〝キリスト者は隣人として闘って〟 「らい予防法」廃止から20年、回復者が証言 2016年7月16日

 1996年に「らい予防法廃止に関する法律」が成立してから今年で20年になることを記念し、ハンセン病回復者の証言に耳を傾けようと、好善社(三吉信彦代表理事)は6月25日、「ハンセン病を正しく理解する講演会」を国立ハンセン病資料館(東京都東村山市)で開催した。120人の参加者でほぼ満席となった。

 登壇したのは、NPO「IDEAジャパン」(ハンセン病の患者、回復者、支援者によって運営される国際ネットワーク)代表で、国立療養所多磨全生園元入所者の森元美代治氏=写真。

 多磨全生園入所時、自治会長を務めていた同氏は、強制隔離を定めた「らい予防法」廃止を求める活動をしていくうち、社会が変わるのを待つより差別される恐怖を乗り越えようと、ハンセン病患者として初めて実名で闘病体験談を出版。また米ニューヨークの国連本部をはじめ、各地で講演を行っており、その数は1千回以上にのぼる。

 鹿児島県喜界島出身の同氏は、14歳の時にハンセン病を発症、国立奄美和光園に隔離された。その際カトリックに入信。大学進学を目指し、1959年に多磨全生園に転園。上智大学に合格するも、退園届が受理されず入学を断念。監視の目を盗み予備校に通い、翌年慶応大学に合格。逃走患者扱いで大学に進学、卒業後は信用金庫に就職した。しかし8年間治療を受けられなかったことでハンセン病を再発、70年に同園に再入園した。

 「家族がいるから故郷には帰れないという人も大勢いる。わたしの家族は、わたしがハンセン病にかかると戸籍から抹消した」と語る同氏。「かつて我々の存在は、文明国としての恥とされた。しかし国際人権規約に違反すると非難のあった『らい予防法』を96年まで放置してきた日本政府こそ世界の恥」と訴えた。

 そして、ルカによる福音書10章30~37節を例に出し、「キリスト者は、我々に対し同情をするのではなく、このサマリア人のように悩みを抱えている人の隣人になって一緒に闘ってほしい」と呼び掛けた。

 森元氏は18日、日本キリスト教会西宮中央教会(兵庫県西宮市)で開催された同講演会「関西の部」にも登壇した。

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