慈しみと平和の世界をめざす者の責任と決断――教派超え聖心女子大で講演会、150人が参加 2016年6月25日

 「憲法」「平和」をめぐって大きな岐路に立つ日本。夏の参議院選挙を前に、キリスト者としての立ち位置を問う集会が、カトリックとプロテスタントの垣根を越えて開催されている。6月4日、聖心女子大学(東京都渋谷区)で行われた講演会には、日本福音ルーテル教会稔台教会牧師の内藤新吾氏、「SEALDs」(シールズ)(自由と民主主義のための学生緊急行動)の寺田ともか氏、カトリック名古屋教区司教の松浦悟郎氏が登壇し、参加した信徒ら150人が耳を傾けた。

参院選前にキリスト者の立ち位置問う

 「慈しみと平和の世界をめざす者に今、問われている責任と決断」と題するこの講演会を主催したのは、カトリック瀬田教会(東京都世田谷区)の信徒グループ「平和を願う会」と「瀬田の丘ゴスペルファミリー」(聖心女子大学マグダレナ・ソフィアセンター共催、日本カトリック正義と平和協議会、平和を実現するキリスト者ネット、Peace9の会後援)。

 「原発を廃止し、平和を目指す!」と題して講演した内藤氏は原発を取り巻く社会構造について、原発は都市から離れた貧しい地域に建てられること、その業務が被ばく労働であることは、仕事がない貧しい人々が負わされている差別の構造だと説明。また国が原発に固執する理由として、始まりは米国の核政策の経済安定のために原発を買わされ、遂に日本が儲かる番になりこの機会を逃したくないこと、長く願ってきた核武装が秘密裏に許可される時代になったことが挙げられると指摘。しかしそれは米国を裏切らないことが前提なので、同盟強化のために改憲が必要であり、安倍晋三首相が改憲と原発推進に邁進する理由はここにあると述べた。

 また、権力者は原発について「安全」「低コスト」「温暖化防止に役立つ」など事実と異なることを語っていると主張し、「我々は権力者に対して不服従の義務がある」「再生可能エネルギーへの転換が可能なことを多くの国民が知っている今、脱原発の決断をすべきであり、教会は社会のことは国家に任せるという無責任な態度ではいけない」と強調。それは戦争体験に基づけば明瞭であり、「キリスト者は一丸となって『いのちを守れ』との使命に立ち、見張り人としての務めを果たすべきだ」と締めくくった。

 続いて登壇した寺田氏は、曾祖母の代からキリスト者の家系で、米同時多発テロ事件が起きた2001年に小学生だった。就任時には聖書に手を置き宣誓していたブッシュ大統領が、正義を掲げて対テロ戦争を始めたこと、その戦争に自衛隊が関わったことがショックだったと述べた。

 「憲法9条があったから武力行使はしないで済んだが、今度は安倍首相がこの国を守るために、武力行使が必要と力説している映像に衝撃を受けた」

 教会でこれまで「世界の問題を解決してください。日本を戦争に加担させないでください」と神に祈っていたが、「主従関係が逆なのでは」と気付いたという。そのころ、キング牧師の「最大の悲劇は悪人の圧政や残酷さではなく、善人の沈黙である。疑わずに最初の一段を登りなさい」という言葉に出合い、仲間と声を上げ始めたと語った。

 「この国が掲げてきた国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を否定するような政権与党という大きな山が目前にある。しかし、からし種一粒の信仰があれば、時間はかかっても山は動くと信じている」と結んだ。

 「憲法9条と共に、戦わないために闘う!」と題し講演した松浦氏は現在の世界情勢について、国際社会が積み上げてきた戦争防止の意識と、「国家」の概念が崩れてきていると指摘。「イスラム国」(IS)の拡大や移民排斥、ヘイトスピーチなど世界が暴力的になっている中、「国際貢献と言いながら日本も武器を取り、世界の歪んだ方向に追随しようとしている」と憂えた。

 「集団的自衛権の閣議決定は問題だが、世論、表現の自由、知る権利を持つ立憲主義の下、同権を押し込めることはできる。知る権利は秘密保護法制定により困難になってしまったが、今なら憲法を携え、わたしたちのいのちと平和を守るために闘うことができる。間違っているものは許さないという姿勢で臨もう」と呼び掛けた。

 最後に、沖縄の問題について「基地は不要と言いながら、軍事力に頼らないことに本気にならないと、仮に米軍が撤収しても日本軍が出てくる。海外派兵の予算を貧しい国々に分配するなどして、信頼を得るかたちで平和を作っていくべき」と訴えた。

 講演の合間にゴスペルを披露した瀬田の丘ゴスペルファミリー。最後は、同団体の柿本泉氏が作曲した「フランシスコの平和を求める祈り」で締めくくった。

 瀬田の丘ゴスペルファミリーは、2001年に南アフリカでエイズの末期患者の介護にあたっていたフランシスコ会の故根本昭雄神父をサポートするために発足。国内外で活躍してきた。平和を願う会も、同年9月の米同時多発テロ事件後に発足し、教会の内外で活動を展開している。

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