聖書における「笑い」の特質とは 京都で日本キリスト教文学会全国大会 2016年6月11日

 「キリスト教と〈笑い〉」を総主題に、日本キリスト教文学会(宮坂覺会長)第45回全国大会が5月14~15日、京都外国語大学(京都市右京区)で開催された。延べ125人が参加した。

 2日間で六つの研究発表が行われた他、初日のシンポジウム「キリスト教と〈笑い〉――太宰治、椎名麟三、遠藤周作の文学からのアプローチ」には、斎藤理生(大阪大学大学院准教授)、立尾真士(亜細亜大学准教授)、古浦修子(大阪産業大学非常勤講師)の3氏がパネリストとして登壇。細川正義氏(関西学院大学教授)が司会・コーディネーターを務めた。

 2日目には、詩人の柴崎聰氏の司会のもと、嶺重淑氏(関西学院大学教授)が「聖書における〈笑い〉」と題して講演=写真(兼子盾夫氏提供)。「笑い」は人間の感情を表現する行為と見なされているが、微笑、苦笑、嘲笑、爆笑、照れ笑い、愛想笑いなど、さまざまな種類があり、民族的・文化的背景によっても異なることを指摘した。

 その上で、「高尚で堅苦しい」イメージがある聖書には、背信や裏切り、嫉妬、不貞など、俗的な人間ドラマが描かれていると述べ、聖書本文における「笑い」の用例を紹介。否定的な嘲りの笑いから喜び(至福)の表現である肯定的な笑いへの転換を描く創世記のイサク誕生の物語から、「救いの表現としての『笑い』」について考察した。

 また、イエスの「放蕩息子のたとえ」と「赦さない僕のたとえ」を例に、あり得ない描写(誇張と逆説)によって聴衆(読者)の笑いを誘うと同時に、自らの「常識」を疑わせ、最終的に聴衆の目を真理(=偉大な神の愛)に向けさせていることに注目。さらに、福音書に描写されるペトロの軽率さ、弱さ、頼りなさが、読者に親しみと共感をもたらし、それを通して読者の目を福音の真理(=弱者への救い)に向けさせているとして、聖書における「笑い」の特質を解説した。

 同日、第15回笹淵友一記念日本キリスト教文学会賞の授賞式もあり、奨励賞に大國眞希著『太宰治――調律された文学』(翰林書房、2015年)が選ばれた。

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