを得ない」とし、同談話で安倍首相が「(日本が)『新しい国際秩序』への『挑戦者』となっていった」ことを反省している点に注目。「第二次世界大戦の前に米国を中心とした『新しい国際秩序』ができつつあったのに、日本がそれに歯向かってインドシナに出て行ったり、パールハーバーを攻撃して『挑戦』し敗れてしまったことを反省している。今は日本は米国の補助者として『積極的平和主義』を広めるために一緒にどこへでも付いて行く」ということだと解説した。

理想語り続ける責任がある

 5月31日には、「殺さない 殺させない――今こそ、宗教者・信者として」を掲げる「『戦争法』廃止・憲法改悪阻止をめざす宗教者・信者全国集会」が築地本願寺(東京都中央区)で開催された。立正佼成会や創価学会からの参加者を含む約300人が会場を埋め尽くした。

 同集会は、宮城泰年氏(聖護院門跡門主、日本宗教者平和協議会代表委員)、山崎龍明氏(黙ってはいられない!戦争法廃止を求める宗教者の会代表)など23人が呼び掛け人となって開催したもの。キリスト教からは、小橋孝一氏(日本キリスト教協議会=NCC=議長)、勝谷太治氏(日本カトリック正義と平和協議会会長)らが名を連ねている。

           

 集会は各々の信仰に従った礼拝で始められ、民進党幹事長代理の近藤昭一氏、共産党副委員長の市田忠義氏、社民党党首の吉田忠智氏、生活の党幹事長の玉城デニー氏らがあいさつ。互いに手を取り合い、夏の参議院選挙に向けて野党共闘を宣言した。

 憲法学者の清水雅彦氏(日本体育大学教授)による講演に続き、呼び掛け団体・協賛団体から代表者6人があいさつした。

 宮下良平氏(カトリック東京教区司祭、カトリック中央協議会事務局長)は、日本カトリック司教協議会常任司教委員会が4月7日に発表した声明「今こそ武力によらない平和を――安全保障関連法の施行にあたって」を紹介し、「それぞれの場で自分の思いを伝え、多くの人たちの賛同を得て、今の〝危ない〟日本の国を、しっかりと平和の中で守っていきたい」と訴えた。

 平良愛香氏(平和を実現するキリスト者ネット事務局代表)は、「宗教者は理想ばかり言う」「現実を見ていない」と宗教者でない人から言われることがあると話し、「わたしたちは現実に目をつぶって理想を言っているのではない。今このような状況の中で、それでもわたしたちは理想を語り続ける。夢を見続ける。そういう責任があるし、信じることができる。それが宗教者だ」と強調した。

 吉田吉男氏(日本キリスト者平和の会代表委員)は、「平和こそ最高の善、戦争こそ最高の悪」だとし、平和という最高の善を社会に残していくことが共通の念願だと語った。そして、政治家だけでなく宗教者が連帯して「平和憲法」を死守していかなければならないと主張した。

 最後に参加者一同でアピール文を採択。来る参議院選挙において、「戦争法に賛成する議員には投票しない」ことを呼び掛ける運動を全国に広げていくことを確認した。

 集会後は、各人が幟やプラカードを掲げて日比谷公園に向けて平和行進を行った。

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