夢を持ち希望を実らせる場が教会 カトリック司教ら300人が障がいと差別学ぶ 2016年7月2日

 日本カトリック司教協議会は日本カトリック障害者連絡協議会(カ障連)との共催で、「いつくしみの特別聖年」公開講演会「寄り添い ともに生きるために――障害者差別解消法を学ぶ」を6月15日、カトリック麹町教会(東京都千代田区)で開催した。2016年度定例司教総会の会期中に開催され、全国16教区の司教を含め、約300人が出席した=写真右。

 障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指す「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(「障害者差別解消法」)が今年4月から施行されたが、これを機に、障がいや差別について教会全体で学び、差別のない住みよい社会を目指そうというもの。

 日本のカトリック教会ではこれまで、日本カトリック司教協議会・社会司教委員会が1996年に『障害の重荷をともに担える日をめざして』を出版、2007年にはカリタスジャパンが障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)に対する声明文「全ての人が安心して暮らせる社会に向けて――障害者自立支援法施行後の現状をかえりみて」を発表してきた。しかし、障がいのある当事者からは、教会に対して多くの要望が寄せられているという。

 「障害者差別解消法を学ぶ」と題して講演したカ障連初代会長の山田昭義氏(AJU自立の家専務理事=写真左上)は、カ障連の設立経緯を概説した。カ障連は、1981年の教皇ヨハネ・パウロ2世の来日をきっかけに、全国のカトリック障がい者の団体・有志が集まり、翌年7月に日本カトリック司教団の認可を得て京都で発足した。

 山田氏は、「当時の日本の障害者福祉は完全に縦割りだった」と話し、「(カ障連は)『人は皆兄弟』という日頃の思いが一つに結集してできたことだと思う」と述懐。一方、「当時からカトリック点字図書館という視覚障がい者に対するサービスはそれなりに行き届いていたが、聴覚障がい者の思いはまったく無視されていた」と述べ、「教会用語を手話で表現できる言葉がなかった」と指摘した。「教会で神父様が説教しても、聴覚障がい者は、何を話しているのかまったく分からない状態だった。1人でもそういう人がいるということは、あってはならないことではないか」。

 手話通訳や要約筆記が対応するようになるまで34年かかったことを振り返りつつ、「情報が掲示板にしか掲示されない」「段差がある」など、バリアフリー化が進んでいない教会の現状を指摘。「わたしたちが夢を持てるところが教会であり、希望を実らせるところが教会であらねばならないと信じている」と訴えた。

 さらに、06年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)に反映されている「障がいは社会が作り出したもの」という考え方を言い換え、「教会の中では障がいは教会が作り出したもの」だと主張。その人に合った配慮をすべきだという同条約の「合理的配慮」という言葉に注目し、例えば、高齢のために教会に来ることができない人のためにどうやって力を合わせるかを考えるのは信徒の問題だとして、「合理的配慮」の仕組みを教会の中で形成することを呼び掛けた。

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 続いて、中西由起子氏(DPI日本会議副議長)の司会のもと、久保肇(日本カトリック聴覚障害者の会会長)、田島敏子(日本カトリック聴覚障害者の会横浜教区代表)、篠原三恵子(筋痛性脳脊髄炎の会理事長)、江戸徹(カ障連会長)の各氏が自らの体験や教会の現状、教会への要望などを語った。

 田島氏は、各教区の聴覚障がい者からの要望として、司祭になってから障がいや難病について学ぶのでは遅く、それらについて教える科目を神学校に入れてほしいという意見や、説教や「ゆるしの秘跡」などに手話で対応できる司祭を望む意見などを紹介。今年2月、日本カトリック神学院に「手話を教えているか」とファックスで質問したところ、いまだ返事がないという。

 司会の中西氏は、障がい者が直接的、間接的に何らかの差別を受けていると指摘。会場からも窮状を訴える声が上がった。

 日本カトリック司教協議会の新会長に就任した髙見三明氏は閉会にあたり、「教会の中で差別や無理解が現実にあることをつくづくと感じた。司教をはじめ、司祭、信徒、共同体全体で考えないといけないこと。お互いが人間として、信仰を持つ者として認め合い、尊敬し合い、理解し合うという基本的なことを実践しなければならないと感じた」とあいさつした。

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