〝教派超え、一つの目標に向かって〟 第40回キリスト教美術展、銀座で15日まで 2016年7月9日

 カトリック、プロテスタントの美術家による絵画や彫刻などが展示される「キリスト教美術展」(キリスト教美術協会主催)が、日基教団銀座教会・東京福音会センター(東京都中央区)で7月15日まで開催されている。1973年に第1回展が開催されてから40回目を迎える今回は、賛助出品、招待作品を合わせて20点の作品が展示されている。同展の歩みについて、同協会代表の彫刻家・五十嵐芳三氏(日基教団武蔵野緑教会会員)に話を聞いた。

 同協会は、カトリックの佐々木松次郎とプロテスタントの田中忠雄の両氏が、それぞれ指導的立場で開催してきた美術展を発展的に解消し、72年に設立した。「田中忠雄氏が中心になって声をかけ、独立美術協会、二科会、新制作協会など美術会の垣根を越えてメンバーが集まった。当初から西洋絵画作家が一番多かったが、日本画家、彫刻家も初期から集まった。この会はキリスト者はもちろん、そうでなくてもキリスト教に対する思いのある人が参画している」と五十嵐氏は説明する。

 同協会の特徴については、「カトリック、プロテスタント、聖公会など、日本のキリスト教の教派を超えて、美術家が集まり組織している。思想的相違は関係なく、キリスト教という一つの大きな目標に向かって集まっていることが最大の特徴」と話す。

 東京・四谷のカトリック麹町教会で1回目を開催したのち、会場を変えながら続いてきた同美術展。2003年の第27回から、現在の日基教団銀座教会・東京福音会センターを会場としている。

 五十嵐氏は1979年より会員として参加してきた。「現在の会場は教会ということもあり、キリスト教美術展を行うにあたって最もふさわしい展覧会場だと思う。普段使用していないスペースも含めて、銀座教会はすべて使わせてくれている。国立新美術館などの新しくできた美術館の展示室より、この教会に置く方がなぜかどの作品も落ち着いて見える」と言う。

 美術公募団体は、どこも会員数が膨れ上がり肥大化している現在だが、同協会の会員数は現在も20人前後。「会場の広さの関係で展示できる数も限られており、次々と入会してもらうわけにもいかない。ただ、同美術展を40回続けていくうちに召天してしまった方もいるので、若くて優秀な人に入会してほしい」。

 現在、抽象形態の彫刻作品を制作している五十嵐氏。具象彫刻からスタートし、自身のオリジナリティーの作風を追求するうちに抽象形態に辿り着いた。「なぜこの作品をキリスト教美術展に出品するのか」と思われることもあるという。「絵画のような分かりやすさはないが、キリストの絵を描くからキリスト教美術ということではない。1人のキリスト者としての心の内を製作している、というところを見ていただけたら」と率直な胸の内を明かす。

 「キリスト教美術協会を作ってから40年以上になり、当初の先輩作家たちもいなくなってしまった。若い我々がもう一つよい仕事をして、よい展覧会を続けていかなくては」

 同協会事務局の早矢仕素子氏(日基教団武蔵野緑教会会員)は40回展開催にあたり、「同協会は、故・田中忠雄氏が生前に『洗礼を受けていなくても、キリスト教について何か考えたり、拠り所にしていればそれでいい』と言っていた志を受継ぎ、『キリストと共に歩みつつ、仰ぎつつ』という意識で歩んできた。これからも美術作家として、信仰者としてあぐらをかかずにこの意識のもと、協会を存続させていきたい」と今後の抱負を語った。

 「第40回キリスト教美術展」は7月15日まで。開館時間は午前11時~午後7時、日曜は午後12時半~7時、最終日は午後6時まで。休館日は7月11日。問い合わせは同会場(℡03・3561・2910)まで。

 なお、同協会は10月8日~12月17日に、同協会員の作品を所蔵している関西学院大学博物館(兵庫県西宮市)で初の巡回展を行う。同会員で関西学院高等部美術教師の東浦哲也氏のつながりで開催に到ったもの。

 また、青山学院女子短期大学ギャラリー(東京都渋谷区)では10月11日~27日、3年に一度の「青山学院女子短期大学企画美術展『キリスト教美術展』」が開催され、同協会員全員の作品が展示される予定。

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