大阪で9条世界宗教者会議 準備委員長の小橋孝一NCC議長が報告 2016年7月9日

 「憲法9条と世界の平和――危機を平和への転機に」を主題とする第5回9条世界宗教者会議が6月7~9日、大阪市中央区の真宗大谷派難波別院(南御堂)で開催され、世界10カ国から約120人が参加した=写真右。同会議の準備委員会委員長を務めた日本キリスト教協議会(NCC)議長の小橋孝一氏が会議のようすを報告する。

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 同会議は「9条アジア宗教者会議」として、2007年(東京)、09年(ソウル)、11年(沖縄)と開かれてきたが、第4回を14年に東京で開催した際に、海外からの幅広い参加者を反映して、「9条世界宗教者会議」と改称した。12年には、原子力に関する国際会議を東日本大震災後、福島県で初めて開催し、当会議のメンバーが多く集った。

 今回は、会議に先立ちフィールドワークを行い、また、会期中はきむ・きがん(金紀江)氏(劇団石(トル)代表)の一人芝居を通して在日韓国・朝鮮人の差別の現状と歴史を学び、「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動)のメンバー2人から未来に向けての夢やその夢の実現に向けた計画を聞いた。韓国、ドイツや、大阪の仏教僧からの発題なども行われた。2日目には、高橋哲哉氏(東京大学大学院教授)を迎え、「試練に立つ憲法9条――ポスト安保法制で問われるもの」と題する公開講演が行われ、多くの参加者があり、9条に対する関心の高さがうかがえた。

 今回の会議の特色を3点あげたい。第1は、在阪の仏教関係者が多く参加し、これまでより仏教色の濃い会議となったことである。大阪での開催にあたり、大阪宗教者9条ネットワークのメンバー、特に仏教関係者の多大なご協力を準備段階からいただいた。南御堂の本堂での朝祷を特別にご準備いただき、また、共同声明に初めて、聖句と共に仏典の無量寿経から「兵戈無用」(ひょうがむよう)が引用された。

 最終日には念仏者九条の会が主催する平和行進に参加し、浄土真宗本願寺派本願寺津村別院(北御堂)から御堂筋を難波まで約1時間、それぞれの宗教を象徴する宗教的な服装で行進した=写真左下。夕刻の御堂筋は交通量も通行人も多く、カラフルな服装で「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」と唱えながらの行進は耳目を集め、沿道からは温かい声援を受け、手を合わせる人も見受けられた。

 今回、宗教者は市民運動とも協働すべき危機的な状況であるとの認識により、九条の会の高田健氏を講演者として迎え、「SEALDs」のメンバーとも協働することとなった。宗教者であることをこれまでかたく護ってきたが、時代の要請であるとの判断のもと、今回の決断に至った。第2の特色である。

 しかし一方、取り組むべき課題は9条であり、9条に集中することを再確認したことが第3の特色であった。第3回会議を沖縄で開催した際に、基地問題に取り組む案が浮上したが、別団体として活動することが決定された。また、原子力に関する会議は2012年に別の会議として開催した。NCCを活動の中心として、世界のイスラム教・仏教・キリスト教が当会議のメンバーとなっている。このようなバラエティ豊かなサークルは世界的にも珍しいと言われている。このサークルを維持するためにも、9条のみに集中することが確認されたのは幸いなことであった。

 共同声明は8項目からなる。1.安倍政権の憲法解釈は立憲政治や近代政治の基礎を脅かすものだとする立場から、2015年に成立した平和安全法制関連2法の撤回を求める。2.安倍政権は、近代日本の侵略・植民地支配を反省し、世界に明確に表明すべき。3.9条の精神に反し、宗教を軍事目的に濫用することに反対する。4.領土・領海問題は、外交交渉で解決すべし。5.沖縄の基地問題解決のため、米軍施設は米国本土に「返還」する。6.朝鮮半島の非核化。7.東アジアの平和利用を含む非核化。8.日本軍性奴隷・南京虐殺・強制労働などの歴史的真実に向き合い、次世代に継承する。

 今回は行動への提案を新たに作成せず、前回の提案の実現していない項目について、継続して要求していくことを確認した。安倍晋三首相の名前は、海外からの参加者にもよく知られており、9条は世界の宝であるという共通認識が、開会前からすでに醸成されていた。

 参議院選挙前の開催を目指し、十分な準備期間も持てなかったが、新しい連帯を大阪に構築できたことは大きな成果であった。欧米のキリスト教会・団体並びに国内の宗教関係団体、特に今回は、庭野平和財団から特段の財政支援をいただいて開催できたことを、紙面をお借りして心から感謝申し上げたい。

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