寺社フェス「向源」に1万5千人 東京で宗教音楽めぐるレクチャーも 2016年6月11日

 日本の伝統文化を体験できる寺社フェスティバル「向源」が、5月連休を含め1週間、都心各地で開催され、来場者は延べ1万5千人に上った。東日本大震災後の2011年に始まったこの催し。6回目の今年は東京都港区の増上寺や、日本橋の商業ビル、神田明神が会場となった。来場者80人だった初回から比べ、拡大ぶりは目覚ましい。

 仏教者らによる坐禅や精進料理のワークショップ、経典や宗教間対話をめぐる講演会、日本橋に船を浮かべた船上茶会、能や香道の体験講座、僧侶との対話コーナーや仏教的世界観に基づくボードゲームコーナー、脳科学者や修験者を交えたトークイベントから尼僧アイドルのコンサートまで、多彩なプログラムが催された。

 なかでも注目されたのは、三夜にわたり行われた多宗派合同の声明コンサート=写真。日蓮宗の迫力ある木剣加持に始まり、天台宗の雅な梵歌へと流れ、ダイナミックな法楽太鼓を伴う真言宗の観音経へと続く構成で、来場者を魅了した。

 千秋楽では、公演前にラジオDJのピーター・バラカン氏によるキリスト教やイスラム、中南米やアフリカ土着の宗教音楽をめぐるレクチャーも行われた。多宗派が共存する日本的環境が育んだ声明の多様性が、世界音楽の系譜においてどのように位置づけられるかが説得的に語られた。

 「向源」は今年33歳となる天台宗僧侶の友光雅臣氏(常行寺副住職)の思いから始まった。同氏は「向源」の大目標をオリンピックイヤーの2020年に当てていると言う。その年、東京を訪れる多くの外国人に対し、自分たちが誇れる文化として日本の伝統を体験できる場を提供する。最終の来場者数目標は60万人。

 今年、目標をクリアしたスタッフらの心は、すでに次回へと向いている。日本ではキリスト教会同様、寺社の未来をめぐっても暗い予測ばかりが語られるが、宗派間で信じるものは異なっても、同じ街に生き、同じ目標で結ばれた彼らの絆から予感される明日は、決して暗いものではない。(ライター 藤本徹)

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